リモート会議やリモートでのセミナーなどが定着してきたが、最近ではリモートでのプレゼンを行った経験のある人は多いのではないだろうか。しかし不慣れな中で、なかなかうまくいかなかったという人もいるだろう。
そこで今回は、プレゼンテーションのプロに、失敗しない、聞き手が眠くならないリモートプレゼンの法則を教えてもらった。
眠くなる残念なリモートプレゼンを予防するポイント5つ
SNS上では、プレゼンに関して「プレゼン上手い人だと眠くならないの不思議だわ」「この人のプレゼン、マジで睡魔との戦い」などの声を見かける。特にリモートでのプレゼンは、リアルでのプレゼンと比べると眠くなりやすいところがある。
そもそも、どんなプレゼンが人を眠くさせるのか? 一般社団法人日本プレゼンテーション教育協会の代表理事で、プレゼン・トレーナーの西原 猛氏に聞いてみた。
「眠くなるプレゼンは、まず話し方が『単調』です。抑揚が無いので、何を言いたいのかわかりにくく話に集中できません。そして『話が長い』ので、聞くための集中力は低下し続けます。さらに『一方的に話し続ける』ので、ついに聞くのが疲れて眠くなります。
また、話し方は良くても『内容が期待外れ』や、『スライドを読み上げるだけ』では、やはり興味が失せて眠くなります」
【取材協力】
西原 猛氏
一般社団法人日本プレゼンテーション教育協会
代表理事/プレゼン・トレーナー
一般社団法人日本プレゼンテーション教育協会は全国の企業や団体、大学向けに対面・オンライン・eラーニングでプレゼンテーションとコミュニケーションを教えている。著書「ぐるっと!プレゼン」(すばる舎)等
https://jpea.jp
これらの眠くなるプレゼンをリモートでしている自覚がある場合、どんな風に気を付ければいいか、西原氏にアドバイスしてもらった。
1.単調な話し方をしない
「単調な話し方をしないためには、抑揚をつけて話すことです。抑揚とは、話す速度を『ゆっくり・普通・速く』と変えたり、言葉を強調したりして話すことです。まず速度は普段、人と会話しているときを普通として、重要な箇所はゆっくり、余談や参考程度の話など、それほど重要ではない話は速く話すと、メリハリがついて眠くなりにくいです。
次に強調とは、キーワードや数字などの単語を『強弱』『繰り返し』で、調子を強めていうことです。強く発したり、音量を大きくしたり、繰り返して念押ししたりすると、聞き手に集中して話を聞いてもらいやすくなります」
2.長々と話さない
「社長のスピーチ、上司の朝礼など、プレゼンに限らず、話が長いとあっという間に疲れて眠くなります。聞き手を眠くさせないためには、長々と話さないことです。『…で、…ですが、…なので、…』と話し続けるから、話がだらだらと長くなります。そこで『…です。』『…ます。』と、短く話をまとめることを普段から意識しましょう。ちなみに、自分がどれだけ長く話しているかを知るには、スマホなどで録音・録画すると良いです。自分の姿を見るのは、なかなか勇気が必要ですが、重要なプレゼンを成功させたいなら、一度は確認しておきましょう」
3.一方的に話し続けない
「長々と話すだけでは飽き足らず、さらに一方的に話し続けると、聞き手はあっという間に疲れて眠くなります。プレゼンというと、一方的に話すイメージが強いのですが、実は眠くさせない人は『御社ではリモートでのプレゼンは多いですか?』というように、聞き手と対話しながら進めています。対話することで、聞き手の考えや知識レベルを知ることができて一石二鳥です。なお、リモートでは聞き手がカメラを切っている場合があります。うなずきや表情などの反応が見えないため、いつも以上に聞き手と対話することを心がけましょう」
4.聞き手の期待を外さない
「そもそも聞き手があなたのプレゼンを聞く目的はなんでしょうか。それは『問題解決』のためです。例えば、人手不足を解消したいとか、コストを下げたいなどです。つまり聞き手はあなたのプレゼンを聞いて、人手不足問題を解消できるかどうかを知りたいわけです。ところが眠たくなるプレゼンをしてしまう人は、会社概要や自己紹介、人材サービスの特徴やシステムの説明など、聞き手が聞きたいことではなく、自分が話したいことばかり話してしまいます。結果、聞き手は期待外れなプレゼンに興味を失い、日頃の睡眠不足でも解消するか…となります。プレゼンを考える段階で、聞き手は何を期待しているのかをしっかり考えましょう」
