資金繰りに関わってくる『法人税』は、会社経営に携わる人が把握しておきたいことの一つです。どのような税金なのか、税率や算出方法・申告・納付方法も含めて詳しく紹介します。法人にかかるその他の税金も知り、知識を深めましょう。
そもそも法人税とは?
『法人税』と『所得税』が同じだと思っている人もいるかもしれませんが、実際には異なるものです。まずは、『法人税』がどのようなものなのか、『所得税』との違いも含めて解説します。
法人の所得にかかる税金
『法人税』は法人が得た各事業年度の所得に対して、課せられる税金のことです。『法人』には株式会社や有限会社だけでなく、協同組合や公益法人・医療法人なども含まれます。
一方、『所得税』は個人の所得に対してかかる税金です。個人事業主が事業で利益が出た場合は、『所得税』を支払います。ただし、個人事業主でも一定以上の利益が出る場合は、『法人税』を納める方が納税額が少なくなるケースもあり、法人化を検討する人もいます。
参考:法人税|国税庁
法人税率について
法人税の税率は、どのように決められているのでしょうか?2022年3月現在の税率や、対象となる所得について紹介します。過去から現在までの税率の推移についても見ていきましょう。
法人税にかかる税率は均一ではない
『法人税率』は一律ではなく、資本金の規模や所得によって変わります。例えば、普通法人を例に挙げると、資本金が1億円を超える場合は『23.2%』です。
資本金が1億円以下の法人では、年間所得のうち800万円以下の部分に一部の例外を除き『15%』が課税されます。800万円を超える部分には『23.2%』の法人税がかかる仕組みです。
適用される『法人税率』は年度ごとに見直されますが、所得が800万円以下の中小法人などに対する軽減税率が延長されています。もともと800万円以下の部分にかかる税率が『15%』になるのは2021年3月31日までで、その後は本来の軽減税率である『19%』に戻る予定でした。
しかし2021年の税制改正で、軽減措置が2年間延長され、2023年3月31日まで『15%』が適用されると決まっています。
法人税の対象となる所得
『法人税』は所得金額に対してかかりますが、売上収入そのものが所得金額に該当するわけではありません。所得金額は、『益金額』から『損金額』を差し引いた金額で、『課税所得』とも呼ばれます。
『益金』は製品販売によって得た売上や雑収入を指し、『損金』は原材料費や人件費・支払利息などのことです。どちらも『法人税』の規定に基づき算出されます。
法人税の推移をチェック
過去30年ほどの推移を見てみると、年々、法人税が引き下げられている傾向があります。現在の基本税率は『23.2%』ですが、中小法人の年間所得のうち800万円以下の部分にかかる軽減税率は、2023年までの期間限定で『15%』です。
ピークは1984年で、基本税率が『43.3%』・軽減税率でも『31%』でした。税率が引き下げられている理由の一つは、より幅広く税負担を分かち合う仕組みを推し進めているためです。
ただ、法人住民税や法人事業税・地方法人税などもかかり、それらをトータルした『実効税率』は現在でも20%代後半です。政府が掲げていた目標には達していますが、世界的に見ると、やっとグローバルスタンダードに到達した程度といえます。
参考:法人税率の推移|財務省
法人税の算出方法
法人税の実際の算出方法を知ることで、事前にどの程度かかるのか把握できます。具体例も挙げるので、実際に算出する際に役立てましょう。
税金の計算方法
『課税所得』に該当する『税率』を掛けた額が、『法人税額』になります。所得が多いほど、税負担も多くなる仕組みになっています。
『課税所得』は、『益金』から『損金』を差し引いた額です。資本金が2000万円で課税所得が500万円の場合は、税率は『15%』です。したがって、『500万円×15%=75万円』が法人税額となります。
資本金が同じでも、課税所得が900万円の場合は、800万円までが『15%』で、800万円を超える部分が『23.2%』になります。つまり、『800万円×15%=120万円』と『100万円×23.2%=23万2000円』を足し、合計で143万2000円を支払う必要があります。
中小法人には税制上の優遇が多い
『中小法人』とは、事業年度終了時に資本金もしくは出資金が1億円以下の企業です。中小法人は800万円以下の課税所得に対して軽減税率が適用されるなど、税制上の優遇が多い仕組みになっています。
2009年には、中小企業の800万円までの所得にかかる法人税率が、22%から18%に引き下げられました。現在は15%まで下がっており、今後も中小企業の負担軽減を図るために15%の軽減税率が2023年まで延長されます。
また、中小法人は試験研究費に関わる税額控除を受けることも可能です。基本的に青色申告書を提出する法人で、損金に試験研究費が含まれる場合に適用されます。