一般的に、ビジネスにおいては、顧客や上司、会社等の「期待に応える」のが常識だ。そうした中、顧客対応のエキスパートであるトップセールスなどは、さらに上を行く「期待を超える」「期待値を上回る」手法を採っている。
しかし、一般ビジネスパーソンからしてみれば、それは大変なことに思えるかもしれない。なぜなら期待に応えるだけで精一杯ということもあるからだ。しかし、競争に勝ち、成功するには「期待を超える」ことが近道とも考えられる。その手法を取り入れたトップセールス歴のある2人にメリットや手法を聞いた。
ファンづくり営業のエキスパートが教える「期待を超える」
まず一人目のトップセールスは、かつて外資系教育会社でプレゼンした顧客の98%から契約をもらうという、「ファンづくり」の営業スタイルを構築し日本でトップセールスとなり、世界142カ国中2位の成績を納めた女性営業のカリスマ、和田裕美氏だ。
もちろん、和田氏も「期待を超える」を実践している。「期待に応える」と比べて、どのようなメリットがあるのだろうか。
【取材協力】
和田裕美氏
ファンづくりセールスの専門家・作家
お客様の98%から契約をもらう「ファンづくり営業」で、外資系教育会社にて日本トップ、世界142か国中第2位となる。その後 “売れて好かれて稼げる”人を育成する専門家として独立。累計220万部67冊の作家でもある。
https://wadahiromi.com/
●「期待を超える」メリット
「『期待に応える』というのは、相手が想像できる範囲の行為になります。相手も『それを意識的に求めている』ので期待が返ってこないと不快になります。そこで期待に応えても、期待通りなので驚くこともなく、ここまでやって普通という段階です。
一方、『期待を超える』とは、相手が想像もしていなかったことをするため、サプライズ感や感動が生まれ記憶に残りやすくなります」
●「期待を超える」を過去に実践して成功した事例
和田氏が、過去に実践した「期待を超える」の事例を教えてもらった。
「現在、オンラインサロンを運営していますが、バレンタインデーには会員さま全員にバレンタインチョコを送っています。『まさかこんなプレゼントが!』と感動する方が続出しています。また、会員さまにはセミナー動画をお送りしているのですが、画質が少し悪かったと判断したとき、一切のクレームもないなかで先立って謝罪し、さらに全員に本をプレゼントしたときに、ミスを凌駕する感動が生まれ、ますますファンになっていただけたこともありました」
●「期待を超える」やり方のポイント
一般ビジネスパーソンがいきなり「期待を超える」をやろうと思うと、とても大変なことに思える。何かポイントはあるのだろうか。
「『相手が笑顔になるにはどうしたらいいか?』と絶えず想像する習慣を持つこと。普通はできて当たり前なので、『普通はこうするだろう』という常識を忘れて、普通以上を目指すこと。また、お客様の名前を覚えて名前で声がけすることも大切です」
●「期待を超える」の注意点
「期待を超える」を実践するときには、どのようなことに注意すればいいだろうか。
「『してやったぜ』など、ドヤ顔をしないことだと思います。また、行ったときに、相手の反応が悪かったり、相手が気付かなかったりしたときに『こんなことをしているんですけど』とわざわざ言うなど。これはダサいのでやめましょう」
リクルートのトップセールス4回!研修で「期待を超える」の大切さを説く
続いては、かつてリクルート社においてプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞し、40回以上の社内表彰を受けた後、株式会社フロムエーキャリアの代表取締役を歴任した伊庭正康氏。現在は自ら設立した研修会社で、「期待に応えるだけではなく、期待を超える」ことの大切さを説きながら、研修を行っている。
伊庭氏は、「期待を超える」ということは、「期待に応える」と比べて、どのようなメリットがあると考えているのだろうか。
【取材協力】
伊庭 正康氏
(株)らしさラボ 代表取締役
営業強化、リーダー強化等、年200回の研修・講演・コーチングに登壇。「できるリーダーは、これしかやらない(PHP研究所)」等20冊以上を執筆。仕事の悩みに答えるYouTube「研修トレーナー伊庭正康のビシネスメソッド」もスタート。
(株)らしさラボ ホームページ
http://www.rasisalab.com/
YouTubeチャンネル「研修トレーナー伊庭正康のビジネスメソッド」
●「期待を超える」メリット
「期待に応えることを100回やっても、すごいとは言われません。それができてて合格だからです。むしろ、100回中、2~3回期待に応えることができていないと、ネガティブな評価をもらってしまいます。
一方で、期待を超える行動をとれば、2~3回やるだけで、仕事ができる人、と評価をされます。その結果、仕事での相談が増え、『重要な仕事を任せてもらえる』『よりよい関係を構築できる』『営業なら売上が上がる』等の効果が得られます」
●「期待を超える」を過去に実践して成功した事例
伊庭氏が、過去に実践した「期待を超える」の事例を教えてもらった。
・営業
「“言われたわけ”ではないですが、お客様にとって『役に立つ情報』を持っていきました。私は求人広告の営業時代に、簡単なことながらやっていたことでは、応募の集まる広告を作成するという先方様の期待に応えるだけでなく、面接の方法、例えば場づくり、質問方法、不採用へのケア等をまとめたお役立ち資料を用意しました。他にやっている営業の方がいなかったので、これだけでも感謝されました」
・内勤
「“言われたわけ”ではないですが、職場の同僚の『効率を高める』方法で、お願いをすることを実践していました。
私は内勤時代に、各現場の提出書類に記載する箇所が多くありました。提出期限までに回収することは期待に応えるレベルでしたが、それだけではなく、現場に負担をかけないフォーマットを作成しました。例えば、項目の見直しや、選択式にするなどです。これだけでも現場や上司から感謝されました」
●「期待を超える」やり方のポイント
一流は、どんなことを考えて行っているのだろうか? ポイントを教えてもらった。
「コツは『相手の三手先』を読んだ行動をすること。この後、相手は、どのような行動をするのかを想像するのです。また、何かを相手から頼まれた際、『プラスα』ができないかな?と考えることをスタンダードにすることです」
●「期待を超える」の注意点
「期待を超える」行動の落とし穴は?
「『プラスα』とはいえ、効率よくやることを考えることです。つまり時間をかけずにできることをやるということ。
また、相手にとって不要な『プラスα』はおせっかいになってしまうので、『○○があるといかがですか?』と確認するのも一つの方法です」
期待を超えることは、相手のサプライズや感動を生み、メリットも豊富にあることが分かった。そして日頃から、「相手が笑顔になるにはどうしたらいいか?」と考え、相手の三手先を読むこと。今日からぜひはじめよう。
取材・文/石原亜香利