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【ヒット商品開発秘話】発売から1か月で100万食を突破した日清食品冷凍「日清本麺」

2022.04.11

■連載/ヒット商品開発秘話

「冷凍ラーメンでお気に入りのブランドは?」と問われると、おそらく多くの人は戸惑うだろう。知名度のあるブランドがなく、よく知られていないからだ。

 しかし、このような現実を打破する可能性を秘めた冷凍ラーメンが2021年9月に誕生した。日清食品冷凍の『日清本麺』のことである。

「日清が本気で創った、うまい麺。」から名付けられた『日清本麺』は、麺にこだわり開発。新製法の「生麺ゆでたて凍結製法」により、ゆでたて麺のような食感と風味を実現した。

 まず「こくうま醤油ラーメン」「濃厚味噌ラーメン」の2つを販売し、発売から1か月で累計販売数が100万食を突破。2022年3月に「ゆず塩ラーメン」を追加した。

(左)日清本麺 こくうま醤油ラーメン
(右)日清本麺 濃厚味噌ラーメン

麺でお客様を沸かせる

 この10年ほどの間、冷凍麺で急成長したのがパスタ。『日清本麺』の開発は、冷凍ラーメンでひと花咲かせたいという同社の想いから、発売の6年前に着手した。

 麺にこだわることにした大きな理由を、マーケティング部第1グループ プロダクトマネージャーの三島健悟氏は次のように話す。

「冷凍ラーメンでも具材を切り口にしたものは定着していましたが、われわれはど真ん中の正統派ラーメンで勝負することにしました。社内で議論してたどり着いた結論は、麺でお客様を沸かせること。麺の美味しさに正面から向き合商品は、これまで見当たらなかったと記憶しています。美味しい麺でお客様を沸かせるブランドができたら日清らしさがありますし、今までになかったチャレンジになります」

日清食品冷凍
マーケティング部第1グループ
プロダクトマネージャー
三島健悟氏

麺が一番香るゆでたて直後の状態を素早く凍結

 人によって美味しいと思うラーメンの麺は異なる。まずは美味しいラーメンの麺を定義することから始まった。

 議論する中で浮上したのが、「ゆでたての麺が家庭で簡単につくれたら、ラーメンにそれほど詳しくなくても価値を感じてくれるのでは?」という仮説。この仮説から美味しい麺をゆでたての麺とした。麺はゆでたて直後が一番香り豊か。チルド麺よりも小麦の香りとかん水の香りが感じられるものにすることを目指した。

 麺の香りは原料よりもつくり方に左右される。麺の風味を余すことなく封じ込める製法の確立が求められた。こうした背景から開発されたのが「生麺ゆでたて凍結製法」。麺が一番香るゆでたて直後の状態を再現するため、麺の製造工程を1つずつ見直した。設備の見直しも不可欠で、設備投資も行なった。

「こくうま醤油ラーメン」は中細ストレート麺、「濃厚味噌ラーメン」は中太ちぢれ麺を採用。一気に2タイプの麺を開発しており、試作は2つ合わせてゆうに200回を超えている。ゆで時間1秒、麺の厚み1mmと細かく仕様を変え、原材料の配合やゆで時間なども細かく見直すと、いくつものパターンを検証することになった。

麺の硬さはこれでいいのか?

 開発は麺が完成したところでスープへと移行した。スープでのこだわりの1つが、必ず醤油味をつくること。この背景には、それまでの冷凍ラーメンに正統派の醤油ラーメンがなかったことがあるが、シンプルな醤油味に強い味の麺と合わせると、アンバランスになるという課題をクリアすることが求められた。

 試行錯誤の末に採用したのが、こくうま醤油。風味豊かな美味しい麺に合わせるため、風味の強い濃厚なスープにした。試作を100回ほど重ねた末に完成させたという。

 一方、味噌味については日清食品グループが得意とするところで、誰が食べても「美味しい」と言うスープをつくる自信があった。試しにつくったスープと麺を合わせたみたところ、相性の良さが確認できた。ただ、色味や粘度など見直すべきポイントがあったことから試作は繰り返した。

 完成した2品は日清食品ホールディングスのトップによる最終チェック(試食)を経て発売へと至るが、その席上で思いもよらないことを指摘される。それは麺の硬さ。スープの味は高く評価したものの、「麺の硬さはこれでいいのか?」と疑問を呈した。

