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1年間で4000000000時間観られている「ゲーム配信者」が稼げる理由

2022.04.16

“子供のなりたい職業”トップとなっているゲーム配信者。トップの配信者では、なんと年間40億時間近く観られている。有名になるには、派手なゲームプレイや卓越したトークスキルが求められていると思われがちだが、実はそうではないという。彼らが稼げている理由を専門家に聞いた。

1日で2億円稼ぐ!子供の憧れの象徴にも

2022年3月に、ゲーム実況を中心とした配信者の加藤純一が自身の結婚披露宴をYouTube生配信した。同時接続者数46万人を超えたことも話題になったが、テレビなどで主に取り上げられたのは、結婚式の1日だけ開放した「スーパーチャット」の金額だ。チャット欄のメッセージを目立たせるための権利を購入するギフト型課金の一種で、いわゆる“投げ銭”のようなものだが、なんと2億1758万円にのぼったという。

2021年にソニー生命保険が調査発表した男子中学生のなりたい職業1位にもなった「動画投稿・実況者」。いまや子供のあこがれの存在となっている配信者の現状について、配信技術研究所(配信技研)が集計した2021年総視聴時間ランキングを見ていこう。

総視聴時間とは、1年間あたりに視聴された時間の合計を指す。単独チャンネルで見るとSHAKAが最も多く、総視聴時間はなんと39億時間にのぼる。SHAKAは毎日平均10時間近く配信しており、人の出入りがあることを加味しても、常に2万人程度の視聴者が配信をずっと見続けている計算になる。また、加藤純一はYouTubeとTwitchの双方で配信をしており、合計した総視聴時間は約47億時間になる。

コロナ禍で起きた外出自粛の情勢により、自宅で配信を視聴する文化が醸成された現在では、かつてテレビをつけっぱなしで流し見していたような感覚で彼らの配信を視聴していると考えられる。筆者自身、自宅で執筆などの作業を行なう際は、誰かの配信をつけながら作業している。配信自体は注視していないものの、つけっぱなしにして気軽に観るという習慣ができているのだろう。

実況者が稼げる理由は「サブスクライブ」と「仲間意識」にあり

数十万人を超える登録者数を持ち、同時接続数も数千〜数万人の配信者になると、その収入はかなりのものだと思われる。配信技研の研究担当者によると、いくつかある収益手段のうち最も重要なのが、サブスク形式の「メンバー型課金」だという。

「YouTubeのスーパーチャットをはじめとしたギフト型課金は、誕生日といった記念日やなにかを達成した際などに多く発生しますが、保証されているというわけではありません。しかし、毎月継続的に課金するメンバー型課金であれば収入が安定します。海外のトップ配信者であれば、その多くが10万人以上のメンバーを抱えています。1人あたり毎月500円課金していたとすると、毎月5000万円が最低の収益として保証されることになります」

また、メンバーとなる人は能動的にコンテンツに関わろうとする傾向が強く、その人の魅力を周りに伝える“布教者”としての役割を担うことが多いそうだ。

「配信が開始されたらそのURLをSNSで拡散したり、配信中の名シーンをリアルタイムで切り抜いたクリップ動画を作り発信したりすることで、新規層の流入経路にもなります」

こうしたメンバー型課金を多く獲得するには、実況者自身に魅力があり、この人のコンテンツにお金を払いたいと思われる必要がある。どういった資質が実況者には求められるのだろうか。

「まずは『共感されること』が必要です。視聴者は楽しそうに配信している様子を見て、自分も楽しい気持ちになりたいと思っています。そのためには、自分が本当にやりたいことをやるというのが大事です。奇をてらった内容や流行を極端に追いかける必要はありません。例えば加藤純一さんは派手な言動の印象が強い配信者ですが、ゲームプレイの内容は至って真面目で、かつ自分がやりたいことをやって純粋に楽しんでいる。そのバランスの良さが人気の要因だと考えています」

もう一つ大事なのは「一体感」だと続ける。

「一歩踏み込んで課金してもらうには、配信者を中心とした輪の中に入っているという実感を得られる仕組みづくりが重要です。例えば会員専用のチャットグループを作ることで、配信者との交流はもちろん、ファン同士の交流が盛んになり。そこまで親密でなくても、例えばゲームプレイ中にミスしたときに、チャット欄にメンバー限定のスタンプがたくさん流れたら『自分も一緒にスタンプ打ちたい』と思う人はいるはずですよね。こうした緩いつながりでも一体感を感じられることが重要です。こうして配信者はより強固な人気を得て、かつ安定した収益の獲得ができるようになります」

取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務を経て2019年5月より、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド(現ウェルプレイド・ライゼスト)のスポンサードを受け「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動開始。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。

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