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ここ最近、仕事で感じた最も印象に残っているネガティブな感情TOP3、3位退屈・無意味、2位怒り・嫌悪、1位は?

2022.02.28

仕事で感じた最も印象に残っている感情TOP3、3位退屈・無意味、2位怒り・嫌悪、1位は?

仕事や職場のなかで、「感情」という側面は、いくつかの観点から、今日、益々重要になってきている。

1つめの観点は「技術の進展」。AIやロボットに仕事が置き換わっていくとき、人間が行なったほうが良い仕事のひとつとして、感情に関連する仕事がある。

人の表情や声のトーン、場の空気や文脈のなかで感情を読み取り、うまく対処していくことが、今、注目されている。

2つめに「VUCAの影響」。正解もなく、変革が当たり前で、スピードが求められると、毎日のストレスで心理的負担は積み重なっていく。VUCA時代の心理的負担の軽減は、今後のビジネスパーソンの大きな課題となるだろう。

3つめに、エンゲージメント、キャリア自律、心理的安全性、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンなど、今日の人材マネジメントを考える上でのキーワードが、働いている人たちの感情の問題と関連していることにある。

4つめが、「テレワークの進展」。テレワーク続きで、孤独感をかかえ、評価されていないのではと不安になる人もいる。

よりよく働くには、自分でそのような感情に気づき、どのように対処していけばいいのか学んでいく必要がある。

仕事場面での感情は、パフォーマンスや健康に影響を与えるが、その実態を捉えた調査はあまりない。そこで、リクルートマネジメントソリューションズは、2021年12月に20~49 歳の会社員826 名に対し、「仕事と感情に関する意識調査」を実施し、「仕事中に経験した感情」や「仕事と感情についての意見」など、調査結果から見える実態について公表した。

●仕事中に経験した感情について、約8割が「心配・不安」。一方「嬉しさ・喜び・感謝」も約6割(図表1・2)

直近1カ月の仕事中に経験した感情について、「非常によく感じた」「よく感じた」「ときどき感じた」の回答が多かったのは、多い順に「心配・不安(78.2%)」「怒り・嫌悪(71.6%)」「退屈・無意味(64.1%)」といずれも、ネガティブな感情である。

次いで、「嬉しさ・喜び・感謝(62.5%)」「親しさ・心地よさ(61.2%)」とポジティブな感情が続く。

「ここ1カ月で最も印象に残っている感情」を尋ねた結果では、ネガティブな感情が約6割(59.7%)、ポジティブな感情が約4割(40.3%)だった。

図表1 ここ1か月で仕事中に経験した感情

図表2 ここ1か月で最も印象に残っている感情

●同じような経験でも、人によって異なる感情につながっている(図表3)

図表2で選択した感情について、印象に残っている理由やエピソードを尋ねた。

同じ感情についても、人によって多様なエピソードが見られる。また、大きな仕事を任された、といった同じような経験でも、楽しさや自信につながっているケースもあれば、心配や不安につながっているケースもあり、人によって抱く感情の違いが明らかになった。

図表3 印象に残っている理由など、具体的なエピソード

●一般的に感情を用いる労働だと言われる接客・サービス以外の職種でも、感情労働の3要素「感情の要求・制御・演技」は、半数以上で求められている(図表4)

営業系・事務系・技術系のオフィスワーカーにおいて、感情を用いた職務遂行が求められる「感情労働」がどのくらい行なわれているかを確認した。図表4は、感情労働の3要素7項目についての回答結果である。

「とてもあてはまる」「あてはまる」「ややあてはまる」の割合で見ると、「感情の要求(職務遂行において感情を用いることを求められる)」は約8割、「感情の制御(本当の感情を抑える)」は約7割、「感情の演技(求められる感情を演じる)」は約6割と、いずれも半数を超えていた。

図表4 感情労働の実態

●「仕事や職場に感情を持ち込むべきではない」と考え得る人は約7割(図表5)

「仕事や職場に感情を持ち込むべきではない」という考えについての賛否を尋ねたところ、約7割が「持ち込むべきではない」と回答した。一方で、自分の職場では「持ち込むべきではないと考えている人が多い」と思う人は約6割である。

図表5 仕事と感情についての意見

●感情表出(自分の感情を表にだすこと)に対する考え方には正反対の意見がある(図表6)

図表5の「持ち込むべきではない」についての肯定と否定、それぞれの理由を見ると、持ち込み否定派が「成果を妨げる」「判断がぶれる」「組織がまとまらない」とするのに対し、持ち込み賛成派は「やる気や成果につながる」「理解し合うのに役立つ」「ストレスを防ぐ」「条件付きでOK」となっている。

⇒成果をあげること、組織がまとまることに対して、感情を持ち込むことがプラスに働くかマイナスに働くかついて、職務の特性や個人の考え方により、正反対の意見があることがうかがえる。

図表6 仕事と感情についての意見(理由)

●ネガティブ感情でも「感情を職場で伝えてよかった」8割以上(図表7・8・9)

図表2の「この1カ月で最も印象に残っている感情」について尋ねたところ、回答者のうち、「その場で自分の感情を出した」人の割合は、ポジティブな感情で33.6%、ネガティブな感情で11.3%、「あとで他の人にそのときの感情について話をした」は、ポジティブな感情29.5%、ネガティブな感情31.0%だった。

