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期待していた優秀な社員が急に退職する「びっくり退職」を減らすヒント

2022.01.20

社内には必ず高評価の優秀な社員がいるものだ。素晴らしい業績を挙げ、会社に大きく貢献してくれる存在として、将来的にも期待が寄せられる存在だ。しかし彼らが知らない間に退職を考えており、あるとき、急に辞職の申し出を受けることもあるという。

経営側や人事担当者にとってはびっくりするような「びっくり退職」。それを防ぐ方法とは?

上司からの評価とワークメンタリティとの関係性に関する調査結果

「びっくり退職」とは、上司からの評価が高い社員が前兆もなく退職することを指す。

世間では、最近、このびっくり退職が増えているといわれる。特にニューノーマル時代に入り、テレワークの導入により、社員の心境の変化に気づくことが以前よりもむずかしくなっている状況もその一因ではないかという。

こうした状況を受け、リクルートマネジメントソリューションズが上司評価と社員のワークメンタリティの差に着目し、退職が起こる要因を明らかにすることを目的に調査を行った。

ワークメンタリティとは社員が仕事に向かう心理状態を指し、この調査では良好な順に「充実、懸命、淡々、悶々、窮々」の5段階で表現する。

●ワークメンタリティと上司評価には「ねじれ」が存在

個人一人ひとりの心理状態と上司評価は必ずしも合致しなかった。全体の約45%でワークメンタリティと上司評価には「ねじれ」が存在した。

図表1 ワークメンタリティと上司評価の各象限の割合

「上司評価は高評価だが、ワークメンタリティが不調」のパターンは、26.2%となった。このパターンは、上司が気づかないまま、本人の仕事に向かう心理状態が悪化している可能性が高く、予期せぬ退職が懸念される要注意のパターンであると推察されるという。

図表2 「上司評価は高評価だが、ワークメンタリティが不調」の人が「仕事で思うように成果が上がらない」と回答した割合

この26.2%は、「仕事で思うように成果が上がらない」と回答しており、上司が感じている評価が本人に伝わっていない可能性や、上司からの評価が伝わっていたとしてもメンバー本人が納得できず、必要以上に悩んでしまっている可能性があり、ワークメンタリティの不調につながる一要因と推察されるという。

●2年目以降、ワークメンタリティと上司評価のギャップが拡大

また、勤務年数別にみると、2年目以降、ワークメンタリティと上司評価のギャップが大きくなり、「上司に評価されていても、ワークメンタリティが好調でない人」が一定数存在し続けることや、ワークメンタリティ不調者は、年次を重ねるにつれて会社や組織に対する課題感が高まることも分かった。

この結果を受け、HRアセスメントソリューション統括部アセスメントサービス開発部 INSIDES企画開発グループ エンジニア 宇野 渉氏がいうには、「びっくり退職」を減らすには、社員と上司/会社間でのギャップを双方が認識し、日々のコミュニケーションによりギャップを埋めていくことが必要だという。

上司も会社もメンバーと対話することを重視する必要があるという。会社としては、例えば、対話の機会として1on1を導入・制度化し、さらに1on1ツールやコンディションサーベイツールなど、1on1を支援する施策も併せて活用することで上司が円滑に1on1を進められるようになるという。

対話の機会「1on1」の実践方法

びっくり退職を減らすのに重要なのは、対話の機会を頻度高く設けること。具体的にはどのように行えばいいのだろうか。実際に実施している企業の例と共に、その手法を、同社のHRD サービス開発部 パーソナルディベロップメントグループ 星野翔次氏に解説してもらった。

【取材協力】

星野 翔次氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRD サービス開発部 パーソナルディベロップメントグループ
2013年、株式会社リクルートキャリア(現リクルート)入社。管理職として、部下がパフォーマンスを最大限発揮できるコミュニケーションを追求。その取り組みが評価され、数々の表彰を受ける。2019年より現職。現在は、コーチングサービスを提供する部門にて、1on1ミーティングやエグゼクティブコーチングの導入支援などに携わっている。
国家資格キャリアコンサルタント、米国CTI認定資格プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)。
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/talent/0000000159/

「1on1は、『上司と部下が定期的に行う1対1の対話によるマネジメント手法』を指します。頻度は1on1の目的によって異なりますが、月に1~2回、時間は、1回あたり、30分で実施する企業様が多いです。業務時間内で実施することが原則です。

1on1のルールは『部下のための時間である』ということです。間違ってはいけないことは、上司が進捗を確認するといった『上司のための時間ではない』ということです。話す内容は『部下が話したいテーマ』がベースであり、4つの領域に分類されます」

(リクルートマネジメントソリューションズ提供)

「上記の通り、プライベートな話も出ますので、個室で話されることが一般的です最近では、リモートワーク環境下の中でオンラインでの実施も増えています。自宅からオンラインで、1on1を実施することにより、会社よりも本音を言いやすくなったという部下の方の声も聞きます」

