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バスケットボール男子日本代表トム・ホーバスHC「チームは生きもの。すべては信じることから始まる」

2022.03.19

2021年に開催された東京オリンピックで、バスケットボール女子日本代表チームを銀メダルへと導いた名伯楽、トム・ホーバスHC。現在はバスケットボール男子日本代表チームの指揮を執るホーバスHCに、これまでの人生と、〝最高のチーム〟の作り方について話を伺った。

トム・ホーバス氏

バスケットボール男子日本代表HC
トム・ホーバス氏(Thomas Wayne Hovasse)
1967年生まれ。ペンシルバニア州立大学卒業後、ポルトガルでプレー。90年来日。トヨタ自動車ペイサーズ、アトランタ・ホークスなどで活躍し、2000年引退。10年JX-ENEOSサンフラワーズのアシスタントコーチに就任。女子日本代表アシスタントコーチを経て、17年ヘッドコーチ就任、東京オリンピックで銀メダルを獲得。

女子がやったバスケットは男子でもフィットする

  現在、バスケットボール男子日本代表HCとしてチーム作りに取り組んでらっしゃいますが、HC就任のオファーは、いつ頃あったのでしょうか?

「オリンピックが終わった次の日には男子のオファーが来ました」

  そんなすぐにですか!

「でもずっと5年間、オリンピックで金メダルを獲るという目標があって、終わってから次の仕事は……少し休憩したかったね(笑)」

  他のチームからもオファーがあったのでしょうか?

「たくさん(笑)。オリンピックが終わって1週間後、ヨーロッパのトップチームからありました。WNBAやアメリカの大学のチームからの話もあったけど、次のシーズンまで待たないといけないから、日本やヨーロッパからのオファーは断らないといけない。それにすぐにでもコーチをしたいという気持ちが強かったので、1か月くらい考えてから、男子の日本代表が面白いかなと思い、決めました」

  男子日本代表のコーチを面白いと思った理由は?

「女子のやっていたバスケットが、男子にもぴったりフィットすると思ったんです」

  バスケットボールは身長の高さがアドバンテージになる競技ですが、逆に平均身長の低さを補うために運動量を増やして相手のディフェンスを混乱させ、どこからでも3ポイントシュートを確実に決めていく戦術〝スモールボールラインナップ〟ですね。

「日本の男子にはポイントガード、シューティングガード、スモールフォワードのポジションに面白い選手がいっぱいいる。そこにNBAで活躍している八村塁選手や渡邊雄太選手が加わると、すごくフィットすると思います。それに、女子が世界の2位になったことで、日本でバスケットがメジャースポーツになりそうなんです。だったらその手助けをしたい。私は日本で10年間プレーして、コーチも12年やりました。それをGive Backしたいんです」

  日本への恩返しですね。

「オリンピックでも女子の銀メダルに日本中が湧いたじゃないですか。男子も6年前にBリーグが始まって人気が出て、短期間でここまで来た。日本人はバスケットボールが好きになったと感じているんです」

「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」

2月末「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window2の試合を控える男子日本代表。

コーチングに活きている日本リーグでの選手経験

  5歳からバスケットを始めて、大学卒業後にポルトガルへ渡ってプレーした後、1990年に日本の実業団チーム「トヨタ自動車ペイサーズ」に入団した理由は?

「大学卒業後にNBAのトライアウトを受けました。ヒューストン・ロケッツとか。ギリギリで落ちてしまってポルトガルに行ったのですが、バスケ以外何もできなくてつまらなかった。仕事もなかった。それで、エージェントに『仕事もしたいんだ』と伝えたら、ニューヨークでトヨタのトライアウトがあったんです」

  当時、日本のことはどれくらいご存じでした?

「日本の文化とか全然わからなくて。仕事もアルバイトくらいのイメージでした。でもトヨタに入ったらもう本当に仕事ですよ(笑)。朝7時半くらいに家を出て満員電車に乗って1時間半くらいかけて出社。夕方4時まで仕事してまた電車乗って、練習してから夜9時くらいに家に帰る。週末は試合。大変だったね。でも日本語も勉強になったし、日本の文化やビジネスを見られていい経験だった」

  仕事は辛くなかった?

「仕事は嫌いじゃない。暇が嫌いなんですよ。チャレンジも好き。トヨタでは海外マーケティングの仕事をしたけど『トムはバスケット選手だからそんなに働かなくてもいいよ』と言われたくなかった。だから、世界各地の販売店に送る雑誌を作ったり、カンファレンスで来日した外国人社員に、日本のビジネススタイルについて話をしたりしましたよ」

  その経験は、今に生きているんでしょうか?

「それは大きいと思います。例えば満員電車乗っている時って、みんな静かにしているじゃないですか。でもアメリカだったらすぐにケンカになるかもしれない(笑)。そこで、日本人は我慢強いんだということを知った。やっぱりコーチは、選手の気持ちや考え方をわかってないとダメ。それは普通のビジネスマンも同じでしょ。経営者と従業員の間で良いリレーションシップが作れないと、業績を上げるのは難しいですよね」

日本で10年間プレー、12年間コーチをした経験をGive Backしたい

トム・ホーバス氏

やっぱり私は、バスケットが好きだった

  4年間トヨタでプレー後、念願のNBA入りを果たし、アトランタ・ホークスに入団。その後、下部リーグのピッツバーグ・ピラニアズを経て、1995年にトヨタに復帰。東芝レッドサンダーズに移って1シーズン戦い、2000年に現役を引退。その後、アメリカに帰国したのですか?

「1995年に結婚して、子どもが2人いて仕事が必要だったので、帰国してFBIに挑戦しました」

  連邦捜査局ですか!

「私の父と兄は軍に勤めていて、親族には警察官や消防士が結構いるんです。だからそういう仕事をやりたかったんです。でも9.11のテロがあって、進んでいた採用試験が中止となり、小さなIT企業に入りました。その後、会社が大きくなって、私はエグゼクティブ・ヴァイスプレジデントになり、2009年まで働いていました」

  その間、バスケットには関わっていなかった?

「息子のチームのコーチをしたりしていました。仕事は順調で給料も悪くはなかったのですが、やっぱり私はバスケットのほうが好きだった。それで『コーチになろう』と決めた頃、ちょうどJXサンフラワーズからオファーがあったんです。凄いタイミングでした」

深いリレーションシップにはコミュニケーションが必要

トム・ホーバス氏

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