メタバースでは、教室での座学ではなかなか体験できない、リアルな教材やシチュエーションを仮想体験することが可能だ。その体験を共有することにより、ほかの生徒とも仲良くなり、オンラインでの関係が深まるほど、リアルで会う価値は高まる。友達の存在が学習意欲の向上や継続にもつながることに。
メタバースに期待されるパーソナライズされた学習体験
授業をはじめ、課外活動や年中行事、生徒同士の交流から就職活動支援まで、学校教育の幅広いシーンにVRを導入し、成果を上げているのが、角川ドワンゴ学園のN高等学校・S高等学校だ。同校では2021年4月より、普通科でのVR活用をスタート。生徒にVRヘッドセットの『Quest 2』を配布し、履修可能な教材の過半数を対応させるなど、VRで学べる環境を整えている。アバターで参加するVR授業では一緒に学ぶ生徒の存在を身近に感じられ、3Dの教材に触れたり、歴史的遺産を360度見て回ったりもできる。交流会が開かれることも多いと、S高等学校の吉村総一郎校長は話す。
「VR体験の共有で、生徒同士が驚くほど仲良くなるんです。友達ができると学習意欲も増し、通信制教育の課題(学習の継続)にも効果が出ると考えています」
一方「まだ導入障壁が高く、VR酔いなどの課題もある」とのこと。生徒はもちろん、教職員の研修にも時間がかかるようだ。
「生徒の成長は個々に違うので、今後のネット教育はパーソナルに最適化する方向性になっていくでしょう。VRを使ったメタバースの教育なら、個々の興味やニーズに合わせたシチュエーションの体験もできる。そこに大きな可能性を感じています」
学園の生徒たちはバーチャル空間ですぐに仲良くなりますよ
S高等学校 校長 吉村総一郎さん
ソフトウェアエンジニアとして「ニコニコ生放送」の開発を担当した後、プログラミング教育に注力。2021年4月に新設されたS高等学校の校長に就任した。
学校法人角川ドワンゴ学園
N高等学校・S高等学校
N高等学校は沖縄県うるま市、S高等学校は茨城県つくば市に所在し、インターネットを通じて全国どこからでも学べるネットの高校。2021年4月からVRを活用した授業を導入。4000人以上の生徒がVRで学んでいる。
◆採用プラットフォーム:VirtualCastほか
【活用例(1)】議論や考え方を共有し合えるディスカッションや学術発表
2019年から行なわれている生徒による活動発表イベント「NED」。昨年はメタバースの空間内で開催された。アバターの生徒が登壇し、スライドを投影しながらスピーチするプレゼンテーション大会のほか、展示ブースも設置。ゲストを招いての交流会なども実施された。「生徒同士が意見を交わせる場になりましたね」(吉村校長)