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【仕事の裏側】さわかみ投信・草刈貴弘さん「私が舞台俳優からファンドマネージャーに転身した理由」 

2022.02.22

気になる“あの仕事”に就く人に、仕事の裏側について聞く連載企画。第10回は、さわかみ投信株式会社の取締役最高投資責任者 兼 ファンドマネージャーを努める草刈 貴弘さん。舞台俳優だった草刈さんが社会を変えるために「金融」という生業を選んだ理由、そして今後目指す未来について話を聞いた。

投資先企業を選ぶ基準は「将来を見据えた経営」

「ファンド(投資信託)」とは顧客から預かった資金を集め株式や債券などに投資・運用し、リターンを返す仕組みの金融商品のこと。ファンドマネージャーはアナリストと共に投資先企業の選別を行ったり、組み入れ比率や売買のタイミングなどを検討しながら運用を行う。

「さわかみ投信には二つの大きな運用方針があります。一つ目は長期投資。投資の世界ではコンマ0秒単位で価格が上下し、超短時間で利益を確定させる投資もありますが、さわかみ投信では長期的な視点で企業に投資をしています。

投資をギャンブルや投機と明確に区別しましょう。ギャンブルは勝つ人がいれば必ず同じだけ負ける人もいるものでゼロサムゲームです。また投機は価値ではなく価格の変動のみに注目しているので、タイミング勝負の短期的な投資になりがちです。私たちはそうではなく、投資対象の価値に注目し、その成長を皆で分け合うプラスサムを目指しており、そのためには長期投資が最適であると考えています。

二つ目は投資対象へのこだわり。私たちが投資先を選ぶときに大切にしているのは、社会課題を解決する企業や地域社会に貢献している企業です。そういった企業は将来を見据えた長期志向の経営なので持続的な成長が期待でき、長期投資を行う私たちと同じ目線で物事を捉えていると思っています」

顧客に利益を還元するのが運用会社の使命ではあるが、さわかみ投信が投資をする企業を選定するのに見るのは成績だけではない。経営方針や財務状況、事業計画だけでなく、人材や社会に対しどんなアクションを行っているのかなど、アナリストたちが徹底的に調査を行い、運用会議で幾度も議論を重ねた上で決定する。

金融の力で社会を変えたい。役者から金融の道へ

大学在学中から役者を志し、卒業後はホテルのウェイターをしながら、モデルや役者として舞台に立った。25歳で演じたある役がきっかけとなり、金融の道に進むことになる。

「就職活動が始まる大学3年の頃はちょうど就職氷河期で、周りもとても苦労していました。当時は経済状況も見通しは悪く日本に対して悲観的で、ただ楽しく生きられればいいやと考えていたんです。ところが、靖国神社で特攻隊員の役を演じることになったんです。特攻した学生が記した遺書や関連資料を読んだことで、自分の考え方が劇的に変わりました。今の日本や自分達の生活は先人たちの犠牲の上にあり、自分だけが楽しければ良いという生き方を恥じました」

草刈さんの進路に影響を与えたものがもう一つある。産学協同で電気自動車の実用化を目指す「エリーカ・プロジェクト」という取り組みだ。当時にしては画期的な技術と構想で、慶應義塾大学を中心に多くの企業が参加し膨大な費用が投じられたが、製品化されることはなかった。社会を変えるには長期的な戦略と資金が必要であり、金融機関に身を投じることでその一端に触れることができるのではと考えた。

「役者の経験しかなかったので就職活動は非常に苦労しました。一年ほど活動を続け、SBIマネープラザ(当時の社名はSBIフィナンシャルショップ)に入社できました。住宅ローンを担当していたのですが、ローンというのは手数料ビジネスなんです。住宅を買いたい人にお金を貸して、その手数料で儲ける仕組みです。当時はマンションミニバブルの頃で、返済能力がギリギリの人にも貸付を行っていて、そんな自分やビジネスモデルに少しずつ違和感を覚えるようになりました。お客さんの事ではなく、手数料のことしか考えないのですから。

そんな時にさわかみ投信のセミナーに参加しました。手数料で稼がない金融ビジネスを知ると同時に、自分が金融業界を志した当初の気持ちを思い出しました」

個人のお金の不安を解消し、世の中を変える力を持つファンドに

さわかみ投信に転職したのはリーマンショックの真っ只中にあった。苦しい景気が長らく続いたが、アベノミクスにより時代の流れが大きく変わった。長期にわたり投資を続けてきたファンド仲間(顧客)からは「信じていてよかった」「長年の夢が叶った」といった声があがった。

「さわかみ投信での投資を通じて実現したいことが二つあります。一つはファンド仲間のお金の不安を解消すること。お金が理由で自己実現できない人や、将来の不安から、目の前の消費を楽しめない人。そういった人たちも将来のために無理のない範囲で投資を続けることでお金の不安が解消され、人生を楽しむことができるようになると考えています。

二つ目は、社会課題の解決と地域活性化を投資で実現し、ファンド仲間だけでなく世の中も変えていきたいと思っています。従業員の立場だと、自分の給料をあげてほしい。しかし投資家や株主の立場になると、コスト削減のために従業員の給料を下げてほしいと思う。それぞれが自分たちの利を考えると、対立するかたちになります。社員、取引先、地域、株主といったステークホルダーが奪い合うのではなく、成長を分かち合うようにしたいと思っています。

地元の方が株主になると、より直接的なステークホルダーとなります。企業の成長は社員や地域にとって所得や雇用の増加につながり、地域はより豊かになるので、ヒト・モノ・カネ・チエが集まり地方活性化にも繋がります。地元企業の応援を目的とした投資が増え、それぞれの立場でその企業の価値向上に貢献できれば地域活性化にもつながり個人の資産も増える。そんな日本経済の上昇スパイラルを作りたいです」

【取材協力】

さわかみ投信株式会社
取締役最高投資責任者 兼 ファンドマネージャー
草刈 貴弘さん
https://www.sawakami.co.jp/

取材・文 / Kikka

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