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日本上陸はあるか?インドネシアで急成長を遂げる〝客席のない〟コーヒーチェーン「Kopi kenangan」

2022.03.30

世界を見渡してみると、「こんな営業形態のお店が日本にもあったらいいのに!」と思ってしまうことが多々ある。

それは「日本じゃできないだろうなぁ……」というものではなく、むしろ「日本に進出しても成功するんじゃないか!」というものだ。

インドネシアのスタートアップが展開する『Kopi kenangan』は、まさにそのような喫茶チェーン店だと筆者は確信している。

Kopi kenanganはある工夫を施したことで、「客席のない店舗」を実現させたのだ。

「デジタル立国」を突き進むインドネシア

インドネシアは、「社会のデジタル化」が著しい国のひとつである。

2015年頃にAndroid OSのスマホが急速普及すると、あらゆる既存業種が「スマホとの連携」に舵を切るようになった。

その代表格が『Gojek』である。インドネシアには「Ojek」と呼ばれるバイクタクシーがあるが、これをオンライン化するGojekが大きな人気を集めたのだ。

いや、「人気を集めた」どころではない。今やGojekは社会インフラのようになり、独自の電子決済サービス『Gopay』まで登場して大きな経済圏を生み出すようになった。

インドネシアの「東南アジアの発展途上国」と考えてはいけない。この国ではパンデミック以前から、スマホアプリを活用したデジタルサービスが雨後の筍のように発生しているのだ。

喫茶チェーン店Kopi kenanganは、まさに「スマホアプリと連携する社会」を象徴するかのような形態の店舗を構える。

Kopi kenanganの第一の特徴は、密閉容器である。

プラスチック製のコップに飲み物を入れたら、直後にその口をビニールでシーリングする。

こうすることで、コップが破損しない限り横にしても逆さにしても飲み物がこぼれないようになっている。

第二の特徴は、オンラインでのオーダーに対応しているという点だ。ピックアップとデリバリーの両方に対応する。

客が指定した店舗へ注文を取りに行く方法と、バイク便を使って注文を届ける方法だ。上述のように口が密閉されているから、「飲み物のデリバリー」ということが可能になるのだ。

そしてその結果、店舗の形態そのものがスターバックスコーヒー等の外資系と一線を画すことになった。

客席を持たない喫茶店って何だ!?

筆者が利用したことのあるKopi kenanganの店舗は、オフィスビルのデッドスペースを活用する形で設置されていた。

驚いたことに、喫茶店なのに客席がないのだ。

2022年1月の時点で、Kopi kenanganはインドネシア45都市に600以上の店舗を構える。

この中には広い喫食スペースと客席を用意している店舗もあるが、それとは逆に客席を一切持たない「キヨスク型」店舗も多い。

しかし、コーヒーを作る機械は完備されている。つまりピックアップを最重視しているということだ。

確かに「持ち帰りの客」だけにフォーカスを絞れば、客席など必要ない。

小さな面積にも店舗を構えることが可能になり、デッドスペースの有効活用にも一役買うことになる。

4年でユニコーンに!

このKopi kenanganのコンセプトは、2017年の創業直後から現地市民の大好評を得た。

2018年10月にはシードラウンド800万米ドル、2019年6月にはシリーズA2,000万ドル、2020年5月にはシリーズB1億900万ドルと経て、2021年12月にシリーズC9,600万ドルの資金を調達した。

そしてこれにより、Kopi kenanganはユニコーン企業(創業10年以内で10億ドル以上の評価額がある未上場企業)の仲間入りを果たした。

Kopi kenanganの大躍進は、内資優先を貫こうとするインドネシア政府の意向に沿うものでもある。

インドネシアの経済方針は、今も昔も保守主義即ち国内企業優先主義である。

ところが喫茶チェーン店の分野では、インドネシアでも外資の存在が非常に強い。この状況に風穴を空け、地場系チェーン店の躍進を促そうというのがインドネシア政府の望みでもある。

もちろんその先には、「地場系チェーン店の国外進出」という大きな目標もある。

こんな店がマジで欲しい!

密閉容器、スマホアプリ、オンラインデリバリー。これらの要素が組み合わされば、店舗の形そのものが未知なるものに変わってしまう。Kopi kenanganはそれを実証したのだ。

てか、こんな店が職場の近くにあったら便利じゃないか!?

店内喫食をしないピックアップ派にとっては、Kopi kenanganのような形態はまさしく「理想の店」だろう。

そしてこのような喫茶チェーン店が、何らかの形で我々の国に伝導する可能性は十分にあると筆者は考えている。

テクノロジーの進化は、このような形で開花することもあるのだ。

【参考情報】
Kopi kenangan

取材・文/澤田真一

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