大宮北高校がユニクロの商品を制服に正式採用
2022年4月、ユニクロの商品が高校の制服に正式に採用された。全国初の試みを実施したのは埼玉県さいたま市立大宮北高等学校。これまでの制服とユニクロ制服の中から、自分の好みに合った物を自由に選べる。旧制服と新制服のアイテムを混ぜることではなく、毎日どちらを着てもいいという。
新たに採用されたのは、ジャケット3種各1色、パンツ3種各2色、スカート1種2色(ロングとミドルを用意し体形に対応)。
学校では男性用女性用と区別しておらず、組み合わせは生徒の自由。シャツも白青グレーを選択可能で、今後は夏用のポロシャツも登場するという。
巷では高校の行き過ぎた校則が度々話題になるが、大宮北高校が見せた今回の取り組みは新しい時代を切り拓くきっかけになるかもしれない。
ユニクロ制服に込めたコンセプトについて「生徒も考える、安価でシンプル、スマートな機能的標準服、ジェンダーレスも重要な要素」と話してくれた同校の筒井教頭。今回、ユニクロ制服採用の経緯、コンセプトの真意について話を聞いた。
与えられたものを着るのではなく、自分で選び、判断する心を養う
ーーユニクロ制服採用のきっかけから教えて下さい
筒井教頭「我が校は1956年の創立以来66年間、男子生徒は黒色の学生服、女子生徒は紺色のブレザーにボックススカートという制服を変えていませんでした。しかし以前から生徒・保護者より様々な意見が寄せられ、2年前に女子生徒のスラックス着用希望を許可したことを機に制服見直しを検討することになったんです」
ーー新制服採用には困難もあったとか?
筒井教頭「採用検討が報じられた時点でネットでも話題になり学校にも様々なご意見が寄せられました。その後も多々困難はありましたが、ユニクロの既製服を制服に採用することは生徒・保護者のためになるはず、という信念だけで私達は前に進んできました」
そんな筒井教頭が先に話した新制服のコンセプト。そこに込めた想いとは?
筒井教頭「我が校はあらゆることに対して積極的にチャレンジしている学校です。これからの時代、大切なのは言われたことをやるだけではなく自分で考え、判断し、挑戦していくこと。制服を決めるのもそのうちの一つ。何を選んでどう使うか、学校生活の中でその力を育めるよう、学校側も変わっていかなければならないと思ったんです」
制服の常識を見直すことで、価格は4分の1に
生徒達の自主性を育みたい、その強い思いは子供たちの心を育てる。それ以外にも利点があるようだ。
筒井教頭「生徒からの要望で新しい制服を作ろうとしたときに業者に見積もりを依頼したところ、高額で大きな負担になると感じました。そこで、価格交渉よりも根本的な解決策として、既製品の採用についても検討を始めました」
「すると、従来平均5万円だったものが上下で1万2000円ぐらいに抑えられると分かったんです。素材やデザインにこだわりながら、扱いやすさや買いやすさを優先できると思い、決意しました」
実際に4月から導入された新制服、どれくらいの生徒がユニクロ制服を選んだのか聞いたところ「4月7日の入学式では、男子は約95%、女子は約半分がユニクロ制服」だったという。
筒井教頭によるとユニクロ制服を選んだ新入生の多くが「動きやすく、色を選べるのもいい」と話し、評判も上々だとか。
さらにこう話す。「制服とはあくまでも日常の学校生活を支えるアイテムの一つ。それらのアイテムはその価値や価格を時代の変化に応じて絶えず見直さなければならないはずで、これまでの常識をもう一度考える時代が来ていると思っています」(筒井教頭)
実は大宮北高校に先駆け、2021年春から三重県鳥羽市の中学校ではユニクロの商品を「準制服」として採用している。これは学校式典などの特別な日以外に着用できる物で正式な制服とは異なるものの、大宮北高校同様、教育現場の固定観念や堅苦しいルールが変わりつつあるように筆者は感じた。
何事も時代に合わせて変化することで成長につながることが多い。柔軟な変革を感じさせる今回の取り組みは、今後全国の教育現場に拡がっていくのかもしれない。
関連情報:
ユニクロ
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/feature/schooluniform-ohmiyakita/
大宮北高校
https://www.ohmiyakita-h.ed.jp/
取材・文/太田ポーシャ