Instagramで最近、よく見かけるようになった情報系の「インスタメディア」。政治・経済、時事ニュース、ビジネスハックなど、ビジネスパーソンにとって有益な情報が手に入る、ニュースメディアのようなアカウントが増えてきているのだ。
そこで、今回は、ビジネスパーソンが活用できそうな注目の情報系インスタメディアを3ピックアップ。運営者に発信のコツや人気投稿などについても聞いてみたので合わせてご紹介しよう。
そもそもインスタメディアとは?
インスタメディアとは、SNSの一種であるInstagram上のメディアのこと。企業や団体が運営していることも多い。
Instagramはトレンド情報を収集する恰好のツールとなっているが、そうしたニーズを背景に、Instagramアカウントを一つのメディアに見立てて独自の世界観を作り、まるでWebサイトのニュースメディアのように統一感のあるテーマで情報発信を行うアカウント「インスタメディア」をよく見かけるようになった。
インスタメディアといえば、若い女性向けのファッションやコスメ、グルメなどの情報を扱うオシャレなものが想起されるが、最近ではビジネスパーソンに役立つ、政治経済や時事ニュースなどを取り扱う“情報系”インスタメディアの存在も注目されはじめている。
情報系インスタメディアの特徴は、文字情報がメインである点にある。といってもただ文字を羅列するのではなく、写真・画像として投稿し、スライド形式で見せられるInstagramの特徴を活かし、文字やイラスト、写真、図版等を用いて紙芝居的に見せることで、直感的に理解しやすくしている。文章を読み込む必要はなく、パッと見て一瞬で理解できるので頭に入りやすく、時短にもつながる。
中でも、ビジネス用語や時事用語、ニュース、ビジネスハックなどを取り扱う情報系インスタメディアは、ビジネスパーソンにとって有益な情報収集の場となりつつある。
ビジネスパーソンの情報収集に役立つインスタメディア3選
そこで今回は、これから人気を博すると思われる、ビジネスパーソンにとって役立つ情報を発信している3つのインスタメディアを紹介する。
コンセプトやターゲット、人気の投稿TOP3のほか、インスタメディアならではの発信の工夫や読者からのリアクション、今後の展望についてみていこう。
1.一般財団法人日本寄付財団「ALT MEDIA」
「ALT MEDIA」は日本寄付財団が運営するインスタメディア。「寄付」を起点に日本社会を変革することを目指し、2021年11月24日に設立された一般財団法人だ。幅広い社会課題の解決を目指す非営利団体向けに寄付を募り、支援活動を行っている。
世界的にSDGsなどの持続可能な社会づくりに関心が高まる中、一人一人が社会的な課題を自分ごと化し、問題意識を持つことは欠かせない。主要な社会問題や日頃よく目にする用語についてわかりやすく解説されていることから、ビジネスパーソンにとっても役立つインスタメディアといえる。
ターゲットは10-20代後半の、SNSで活発に情報収集している情報感度が高い若者層。主にSDGs、地球・社会問題にまつわる情報を取り扱う。
コンセプトについて広報部の工藤大輔氏は次のように述べる。
「“1分で社会問題がわかるインスタメディア”として、話題になっているものや、押さえておくべき社会問題をわかりやすく紹介しています。若い世代の人たちが社会問題について知り、考えるきっかけを持ち、自分が取れるアクションの一歩目を支援することが目的です」
●人気の投稿TOP3
これまで「いいね数」が多かった投稿の上位3位は以下の通り。
NPOなどの団体が多い中「どこに寄付をしたら良いのだろう?」と迷う人向けに「寄付先の選び方」を”より具体的に”紹介している。
SDGsで定められている17個のゴールについて、結局何をしたらよいのかピンとこない人向けに各ゴールに関する要約と、今スグできる行動(Action)をまとめている。
ブラック企業にはさまざまな定義があるが、労働問題に強い弁護士の意見も踏まえながらまとめている。
●インスタメディアならではの情報発信の工夫