あとで伝えるのは、ポジティブな感情、ネガティブな感情共に約3割だが、その場での表出はポジティブ感情の方が有意に多い。

「あとで他の人にそのときの感情について話をした」220名に「誰に話したか」について尋ねたところ、ポジティブな感情、ネガティブな感情共に、「職場の同僚」が6割以上と最も多い。

次に多いのは、ポジティブな感情は「職場の上司」( 37.2%)、ネガティブな感情は「家族・友人・知人」(39.6%)である。

同じく、「この1カ月で最も印象に残っている感情」について「あとで社内の人に話した」人に尋ねたところ、「話してよかったと思う」人は、ポジティブな感情では100%、ネガティブな感情でも8割以上(83.5%)と、話してよかったという回答が圧倒的に多かった。

図表7 仕事中に感じた感情を人に伝えたか

図表8 仕事中に感じた感情を誰に伝えたか

図表9 仕事中に感情を伝えて良かったか

●職場で感情をうまく伝えれば良い結果につながり得る(図表10)

図表10は「職場の上司や同僚に、自分の気持ちや感情を隠さずに伝えたことで、良い結果につながったと思う経験」についての自由記述を抜粋したものだ。

困ったときやつらいときに思い切って気持ちを伝えることで「周りが動いてくれた」「楽になった」、より良くしたいという気持ちを正直に伝えることで「仕事がうまく進むようになった」「自分の考えが変わった」との記述が多く見られた。

⇒職場で感情を伝えていくことは、賛否もあり場合による面もあろうが、うまく伝えれば良い結果につながり得るといえるだろう。

図表10 職場で感情を伝えてよかった経験

調査担当研究員

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 研究員 佐藤 裕子氏

1990年にリクルート入社。法人向けのアセスメント系研修の企画・開発、Webラーニングコンテンツの企画・開発などに携わる。その後、公開型セミナー事業の企画・開発などを経て、2014年より現職。研修での学びを職場で活用すること(転移)に関する研究や、機関誌の企画・編集などに携わる。

組織行動研究所 所長 古野庸一氏のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 所長 古野 庸一氏

私たちの仕事の裏側には感情がある。ちょっとした同僚の言動に心が揺れる。自分が失敗したにもかかわらず、周りから助けられて、目頭が熱くなったり、あるいは、顧客の理不尽な要求に腹立たしさを感じたりする。そのような感情に向き合い、うまく活用できれば、個人も組織もより健全になる。ここでは感情を上手に取り扱うための5つの視点を提示したい。

1つめは「認知転換を行う」ことである。感情を動かされる経験には、トリガーになる出来事とそれに対する反応の間に、「認知のプロセス」が存在する。そのようなプロセスを考慮し、出来事と反応の間の認知を変えることで、感情をうまく取り扱うことができる。

例えば、理不尽なことを言う乗客に対して、その乗客は初めて飛行機に乗る人であり、ナーバスになっていると認知を変える。それは、単に顧客満足につながるだけではなく、客室乗務員自身の心理的負担を軽減させることにもつながる。

2つめの視点は「ネガティブな感情を利用する」ことである。明日への不安があるから準備を行い、現状への不満があるから改善を試みようとする。

ネガティブな感情に対して、その感情はどういう感情なのか、それはなぜ起こるのか、どうすればそれが収まるのか、さらに、自分は何を大切にしているのかというように、内省をすることで、よりよい精神状態をつくり、パフォーマンス向上にもつながる。

3つめの視点は、「自分の感情のクセをつかむ」ことである。ポジティブな感情に重きをおいて仕事に取り組むほうが自分のモチベーションが上がるのか、それともネガティブな感情に重きを置くのか。

個人によって、あるいは場面によって、そのクセは変わるが、自分がどのようなクセをもっているのか知ることが、自分の感情の持ちようと仕事のパフォーマンスをつなげる鍵になる。

「認知転換を行う」「ネガティブな感情を利用する」「自分の感情のクセをつかむ」ことの前提として、自分の感情にきちんとしたラベルを貼れることが求められる。つまり、「感情粒度を高める」ことが必要になる。

これが4つめの視点である。自分の今の感情をきめ細やかに客観視できることで、感情を理解することができ、内省を促進させ、他者と自分の感情に関するコミュニケーションを円滑にすることができる。

5つめの視点は、「居場所をデザインする」ことである。場所を変えることで、心地よさが変わり、仕事がはかどる。ワーケーションやテレワークのように、自分が最も生産性を上げられる場所を選択できることも居場所のデザインになる。

以上、働いている人の感情を取り扱う上での視点を提示した。最初の4つの視点が個人の話であり、5つめの視点が組織視点であるが、いずれもトレーニングによって改善できるという点で、経営として関与できる。

しかしながら、これらを意識的に取り入れている会社は多くはないと思われる。神経科学やセンサー技術により、私たちの感情は科学的に把握できるようになってきた。感情の重要性についてあらためて考え、感情を科学的に扱うことが経営に求められているといえよう。

調査概要

関連情報:https://www.recruit-ms.co.jp/

構成/DIME編集部

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