「パナソニック」の名前を聞いて、みなさんはどういうイメージをお持ちになりますか?
多くの方は、便利な家電製品を思い浮かべるのではないでしょうか。
中には、サッカーやバレーボール、アメリカンフットボールなど、パナソニックのスポーツチームを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
そんなパナソニックですが、現在、スポーツビジネスを拡大するべく、事業を推進しています。
果たしてその理由とは、何でしょうか?
日本のスポーツ産業は2025年に約15兆円へ
コロナ禍ではありますが、北京オリンピックを控え、スポーツビジネスは堅調な発展を遂げています。
2017年にスポーツ庁から発表された目標で、日本のスポーツ産業は2025年に、約15兆円へと市場拡大すると予測されています。
パナソニックはそんな市場拡大するスポーツ産業で、事業の拡大を図っているのです。
同社スポーツチームを運営するスポーツマネージメント推進室では、2029年度の年商を150億円、周辺を含めると300億円の事業目標を掲げています。
パナソニックのスポーツビジネス推進部の事業はこの3本柱
300億円への事業目標に対して、スポーツビジネス推進部は、以下を3本柱としています。
1.リカーリングビジネス
2.プロスポーツ アリーナ・スタジアムへのアプローチ
3.アマチュア・学生スポーツのLED化推進
リカーリングビジネス
リカーリングビジネスとは、スポーツを通じて街のにぎわいに貢献することが主体です。
従来、スポーツチームは〝強ければいい、勝てばいい〟という考えの中、コアなファンを中心にビジネスを展開する傾向にありました。
しかし、パナソニックはこれからのスポーツビジネスを考えるにあたり、ファンだけではなく、ファンではない人も楽しんでもらうことが大切だとします。
その実現には、〝ファン・エンゲージメント(つながり)〟を強める必要があります。これが、普段の生活との違いを生み、その非日常性がスポーツの魅力を引き上げてくれるのです。
アリーナやスタジアム運営の省オペや、カメラAIによるデータ解析、デジタルマーケティングなど、様々な形でパナソニックは運営会社との関わりを深め、将来を担うサービスコンテンツ型への変革を協調しくことを目標にしています。
プロスポーツ アリーナ・スタジアムへのアプローチ
日本のスポーツリーグには、アイスホッケー、アメリカンフットボール、サッカー、ソフトボール、卓球、バスケットボール、バドミントン、バレーボール、ハンドボール、フットサル、野球、ラグビーなどがあります。
2019年10月末の資料では、日本でプロスポーツが利用するスタジアム・球技場は52件、アリーナや体育館は37件を数えます。
中でも、パナソニックのスポーツビジネス推進部が注目しているのが、「B.LEAGUE プレミアリーグ構想」です。
このリーグは、各チームの売上高が12億円以上、観客動員数4000人以上、エンタメやVIPルームなどの施設が充実した、チーム運営がコントロール可能なアリーナを保有することを、加入の基準にしています。
そのため、各所でアリーナ構想が起こっています。
照明施設はアリーナのエンタメ部分で重要な役割を果たします。斬新な照明を生み出すべく、パナソニックの技術が活用されようとしています。
そこでパナソニックはアジアでは初めて、照明機器でFIBA認証を取得しました。
FIBAとは、国際バスケットボール連盟のことで、スイスに所在します。213の競技連盟が加盟しており、日本も1936年から加盟しています。こちらは、バスケットボールのルール策定や国際競技会の開催などを行います。
そのFIBAとパナソニックは、バスケットボールの国際大会を行う上で必要なアリーナ照明のFIBA認証Level 1、2を満たしたことにより、照明器具としてアジア初の認証契約を結ぶことになったのです。
認証を受けた製品は、LED投光器です。
今回の事業説明を行った、パナソニック エレクトリックワークス社 スポーツビジネス推進部 宮本勝文部長
FIBA主催の競技大会や国際大会は、FIBA認証Level 1の機器を使う必要があり、今後、アリーナの新設や改修、照明リニューアルで認証製品の導入拡大が期待されます。
アマチュア・学生スポーツのLED化推進
プロスポーツだけではありません。アマチュアや学生スポーツでも照明施設の改革が進んでいるのです。
現在、アマチュアや学生スポーツ施設へのLED照明導入が進んでいます。
従来多かったHIDランプの生産停止などもあり、解決策として高校・大学スポーツクラブやアマチュアのスポーツ環境に最適なLED照明を、パナソニックは提案。今後は、大学などに直接、スポーツビジネス推進部がアプローチしていくこととなります。
ちなみに、日本の大学数は750校にもなるそう。すべての大学にスポーツ施設があるわけではないですが、東名阪の大学のスポーツ施設を中心にLED化が期待されます。
LED化はまた、光害対策へのアプローチでもあります。例えば、LED投光器「アウルビーム」を活用すると、HID投光器に比較して約62%の節電を実現しながら、上方向への光漏れを大幅に抑制。グラウンド周辺の民家や農地などへの光漏れを低減して、良好な照明環境を実現します。
また、直接器具を見た時のグレア(まぶしさ)も低減します。
各地でパナソニックの照明器具が活躍
では実際に、パナソニックの照明が活躍するスポーツ施設を見ていきましょう。
まずは、青森県にある、「FLAT HACHINOHE」をご紹介します。
青森県・八戸駅から西へ約200m。駅前にそびえ立つ黒塗りの美しいアリーナが「FLAT HACHINOHE」です。
2020年4月に開業。建築面積は約5150平方メートルで、アイスリンク利用時は3500人規模。フロアチェンジしてバスケットボールに利用すると、5000人規模を収容できます。
導入された照明は、アスリートファーストは当然のこととして、観客も楽しめるように、観客席からのまぶしさや見やすさ、演出効果などに配慮しました。
また、天王洲で2020年に行われたイベントでは、太鼓の音をクラウド光へ変換するソフトを導入。
リアルとVRの両方で演出が可能になりました。
さらに、照明の光に動きや明暗、色などの変化を与えて、人の心理や行動に働きかける「アフォーダンス・ライティング」の実験も進んでいます。
人の心理に訴えることで、照明により「回遊」行動を促したり、「滞留」させたりと、多彩な演出効果が実証されつつあります。
パナソニックのスポーツビジネス推進部が目指す未来
パナソニックのスポーツビジネス推進部は、2021年度の売上高を70億円に、2025年度には約90億円にする目標を掲げます。それだけ、最新の照明器具が活躍する機会が増えるということになります。
コロナ禍が収束し、再び人々がスポーツを満喫できる将来がやってくるならば、パナソニックの照明施設が、スポーツをする人や観戦する人を、もっともっと楽しませてくれるはずです。
そんな〝明るい未来〟に期待したいですね。
取材・文/中馬幹弘