「『むずかしい話題ほど、カジュアルにわかりやすく』を意識しており、イラストやアニメーションなどを駆使しながら、親しみやすい世界観で制作しています。デザインにおいては視認性の高さを追求し、情報量の多いSNSでも立ち止まってもらえるように設計しています。またスマホ視聴環境を加味し、縦フルのショートムービーも活用しながら、より“わかりやすく”ニュースをお届けする施策も注力しています」
●読者のリアクション
「『気になっていた情報が紹介されてスッキリした』というコメントをいただきました。『この情報について取り上げてください』とご要望いただくこともあります」
●今後の展望
「日本寄付財団では『日本から世界を変える寄付財団』というテーマのもと、日本の寄付文化の再構築、基盤の底上げのために日々活動しています。『世界人助け指数』の総合順位が最下位である日本において、寄付を通じた人助けがより一般的である社会の構築を目指し、これからも非営利の活動や社会問題に関する情報を発信し続けて参ります」
2.東大発学生ニュースメディア「Newsdock」
Newsdock(ニュースドック)は、東京大学の学生が始め、その他の多様な大学生が運営する学生による学生のためのインスタメディア。ターゲットは主に、ニュースに関心はあるがニュースを見る機会が少ない学生。政治経済の重要なトピックのほか、ジェンダーや環境問題などの若者の関心が高いテーマや、若者にとって身近なテーマを取り上げている。
学生向けではあるが、いまさら聞けない用語などが多数わかりやすく解説されているため、ビジネスパーソンも十分学びに活用できる。また、時事ネタを収集したい際にもキーワードが拾えるのもありがたいポイントだ。
コンセプトについて、日々更新に携わる日本女子大学3年 Instagramリーダーの田中伶奈氏は次のように述べる。
「『ニュースが、もっと見える。』をコンセプトに、ニュースをもっとわかりやすく、おもしろく工夫して発信しています。ニュースをわかりやすく図解した投稿で、ニュースや社会問題を理解するハードルを下げ、興味を持ってもらうことを目的としています。文字が多いのは避けたい、堅苦しい文章は読みたくないという方にオススメです」
●人気の投稿TOP3
これまで「いいね数」が多かった投稿の上位3位は以下の通り。
1位「【速報】トンガで大規模噴火発生」
2022年1月15日(土)にトンガで大規模な噴火が発生した際、その時点での情報やトンガのことについてまとめている。
2.位「死刑制度、賛成?反対? #1」
日本と世界で死刑制度を比較し、制度がこれからどうあるべきなのか考察するためのヒントを掲載。
3位「ロシアの侵攻が始まる? ウクライナ情勢 緊縛の理由と各国の思惑」
ロシアのウクライナ侵攻開始前、ウクライナ情勢についてそれまでの経緯をまとめている。
●インスタメディアならではの情報発信の工夫
「3つのことを工夫しています。 1つめは、図解をメインにしていること。活字離れしている若者にもニュースをもっと身近に感じてもらいたいと思っています。 2つめは、若者の目線からニュースを伝えるということ。学生発信のアカウントであることも特徴の一つで、若者からの関心が高いテーマを取り上げたり、記事の中で若者ならではの視点から考えたりしています。
3つめは、意見の多様性を重視していることです。特定の立場のみから物事を考えるのではなく、相対する立場にも目線を向けて、読者の多面的な物事の理解を促進したいと思っています」
●読者のリアクション
「2021年の衆議院選挙の時期に、コロナ対策や経済、環境問題やジェンダーなどの切り口から各党の政策を比較したものを数日に渡って投稿しました。その際に、興味を持ってくださった方がストーリーズで投稿をシェアしてくださるなどの反応があり、多くの方に読んでもらえるきっかけとなりました。
また、ストーリーズでは『きょうのクイズ』と題して毎日のニュースをクイズ形式で投稿 し、そのニュースについてどう思っているかを二択でアンケートしています。そのアンケートでのリアクションの統計をとってみると、世論調査と異なる場合があり、興味深く感じています」
●今後の展望
「今後もInstagramで継続的に発信することで、若者とニュースをもっと身近にできるように活動していきたいです。