5.スライドを読み上げない
「リモートプレゼンでは、スライドを画面共有しながら話すこともあります。ところがこのスライドが文字だらけで、しかも書いてあることをただひたすら読み上げるだけでは、数秒で眠くなります。そもそも、話し手が文章を読み上げる速度よりも、聞き手が目で読むほうが圧倒的に速いわけです。つまり、すでに聞き手はスライドを読み終えているにもかかわらず、まだ、たらたらと読み上げているので、聞き手はこっそりネットニュースを見たり、メールチェックしたりして、プレゼンを聞いてくれなくなります。
スライドには要点だけを箇条書きにしたり、図解したりして、なるべくひと目でわかるようにしましょう。そして詳細は口頭で伝えるようにすると、聞き手はあなたの話に耳を傾けてくれますよ」
眠くならないリモートプレゼンの法則3つ
眠くなるリモートプレゼンを回避する方法がわかった。そこで、プロの技もぜひ取り入れてみたい。そんな人に向け、西原氏に、眠くならないリモートでのプレゼンならではの法則を3つ教えてもらった。
その1「リモートプレゼンは対面より短く」
「ビジネスプレゼンの時間は、一般的に対面の場合20~30分(当協会調べ)ですが、リモートプレゼンではそれより短く、10~15分程度にしたほうが眠くなりにくいです。理由は、画面越しで話し手の存在を感じにくく緊張感に欠け、集中しにくいからです。
また自宅からのテレワークであれば、我が子など家族のことなどが気になって、長い時間集中しにくいですし、カフェなどの外からですと周りがざわざわしていたりして、これまた集中できません。加えて、前述のように話し方が単調だったり、スライドを読み上げるだけだったりすれば、聞き手はあっという間に『夢の世界』へ旅立ってしまいます。
対策として、例えば商談時間を30分とすると、プレゼン時間は15分とコンパクトにして集中しやすくして、残りはヒアリングや質疑応答に当てるなど、聞き手とのコミュニケーションの時間を増やしたほうが、双方にとって有意義な時間となりますよ」
その2「ビジネスは結論が先、理由・詳細は後」
「プレゼンに限らず、何を言いたいのかよくわからない話し方をしてしまう人は、聞き手を眠くさせます。聞き手は一生懸命、話し手が何を言いたいのかを理解しようとします。しかし、いくら聞いても何を言いたいのかわからなければ、そのうち脳が疲れてきて眠くなります。そこで何を言いたいのかハッキリさせるためにも『ビジネスは結論が先、理由・詳細は後』という鉄則を覚えておきましょう。プレゼンにおける結論、期待できる成果は何か、予測されることは何か、自分の意見は何か。つまり、聞き手が一番聞きたいこと、知りたいことを話すということです。その後に詳しい理由や根拠となるデータなどについて話します」
例)
結論 :『新素材を使えば25%軽くすることが可能です』
理由・詳細:『新素材と従来の素材の比較データがこちらです』
「この順番で話すことで、聞き手は何を言いたいのかがよくわかるので、無駄に脳を使わず眠くなりません。なお、これはプレゼンに限らず、報連相やスピーチにも共通です。ぜひ使えるようにしておきましょう」
その3「眠くなる時間帯や曜日を避ける」
「昼食後、金曜日の夕方など、どうしても眠くなる時間帯や曜日があります。まず昼食後は睡眠・覚醒リズム上、どうしても眠くなる魔の時間帯です。ですから、わざわざその時間にプレゼンする必要はありません。よって14時から16時は避けたほうが良いでしょう。また一般的に月曜日は休日明けで忙しいし、金曜日も週末で忙しい、さらに1週間の疲労が溜まっているので、聞き手は集中しにくくなります。よって月曜日と金曜日は避けたほうが良いでしょう。
また最近ではオンライン会議が立て続けに入っていて、1日で7本も会議や打ち合わせがあってヘトヘト、なんていう話も聞きます。ですから、例えば社内でプレゼンする場合、聞き手の予定を確認して、なるべく早めに予定を入れると良いでしょう」
リモートプレゼンをする機会が多い人は、ぜひこれらをヒントに「眠くならない」プレゼンを心掛けよう。
取材・文/石原亜香利