「スタートアップ創出元年」の動き高まる
2022年の年頭会見で岸田総理が、本年は「スタートアップ創出元年」と表明したのは記憶に新しいが、3月11日には経団連がスタートアップ企業の育成に関する新たな提言を発表。
2027年の5年後までにスタートアップの数を10倍=約10万社、ユニコーン(企業評価額10億ドル以上で非上場)の企業数を10倍=約100社にするという目標を掲げた。
まさに官民挙げての「スタートアップ創出元年」の動きが高まりつつある中、3月16日に広島県が「スタートアップ企業向け新プロジェクト」の始動を発表した。
実は広島県では、これまで県内各地でデジタル技術を活用した新たなビジネスの実証実験を行なう「ひろしまサンドボックス」や「スタートアップ・エコシステム拠点都市」としてのスタートアップ支援施策を積極的に取り組んできている。
そんな中で今回は、ユニコーン企業を広島から生み出すためのプロジェクト「ひろしまユニコーン10」を新たに始動した。
「ひろしまユニコーン10」とは、10 年間でユニコーンのような企業を10社創出することを目標として掲げ、広島から世界に大きく羽ばたき成長することを目指す企業を応援するプロジェクト。広島県が考えるユニコーンは、創業年数、分野、上場未上場にはこだわらず、時価総額10 億ドル以上への急成長を志向する企業を指すという。
スタートアップはもちろん、企業内で新事業にチャレンジしてカーブアウトを目指す人やアトツギベンチャーも歓迎し、成長フェーズに合わせたサポートを展開。さらなる挑戦への着火剤となり、広島に、挑戦することが当たり前の土壌・文化を形成するという。
そんな「ひろしまユニコーン10」プロジェクトの実現に向け、以下10のサポートメニューも用意している。
1.パートナー探しをアシスト!
広島県には、交流拠点「イノベーション・ハブ・ひろしま Camps」をはじめ、県内外の企業・人材が、延べ 5000 人集積。社会課題を解決したい人、アセットを活用したい人、仲間を求める人などが「クラウド上で」繋がれるようにエコシステムサイトを新規導入する(2022 年 6 月稼働開始予定)。リアルな対面での出会いに加えて、オンライン上で、24 時間365日交流できる「場」を用意。
「イノベーション・ハブ・ひろしま Camps」詳細:https://www.camps-hiroshima.jp/
2.実証フィールドをアシスト!
プロダクトリリースから社会実装に至るフェーズについて、広島県をまるごと実証フィールドとして、108つもの実証実験を実施してきた「ひろしまサンドボックス」がこれまで構築してきたフィールドやノウハウで、スタートアップ企業の実証・社会実装を全面的にバックアップ。
「ひろしまサンドボックス」詳細:https://hiroshima-sandbox.jp/
3.スモールスタートをアシスト!
実証フィールドに加えて、創業前後のアイデア段階に至る検証フェーズについても支援。事業の段階に応じて、専門家によるサポートや実証にかかる経費の支援などを予定している。
4.更なる急成長をアシスト!
企業のフェーズに応じたアクセラレーションや高度人材育成、スパコン利用環境の提供、ブランディングなど、豊富なメニューで事業の急成長をサポート。また、各産業分野での実証実験をはじめデジタルトランスフォーメーションに先駆的に取り組む。
5.資金獲得に向けた発信をアシスト!
ピッチコンテストをはじめ、様々なネットワークを活用して、企業の発信機会を提供。広島県が有する全国のコミュニティとの連携の中で特に、首都圏のVC等に向けた発信サポートに重点的に取り組む。そのほか、各種補助金の獲得支援、ファンドによる資金調達も用意した。
6.環境・エネルギー/カーボンリサイクル分野への進出をアシスト!
注力する分野として,「環境・エネルギー分野」における新規ビジネスのアイデア創出から、ビジネスプラン策定、実証開発までを一貫してサポート。また、カーボンリサイクル技術の研究や実証について、研究者や県内企業とのタイアップによる事業化を対象に、最長2年間で最大2千万円の補助制度を創設する。
7.健康・医療関連分野への進出をアシスト!
広島県は10 年間「医療関連産業の育成による産業クラスターの形成」を目指して、取り組んできた下地がある。県内外企業との「マッチング」「実証フィールドの提供」「バイオデザインプログラムによる人材育成」などの支援に加えて、産学官連携による社会実装のサポートや研究開発費用の補助も行なう。
8.海外ビジネス展開をアシスト!
海外現地コーディネーターを通じた販路開拓、海外企業とのマッチングや海外スタートアップ・政府機関等と連携したプロジェクト創出の支援を準備。また、JETROと連携した独自の海外展開支援プログラムや広島県と連携の覚書を締結しているインドの最大級インキュベーション施設「T-HUB」との取組なども計画。
9.広島県への企業移転をアシスト!
広島県内に本社機能を移転する企業には、最大1億円の助成。移転の検討で短期滞在する場合は、コストの最大90%を助成。すでに広島に移転した企業にも、県内の様々な機関に繋ぐなど、企業活動のサポートを行なう。
広島県への進出サポート詳細:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/office-relocation/
10.スタートアップフレンドリー!
広島県にはスタートアップの活動を全力で応援する知事と、職員がいる。職員一人一人の企業・人材との繋がりを活かして、マンパワーでアシスト!
「ひろしまユニコーン10」の記者発表会に登壇した湯﨑英彦広島県知事は、「ポストコロナの今後の時代、日本全体がさらに発展するためには、各地域が多様な姿で発展することが不可欠。そうすることで、新たな価値と経済循環が生まれ、地域と人々が輝き続ける。それが、日本全体の競争力を高めていくことにつながる」と述べた。
また、資本金10億円以上の企業が首都圏に集中している「東京一極集中」の課題解消にもつなげたいと意気込みを語った。
スタートアップ育成支援に積極的に取り組む広島県の動きが日本全体のモデルケースとなるか、各地方の今後の動きにも注目したい。
関連情報:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/
文・構成/小櫃謙