さらに、多くの学生団体や社会人の方にインタビューしたり、コラボしたりすることで、 ニュースについて考える環境を広げていきたいと思っています。 最終的には、ニュースがもっと自分の暮らしの一部になるように、学校の放課後や飲み会の話題になるくらい、ニュースがもっと当たり前の世の中にしたいと考えています」
3.山口拓朗「1分で学べる文章の書き方&伝え方」
最後は、伝わる文章の専門家・山口拓朗氏の公式アカウントだ。山口氏は、独自の文章メソッドを確立し、著書に『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』ほか25冊がある。
このアカウントは、インスタメディアとしては運営されていないが、投稿内容とデザインに統一感があることから、インスタメディアに近しいものといえる。
本アカウントのターゲットは「文章を書くスキル」や「伝えるスキル」をもっと伸ばしたいと思っているビジネスパーソン、起業家、フリーランスなどの社会人。
取り扱っている主な情報は「文章の書き方ノウハウ」と「伝え方ノウハウ」の2種類で、ビジネスパーソンが日々、仕事で文章を書いたり、話したりする際のTIPSが豊富だ。山口氏が持つあらゆるノウハウが日々、まとまった見やすいコンテンツとして更新されていくのを無料で見られるというのは、ある意味お得といえる。
山口氏は本アカウントのコンセプトについて、次のように解説する。
「『1分で学べる文章の書き方&伝え方』をコンセプトとし、文章力や伝える力をもっと伸ばしたいと考えている方々に、スキマ時間に文章術や伝え方ノウハウのコツやヒントを持ち帰ってもらうことを目的にしています。また、私の本と『山口拓朗ライティングサロン』の体験セミナーに興味をもってもらいたい、という狙いもあります」
●人気の投稿TOP3
これまで「いいね数」が多かった投稿の上位3位は以下の通り。
「存じます」や「幸いです」など6つのメール表現が端的に解説されている。
ビジネスシーンで使いがちな二重敬語表現が10個、間違い文と正しい修正文それぞれ紹介されている。
3位「『伝える』のキホン 5W3H」
文章TIPSとして、伝えるときの基本となる「5W3H」について解説されている。
また、スライド動画の投稿の中では下記の投稿の再生数が多かったという。
1位「プレゼンがうまい人の特徴10選」
プレゼンがうまい人の特徴が10個紹介されている。
2位「文章を書くメリット10選」
文章を書くという行為がもたらすメリットが10個紹介されている。
●インスタメディアならではの情報発信の工夫
「文章術や伝え方の方法は、写真重視のInstagramとの相性がよくありません。したがって、ノウハウを画像化して、ビジュアル的に読みやすくなるよう工夫しています。また、ダラダラと説明するのではなく、ポイントを明確にして伝えることも意識しています。
画像作成は動画クリエイターをしている21歳の娘にバイトで手伝ってもらっています。Instagramは女性ユーザーが多いので『ダサい』『野暮い』と思われると見てもらえません。若い女性の感性&センスを取り入れることで、若い世代や女性にも関心をもたれやすくしています」
●読者のリアクション
「まだフォロワーも少なく、『いいね』やコメントが少ない状態です。しかし、信頼性を感じてもらえているのか、インスタグラム経由で自身のサロンの体験セミナー(月1回開催)に来てくださる方もいらっしゃいます。読者のお役立ち情報を提供しているからだと自負しています。
また、自身のアカウント運営とは関係ありませんが、私の本を紹介してくれる本の読者さんもいらして、タグ付けやハッシュタグで知らせてくれます。そうした投稿については、拡散目的で私のストーリーでシェアしています」
●今後の展望
「文章術や伝え方に特化したアカウントとして、引き続き、1分間でサクっと得られる有益情報を提供していきます。単にフォロワーを増やすのではなく、自分の文章の書き方や伝え方のノウハウに興味をもってくれる人たちに響く・刺さる発信をしていきます」
情報系インスタメディアは、Webサイト型のニュースメディアやコラムメディアと比べて、文章をそれほど読み込む必要もなく、サクッと気軽に閲覧できるメリットがある。忙しいビジネスパーソンの情報収集方法の一つとして活用してみよう。
取材・文/石原亜香利