その原因はホルモンバランスだった!
正式名称は、「ホルモン反応性尿失禁」。避妊手術でホルモンバランスが変化することによって起こる症状です。もちろん手術をした全員がなるものではなく、手術の仕方に問題があったわけでもありません。
尿道は子宮の近くにあるので、ホルモンがなくなることによって尿道周辺の括約筋(かつやくきん)や自律神経に影響を与えることがあるのだとか。生後、初回から2回目の生理が来るくらいまでに避妊手術をした雌犬の20%ほどに起こる症状なのだそうです。
この症状が起こるのは、卵巣子宮摘出をして3年ほど経った頃。眠っている間や、横になっているときの尿漏れが多いようです。それはまさに、小雪さんに当てはまるものでした。
さらに、中型犬や大型犬に起こりやすいと言われています。中型犬のボーダーコリーも、この「ホルモン反応性尿失禁」の症例が比較的多い犬種なのだそう。そのほか、ドーベルマン・ピンシェル、ジャイアント・シュナウザー、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、ロットワイラー、ボクサーなどの犬種に、特に症状が現れやすいと言われています。
見晴らしの良いドッグガーデンも併設されている「たまプラーザどうぶつクリニック」(田園都市線たまプラーザ駅より徒歩3分)にて。
「ホルモン反応性尿失禁」の治療法は?
それでは、この症状はどのように治療するのでしょうか。もし薬で治そうとするなら、交感神経を高めるアドレナリン作動薬「フェニルプロパノラミン」や「エフェドリン」などが有効なのだそう。ただ、興奮させるような副作用は少し心配です。
もしくは、女性ホルモン製剤を使う方法があるようです。こちらは、ホルモンを補充して、いわば避妊手術前のような状態へ戻す方法。こちらも強い薬なので、副作用で体調が悪くなることもあるとか。いずれにしても、これらの薬は対処療法なので、ずっと飲み続ける必要があります。
井上先生は、こんなふうに提案してくださいました。「小雪ちゃんの場合、尿漏れしてしまうのは病気ではなさそうです。できれば薬を飲まずに済ませたいので、まずは膀胱におしっこをためないようにする習慣をつけてみてはどうでしょうか」。
この症状は、いわばおしっこを我慢する感覚がにぶっているようなものなので、そもそも膀胱におしっこをため過ぎなければ良いというわけです。子犬の頃トイレトレーニングをしたように、「そろそろおしっこかな?」というときにトイレへ連れていってあげるだけ。それで回避できるなら、家人もお掃除が大変ではなくなるし、本人的には何も問題はありません。
ここで、井上先生から注意点が。「ただし、夜など尿漏れを気にして『あまり水を飲ませない』ということだけは、絶対にやめてください。脱水症状のほうが怖いですからね」。人間も同じですが、トイレが近いからと水を飲まないようにするのは、かえって体に大きな負担をかけてしまいます。水は今まで通り、いつもきれいなものが飲めるようにしてあげましょう。
そして、小雪さんはどうしたかと言うと…本人の性格を見越したある秘策を試み、この問題は一気に解決しました。解決法は、とっても単純。「トイレでおしっこできたらオヤツあげるよ!」作戦です(笑)。
小雪さんの場合は、この対処だけでまったく尿漏れがなくなりました。こちらが何も言わずとも、ごはんのあとには必ずいそいそとトイレへ向かうように。歯みがき効果もあるオヤツをあげれば、一石二鳥です。夜なども家人が寝る前に自分からトイレへ行くようになりました。ゲンキンすぎる…今までの苦労は何だったのか…。
ただ、たまにおしっこが出なくてもトイレの周りをぐるぐる回って出そうとしたりするので、「尿意がなくても早めのトイレ!」ができているということだと思います。家人の作戦勝ちでしょう。
トイレにおしっこしただけなのに、「エライでしょ(オヤツちょうだい)!」と得意顔の小雪さん…。ほぼ毎食後の光景です(笑)。
もちろん個体差もありますし、もしかしたら病気の可能性もあります。必ずかかりつけの先生に診てもらって欲しいのですが、困ったおもらしの解決方法の一例としてご紹介させていただきました。ぜひ、参考にしてみてください!
文/中西 未紀
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