プロパンやブタンを主成分にする液化石油ガス(LPガス)。日本のご家庭にはこのLPガスが入ったボンベを事業者が配送します。
一方、道路の下などのガス管を通じて、メタンを主成分とする天然ガス、液化天然ガス(LNG)を主に供給するのが都市ガスです。
日本は傾斜地が多く、また地盤が弱い土地も多いといった理由などにより、LPガスを供給する世帯数が48%ほどとなっています。
最近では脱炭素の動きや自然災害の増加など、LPガスを扱う業者の事業環境が大きく変化しています。
そんな中、パナソニックは「クラウド型集中監視サービス」を2018年から展開しています。
一体、クラウド型集中監視サービスとは何でしょうか?
サービスの説明を行ってくれた、パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 スマートエネルギーシステム事業部 ビジネスソリューション部 BS課 課長 岸川 成行さん
LPガス事業者が抱える課題
関東地方にお住まいの方は、都市ガスの事業者といえば、東京ガスを思い浮かべるのではないでしょうか? 近畿地方では、大阪ガスがメジャーでしょう。
一方、LPガス事業者は多岐にわたり、6〜7割の事業者は1000軒以下の利用者規模といわれます。そんな環境下で、
・カーボンニュートラルに向けたCO2の削減が必要
・エネルギー供給の自由化など、競争が激化するエネルギー市場で顧客サービスを向上しなければならない
・コロナ禍で営業手法が対面からリモートへの変換を求められる
・人口減少で人手不足への対応が迫られ、業務効率化が求められる
といった課題を各LPガス事業者は抱えています。しかし、規模の小さい事業者にとって、時代の流れを乗り越えることが難しくなっているのも事実です。
LPガス業界をIoT化!
多くの悩みを抱えているLPガス事業者に対して、パナソニックは、2018年よりクラウド型集中監視サービスを提案しています。
これは、LTE通信を活用した集中監視システムで、ガス圧力異常やガス漏れ警報、感震遮断など緊急通報のリアルタイム取得や、メーター指針値の遠隔取得、ボンベ残量が設定量になった時点で通報する、センターからメーターを遮断・開栓するといった機能を持っています。
この集中監視システムにより、検針業務の自動化や遠隔での開閉栓、配送の合理化、保安業務の効率化といったメリットをLPガスの事業者が享受できるようになります。
しかし、集中監視システムを導入するには、どうしても機器代や工事代といった初期投資がかかります。さらに、機器更新(10年程度が目安)に再投資が必要となります。
また、集中監視システムを導入するには、専門知識を持った施工体制、保守体制の構築が必要で、しかも機能を維持するためには長期保守費がかかります。
以上のような理由から、集中監視システム導入をためらう事業者が多いのが現実です。
そんな事業者の助けになりたいと立ち上がったのが、パナソニックなのです。
保守までおまかせの〝まるごと月額・定額サービス〟が事業者に優しい
パナソニックのクラウド型集中監視サービスは、毎月の定額利用料で利用できるサービスです。
そのため、無線機の購入が不要で設置工事もおまかせできます。さらに、回線費用も月額料金にコミコミとなり、また、サーバー運用が不要。維持メンテナンスもパナソニックが行ってくれます。
初期投資(機器代、工事代)が不要で、工事や保守はまるごとパナソニックへおまかせで、10年間安心して運用できるサービスなのです。
パナソニックのクラウド型集中監視サービスでは何ができるの?
導入・保守が容易で安心なパナソニックのクラウド型集中監視サービスですが、事業者は実際にどのようなサービスを受けることができるのでしょうか?
まずは、集中監視サービスです。自社で検針がリモートでできるため、残ガスなどの情報をリアルタイムで取得でき、配送効率のアップが期待できます。それにより、ガスボンベの軒下在庫を減少させます。
さらに、WEB明細サービスが開始できます。これにより、LPガスの利用者が請求データーをインターネット上で閲覧できるようになります。
安心・安全利用も促進されます。
24時間監視が可能となりますので、万が一の場合は電話とメールでLPガス利用者へお知らせできます。
さらに、スマホで利用状況を確認できるので、外出先でガスを消したか気になるLPガス利用者は、スマホを通じて遠隔遮断指示が可能になります。
また、一定の間、ガスの利用がない場合はメールでお知らせが届くので、一人暮らしの高齢者などの利用状況がわかり、離れて暮らす家族も安心です。
冒頭でCO2削減が急務となっているとお伝えしましたが、パナソニックのクラウド型集中監視サービスは、省エネの支援も可能になります。
日別、月別、年別でガスの使用量と前回差をWeb上で閲覧できるので、LPガスの無駄遣いを抑制できるはずです。
災害への対策も考慮
近年は自然災害の発生が多く、暮らしに不安の影を落としています。LPガスは都市ガスに比べて災害復旧が早いと目されることが多いですが、しかし、ガスが通じない中での生活は相当の不便を強いられます。
パナソニックのクラウド型集中監視サービスは災害対応も行っており、現地情報の収集、インフラ環境の確認、データ解析などをすみやかに行い、災害復旧のために必要な機器の手配や保険への対応、作業の手配を計画。災害発生後2週間程度で修復に向けた準備が整うとします。
パナソニックのクラウド型集中監視サービスの料金はどれくらい?
ここまで、パナソニックのクラウド型集中監視サービスの中身を見てきました。しかし、事業者にとって気になるのは月額料金ではないでしょうか。
基本となる月額料金は1軒あたり300円です。この料金には機器代、設置費、クラウド・通信費、保守費・メンテ費、サービス費、通信環境変化対応が含まれます。
さらに、先払いタイプや件数変動対応プランなど、新たな料金メニューも用意されています。
パナソニックがなぜガス事業者のサービスをするの? ……実はガスメーターのデバイスを作っています
パナソニックのクラウド型集中監視サービスの魅力をお伝えしてきましたが、読者の中には「家電メーカーのパナソニックがなぜガス事業に関わっているの?」と疑問に思っていた方がいらっしゃるかもしれません。
実はパナソニックは、ガスメーターのデバイスのメーカーなのです。
今から45年ほど前の1978年のこと、パナソニックの松下幸之助創業者に都市ガス会社より「電気ブレーカーのような『ガス安全ブレーカー』を作って欲しい」と依頼がありました。そこで同社は開発に着手。1983年に都市ガス会社のマイコンメーター向けのコントローラーの販売を始めました。
2005年には超音波計測ユニットを搭載したガスメーターの設置を開始しています。
そして、2009年にはガスメーター用のコントローラ生産1億台を達成。
2022年現在、ガスメーター用コントローラの累計出荷台数は1億7000万台となり、約5000万世帯とされる日本のご家庭での普及率は100%となり、ガス事故の減少に大きく貢献しました。
ガスメーター用コントローラの多くはパナソニック エレクトリックワークス社の奈良拠点で生産されています。
そんなガスメーターのデバイスの一環として、2018年にクラウド型集中監視サービスが始まったのです。
ガスの安心・安全な利用を長年にわたり見守り続けたパナソニック。同社のクラウド型集中監視サービスが普及すれば、CO2の排出量の削減や自然災害への備えが強化され、私たちの未来の暮らしに役だってくれることでしょう。
取材・文/中馬幹弘