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コロナ禍でのコンビニ大手3社の業績を比較してわかったセブンイレブンが強い理由

2022.01.23

国内のコンビニ業界は、頭打ちが鮮明なスーパーマーケットや低迷する百貨店と異なり、市場が伸び続ける有望な成長産業の一つでした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の出来事により、コンビニ大手7社の売上高が統計を取り始めた2005年以来初めて前年を割り込みました。2020年の売上高は前年比4.5%減となる10兆6,608億円。緊急事態宣言発令による外出制限やリモートワークの推進、外国人観光客が減少した影響を受けました。客数は前年比8.9%も減少しています。

■国内コンビニ全店売上高と客数(単位:百万円、人)

日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計データ」より筆者作成
※売上高は左軸、客数は右軸

全国スーパーマーケット協会の調査によると、2020年のスーパーマーケット全店の売上高は前年比6.3%増加しました。経済産業省の調査ではドラッグストア全店の売上高も前年比6.6%増となっています。巣ごもり需要を背景に、コンビニの客が価格の安いスーパーマーケットやドラッグストアに奪われた可能性が高いです。

セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート3社も2021年2月期は売上高の減少に見舞われました。しかし、苦境の中でも王者セブンイレブンの強さが目立ちます。セブンイレブンは他社と何が違うのでしょうか?この記事は決算資料をもとにそれを読み解く内容です。

他社を圧倒する驚異の営業利益率25%

2021年2月期のセブンイレブン国内コンビニ事業の売上高に当たる営業収益は前年同期比5.2%減の9,208億円。同じくファミリーマートが9.3%減の3,746億円、ローソンが9.2%減の3,548億円となりました。ファミリーマート、ローソンが売上高を10%近く落とす中、セブンイレブンが5%以下の水準に抑えています。

セブンイレブンの売上高はファミリーマート、ローソンの2.5倍上回っていますが、コロナという不測の事態に見舞われても、その減少幅を他社よりも抑えたことになります。

■コンビニ3社売上高推移(単位:百万円)

※以下資料をもとに筆者作成
セブンイレブン「決算補足資料」
ローソン「決算補足資料」
ファミリーマート「決算参考資料」

売上高が堅調なセブンイレブンですが、この会社が驚異的なのは営業利益率でも他社を圧倒していることです。他社が10%台前半に留まる中、セブンイレブンは25%を優に超えています。

■コンビニ3社営業利益率推移

※以下資料をもとに筆者作成
セブンイレブン「決算補足資料」
ローソン「決算補足資料」
ファミリーマート「決算参考資料」

2021年2月期の営業利益率はローソンが4.1ポイント、ファミリーマートが1.8ポイント落としましたが、セブンイレブンは1ポイントの減少に留めました。

セブンイレブンは他社よりも店舗数が多く、スケールメリット(規模を拡大することで生産性を上げられること)が働いて有利になっていると思うかもしれません。確かにセブンイレブンの店舗数は2021年3月末の段階で21,085、ファミリーマートが16,646、ローソンが13,893で、店舗数は他社を大きく上回っています。スケールメリットが働きやすい側面もありますが、セブンイレブンの強さはコンビニ1店舗が1日に稼ぐ日商によく表れています。

■コンビニ3社日商の推移(単位:千円)

※以下資料をもとに筆者作成
セブンイレブン「決算補足資料」
ローソン「決算補足資料」
ファミリーマート「決算参考資料」

セブンイレブンの平均日商は652,000円。ファミリーマートが522,000円、ローソンが518,000円です。セブンイレブンは他ブランドと比較して20%以上多く稼いでいるのです。店舗数が多く、日商も多い。これこそがセブンイレブンの強さの根幹です。

コンビニは基本的にフランチャイズ加盟によって店舗を拡大していますが、3社ともに1店舗の利益に応じたロイヤリティを徴収しています。店舗が稼げるようになればそれだけ本部も儲けられる仕組みです。

そして各社ともに力を入れているのが、弁当やおにぎりなどの食品を中心とした自社商品の開発です。コンビニ本部はメーカーとしての側面もあり、本部は商品企画から原材料の調達、工場での製造、物流、販売サポートまでを行っています。そして販売データを吸い上げて次の商品開発に活かしています。

すなわちコンビニ本部は顧客や店舗オーナーに支持される商品を開発し、改良を重ね続けなければなりません。セブンイレブンは顧客に喜ばれる商品を作り、陳列していることになります。

IT企業化するセブンイレブン

セブンイレブンが他社と比較して明らかに異なる点があります。土地建物や機械、システム開発への投資に対するスタンスです。

企業は事業活動でキャッシュを獲得し、それを設備に投資して事業を拡大することが使命です。事業活動で得るキャッシュのことを営業キャッシュフローと呼びます。営業キャッシュフローをどれだけ設備投資に回しているかを見るのが「営業キャッシュフロー対設備投資比率」です。ここではキャッシュフロー計算書に記載されている、土地や建物、機械を取得する「有形固定資産の取得による支出」とシステム開発に資金を投じる「無形固定資産の取得による支出」から「固定資産の売却による収入」を引いた金額を設備投資にかけた金額と仮定し、その金額が営業キャッシュフローに占める割合を比較します。

なお、ファミリーマートは2020年11月に非上場化し、2021年2月期はキャッシュフロー計算書を開示していません。

■コンビニ営業キャッシュフロー対設備投資比率の推移

※以下資料をもとに筆者作成
セブンイレブン「決算補足資料」
ローソン「決算補足資料」
ファミリーマート「決算参考資料」

セブンイレブンは常に50%を上回る水準で推移をしています。特にシステム開発にあたる無形資産の取得に対する支出割合が他社と比較して多く、2021年2月期は9.6%でした。同時期のローソンは3.7%です。セブンイレブンはデータを活用していることで知られています。数字にもそれがよく表れています。

コロナ禍でセブンイレブンが売上減少を抑えた主要因の一つが、このデータです。セブンイレブンは新型コロナウイルス感染拡大以降、調理素材としての野菜需要が高まったことをいち早くつかみ、2020年10月から野菜販売テストを開始しました。2021年8月から、売場に厳選した生産者による加工されていない野菜「顔が見える野菜」を神奈川県、埼玉県を中心に1,700店舗に導入しています。

北海道では世帯人数が多いことや価格志向が強い商圏特性を背景として、ポテトサラダやごぼうサラダの大容量パックを販売。このカテゴリの売上前年比率を110%に近い水準まで押し上げました。

現在は郊外型店舗と都市型店舗で消費者の需要が異なることに注目し、大規模なレイアウト変更に動いています。このレイアウトの郊外型導入店は未導入店と比較して2019年比18,700円売上が上回り、都市型は14,700円の上積みとなりました。データ活用と実行力には目を見張るものがあります。

また、専用工場比率が高いのもセブンイレブンの強みです。

セブンイレブンは2017年9月に国内の製造工場数が181拠点で、そのうち167拠点がセブンイレブン専用工場だと発表しています。専用工場比率が92.2%と高く、企画した商品を素早く全国の店舗に配送することができます。セブンイレブン専用の原材料やレシピで製造できるため、開発できる商品の幅も広いのが特徴です。また、開発した商品が全国どこでも同じ品質で食べられます。

セブンイレブンは、消費者の行動の変化に合わせて最適な商品を提供するという当たり前のことが徹底されています。それこそがこの会社の強みとなっています。

取材・文/不破 聡

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