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アパレルブランド「nico and...」などを展開するアダストリアが外食産業のゼットンを買収した理由

2022.02.13

アパレルブランド「nico and...」を展開するアダストリアが、ハワイアンレストラン「アロハテーブル」を運営するゼットンの株式40%から過半数を取得し、連結子会社化する予定です。TOBの期間は2022年1月4日から2月16日。ゼットンの株価885円を7.3%上回るプレミアムをつけて公開買い付けを開始しました。

アダストリアは2021年12月30日にゼットンの第三者割当増資を引き受けており、その時点で25.14%の株式を保有していました。TOBは成立し、アダストリアはゼットンを連結子会社化する見込みです。

ゼットンのTOBは盟友DDホールディングスとの決別であり、コロナ時代の外食業界らしいM&Aと言えます。この記事は、ゼットンがアダストリアに買収される背景や、アダストリアの狙いを解説する内容です。

買収のキーマンとなった稲本健一氏

ゼットンは1995年10月創業で、カフェやレストランの運営を行っています。主力レストランは「アロハテーブル」です。外食事業の他に結婚式場の運営も行っており、名古屋市が所有する日本庭園の徳川園や蘇山荘を結婚式場として再生させています。

2006年10月にセントレックスに株式を上場しました。2016年7月にダイヤモンドダイニング(現DDホールディングス)がTOBでゼットンの株式42.0%を取得し、持分法適用関連会社にすると発表しました。このとき、ゼットンの創業者で代表取締役会長だった稲本健一氏はTOBに応じることで合意しました。

DDホールディングスは2016年9月に計画通りゼットンを持分法適用関連会社化しますが、ゼットンは業績の低迷に苦しんでいました。2016年2月期、2017年2月期に純損失を計上しており、2期連続の赤字となりました。

■ゼットン業績推移

※純利益の目盛は右軸
※決算短信より筆者作成
https://www.zetton.co.jp/company/IR/news/result/

ゼットンは、集客力の強化やコストを削減して既存店の収益性を改善する必要がありました。そこで、DDホールディングスからゼットンへ役員を派遣するなど、緊密な関係を結ぶ必要があり、2017年6月にDDホールディングスの連結子会社となることに合意しました。ゼットンは2018年2月期に黒字化を果たします。

2017年5月稲本氏はDDホールディングスの取締役海外統括責任者に就任しました。ナンバー2とも言えるポジションです。

DDホールディングスのゼットン買収は、稲本健一氏が一番のポイントです。稲本氏はやり手経営者としてよく知られている人物です。その手腕は、2021年3月に出前館のアドバイザーに就任していることからもうかがい知ることができます。

DDホールディングスはゼットンの経営改革をする代わりに、稲本氏を役員に引き入れたように見えます。

難病を抱えながらも会社を成長させた名経営者

DDホールディングス喫緊の課題が、経営陣の強化でした。CEOの松村厚久氏は2015年に発売された著書『熱狂宣言』の中で、自身が若年性パーキンソン病に罹患していることを告白していました。

パーキンソン病は歩行が困難になる場合がある難病で、強烈なカリスマ性で会社を牽引してきた松村氏は右腕となる人物がどうしても必要でした。稲本氏は知名度、経営手腕、自身と近い年齢など、理想的とも言える経営者でした。ゼットンを連結子会社化した後、松村氏と稲本氏はイベントやインタビューで盟友ぶりをアピールしています。

稲本氏が役員になった後のDDホールディングスは目覚ましい発展を遂げます。2017年12月にイベントスペースを開発するエスエルディーの株式44.1%を取得して持分法適用関連会社化。2018年4月にCHEERを設立してハワイウエディングの強化を行いました。2019年12月に神奈川を中心にホテルを運営する湘南レーベルを連結子会社化しました。

DDホールディングスはもともと「わらやき屋」などの居酒屋を運営する会社でしたが、結婚式場やイベント、ホテル運営へと事業を多角化したのです。

しかし手を広げた事業はすべて、新型コロナウイルス感染拡大で甚大な影響を受けることとなるのです。

85億円の純資産を一瞬で吹き飛ばしたコロナ

DDホールディングスはコロナ禍の2021年2月期の売上高が前期比59.1%減の234億8,300万円となり、85億700万円の純損失(前年同期は14億4,200万円の純利益)を計上します。2020年2月末時点で純資産は85億3,300万円、自己資本比率は18.2%でしたが、わずか1年で債務超過へと転落したのです。

■DDホールディングス業績推移

※純利益の目盛は右軸
※決算短信より筆者作成
https://www.dd-holdings.com/ir/library/

このとき、連結子会社化したエスエルディーも7億4,000万円の純損失(前年同期は200万円の純利益)を計上し、3億3,200万円の債務超過に陥りました。

ゼットンも12億5,100万円もの純損失(前年同期は3億4,500万円の純利益)を出しました。純資産額は1億4,900万円となり、自己資本比率は4.2%で債務超過寸前にまで追い込まれます。

DDホールディングスに子会社を救済するだけの力はありません。第25回定期株主総会招集の通知には、金融機関からの借入金の担保に売掛債権だけでなく、物件の保証金までも提供していることが開示されており、極めて苦しい状況に追い込まれていることが見て取れます。

このとき、ゼットンは独自の道を歩み始めます。運転資金を確保するため、酒販大手カクヤスの親会社であるSKYグループホールディングスの投資ファンドやキーコーヒーを割当先とする第三者割当増資を2020年11月に実施しました。これにより、DDホールディングスの持ち株比率は41.92%から37.47%に低下。支配力を失います。さらに稲本氏は2021年2月にDDホールディングスの役員を辞任しました。

アダストリアの店舗開発力で海外進出なるか

アダストリアの「株式会社ゼットン株式(証券コード 3057)に対する公開買付けの開始決定に関するお知らせ」には、ゼットンがDDホールディングスから総額6億円の借り入れをしており、コロナ禍でも厳しい返済計画を求められるなど、両社の関係が悪化している様子が克明に描かれています。DDホールディングスは、子会社エスエルディーに対して第三者割当増資による8億円の資金支援をしていることからも、ゼットンに対決姿勢を見せているのは明らかです。アダストリアのTOBが成立した後もDDホールディングスは株式を保有するものと見られ、2社の関係は今後も注目すべきポイントです。

アダストリアは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けましたが、素早く業績を立て直すことができました。2021年2月期の売上高は前期比17.3%減の1,838億7,000万円、6億9,300万円の純損失(前年同期は63億6,300万円の純利益)を計上しました。しかし、2022年2月期は売上高が前期比19.1%増の2,190億円、純利益を38億円と予想しています。

アダストリアはアパレルショップの展開で成長してきましたが、次の成長戦略を進めています。その一つが空間プロデュースを行う新事業「アダストリア・ライフ・クリエイション」です。すでに日鉄興和不動産の学生マンションの空間プロデュースを行っています。このBtoB事業にゼットンのレストラン、カフェ、バー、結婚式場、バーベキュー場などの運営ノウハウは強力な武器になります。

また、上海や台湾を中心としたアジアへの進出が目覚ましく、ゼットンは海外への出店も視野に入ります。

コロナは外食の常識を破壊し、飲食業界のビジネスモデルを覆しました。ゼットンが異業種の会社に買収され、新たなステージを歩む姿はコロナ時代に相応しいと言えます。

取材・文/不破 聡

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