 指摘は、若い世代の人は柔らかい麺より硬い麺の方を評価するのでは?という疑問から発せられた。三島氏は麺の硬さに関する明確な根拠を持っておらず、その疑問に即返答できなかった。発売直前だったが、急きょ社外モニターによる評価を実施することにした。

 硬さを変えた麺を数種類つくり食べ比べてもらったところ、最終試食時の麺より少し硬めの麺の方が美味しいと評価してくれる人が多いことが判明。これを受けて「こくうま醤油ラーメン」の麺を硬くし、中心部にやや粉っぽさが感じられるようにした。また、食べ進める上での経時変化を踏まえて、最初の一口と最後の一口でできるだけ近い食感が感じられるような微調整も実施した。

日清の本気を小売店に伝播する

『日清本麺』は新商品として過去最高の配荷率を記録した。この背景には、営業部隊のやる気を高める仕掛けがあった。Tシャツや丼類といった商談セットを制作したのである。

 Tシャツは小売店との商談時に営業マンに着てもらうユニフォームのようなもの。丼は小売店のバイヤーに試食してもらうときに使うもので、スープを飲み干すと、底に「本気の証」という言葉が見える。商談セットのほかには、商談時に見てもらう開発担当者のインタビュー動画もつくった。「原始的な手法ではありますが、日清の本気を小売店に伝播するために時間を費やしました」と三島氏は話す。

商談セットの丼。黒と白の2つあり、どちらにも底に「本気の証」とある

商談セットのTシャツ

商談時に流す開発担当者のインタビュー動画の1シーン

 日清が本気でつくったことはネーミングとパッケージにも現れた。冷凍ラーメンではなく「日清」のラーメンであることを強く印象づけるため、ブランド名に「日清」を使用。ブランドロゴを強調したパッケージデザインにより、フレーバーよりもブランドの方を覚えてもらいやすくした。

商品に触れる機会を多層的に提供する

 発売から1か月で100万食を超えた販売実績は計画を大きく上回った。この勢いを維持するべく、様々なプロモーションを実施している。

「生活のあらゆるーシーンで『日清本麺』に触れる機会を多層的に提供できるようにすることを心がけています」と三島氏。アサヒビールとコラボして実施したTwitterでのプレゼントキャンペーンでは、女優の鈴木京香さんが出演する現在放映中のテレビCMの公開に合わせて、キャンペーン賞品の「〆のラーメンセット」が当選者に届くようにしたほどである。

女優の鈴木京香さんが出演する現在放映中のテレビCMの1シーン

 2022年3月に追加された「ゆず塩ラーメン」については、女性に購入してもらいたいことを念頭に置いて『日清本麺』発売後に検討。季節感やさっぱり感が感じられるやすいものとして、ゆず塩が選ばれた。麺も女性を意識し、平打ちのモチモチ食感としている。

日清本麺 ゆず塩ラーメン

取材からわかった『日清本麺』のヒット要因3

1. 名前に恥じない完成度

「日清が本気で創った、うまい麺。」が由来のブランド名だけに麺が美味しくなければ看板倒れになるが、ゆでたて麺の美味しさが味わえる一品をつくり上げた。

2.主語が「冷凍」ではなく「日清」

 冷凍麺は認知度が低くブランド名よりフレーバーの方が浸透しやすい面があるが、冷凍であることよりも日清が本気で創ったラーメンであることをネーミングなどで強調。今まで冷凍ラーメンに関心を示さなかった層も取り込むことができた。

3.切れ目のない周知

 テレビCMの放映に合わせてキャンペーンの賞品を発送するなど、販促は断続的ではなく継続的に実施。つねにどこかで商品名に触れる機会を創出し、認知を拡大した。

 今後の課題として三島氏は、多数派であるフォロワーの人たちを取り込むことを挙げる。現在は情報感度の高い一部のイノベーター気質の人たちに買い支えられている側面があることから、情報感度がそれほど高くないフォロワー気質の人たちを多く取り込みたい考えだ。『日清本麺』の定着は、これからの半年、1年でフォロワーをいかにユーザーにできるかにかかっている。

製品情報
https://www.nissin.com/jp/products/brands/honmen/special/1/

文/大沢裕司

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