失敗しないための「1on1」実施のポイント

1on1は、一歩間違えば失敗することもある。失敗を回避するにはどうすればいいか。実施のポイントを星野氏に挙げてもらった。

1.導入の目的を整理し、言語化する

「制度化の際に、1on1の目的をしっかりと言語化し、組織に浸透させることが重要です。社員には限られた時間を割いてもらうため、この目的に納得感がなければ、現場での不平や不満につながりかねません。例えば、離職を防止したい、という目的であれば、現在の離職者の状況やその原因として考えられること、離職が起こることで事業としてはどんな不具合がおこるのか、対策として1on1がどのように効果を発揮するのか、という点について1on1を実施することになる上司の立場に立って説明していくことが大切です」

2.管理職のスキルセットをする

「1on1を導入しても、『1on1の場で、何のテーマをどのように対話すればよいか分からない』という声をよく耳にします。上司は、初めは1on1のプロフェッショナルではありません。ですので、慣れていない中で対話に困り、メンバーが求めていない、業務上の進捗管理に終始してしまうというケースが多々見られます。

こうならないためにも、『1on1とは何で、どのような関わり方をするのか』といった、対話スキルを身に付ける機会を設けることを強くおすすめします」

3.効果を可視化する

「1on1を導入して3~6か月経過すると、上司から『自身の1on1は、部下のためになっているのだろうか?』という疑問の声が挙がり始めます。上司としては、自身の1on1が部下にとって有用か不安を抱くのです。そこで、コンディションサーベイやアンケートを活用して、1on1の効果を可視化し、上司に共有することが必要になってきます」

1on1ツール・コンディションサーベイとは?

1on1を実施するに当たって、1on1ツールやコンディションサーベイを活用するのがいいというが、これらはどのようなものか?

同社のアセスメントサービス開発部 マネジャー 荒金泰史氏に解説してもらった。

【取材協力】

荒金 泰史氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ アセスメントサービス開発部 マネジャー
入社以来、一貫して人材アセスメント事業に従事。顧客の人事課題に対し、データ/ソフトの両面からソリューションを提供。新たな人事アセスメントの開発業務と、実証研究にも関わる。現場マネジャーの対話力を向上させる HR Technology サービス「INSIDES」(2018年度グッドデザイン賞受賞、HR アワード 2019プロフェッショナル部門最優秀賞)の開発責任者を務める。
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/talent/0000000154/

「1on1ツールとは、上司が部下と1on1を行うにあたり、事前にどのようなテーマ・話題で話せばよいかのヒントを提供し、上司の1on1実行を支援するツールです。コンディションサーベイとは、部下にオンライン上でアンケートを実施し、コンディションを可視化するものです。この1on1支援ツールやコンディションサーベイといったツールは、その結果から1on1の場で、何を話せばメンバーのためになるかを考える有力な材料となります。

例えば『仕事はできているのだけども、自分への期待が分からず、モチベーションが湧いていない』という部下と『仕事には前向きなのだけども、自分ができないことに自責的になって苦しんでいる』という部下とでは、上司が1on1で話すべき内容も大きく違います。

日々の忙しさ中では、なかなか本人でさえも自分のコンディションについて立ち止まって考えることができないこともあります。サーベイを媒介することで、現状に目を向け、1on1を通じて上司と対話をすることで、より不安や不満が解消され、一層今の仕事に打ち込むことができるようになってくるのではないでしょうか」

直属の上司に相談したくない部下への対応はどうする?

ところで、高評価の社員の中には、直属の上司に相談しづらい、もしくは上司が苦手・嫌いで相談したくないというケースもあるだろう。その場合、どのような解決策があるだろうか。荒金氏に聞いた。

「こういったケースは実際には多くありますが、離職防止といった観点からは、上司の影響は非常に大きいため、まずは直属の上司との関係性を改善させることを考えていきたいです。すぐには心を開いてくれなくても、上司が話しやすい空気を作り対話を促し続けることで、関係性を改善していく、ということを目指したいです。どうしても相性が悪いケースは異動による配置転換も検討してもよいかもしれません。

同時に、上司以外とのコミュニケーションでも一定の効果はあります。過去上司だった方、仲の良い同僚などを頼りにするのもよいでしょう。私たちがお手伝いしている企業でも、人事の方がフラットに話を聞く、という制度を設けていらっしゃるケースもあります。特に若年層の方向けには、1年や半年に1回などの頻度で人事が面談を行い、なんでも話してよい、という場づくりのもとで、職場に対する不満や疑問点を吐き出してもらう、という取り組みが、功を奏していることが多いです」

退職の意図が「自分の可能性を外の世界で活かしたい」場合は?

「びっくり退職」は、高評価の人が起こす退職だ。しかし、高評価だからこそ自分の可能性をもっと広い世界で生かしたい、上に行きたいという人もいるのではないだろうか。会社としては「びっくり」ではあるが、当人としては未来をかけての転職であることもある。

荒金氏はこうした社員に対する考え方を聞いた。

「ご指摘の通り、転職というのは個人の選択肢の一つであり、転職=悪いこと、ということは一切ありません。一方で、組織の側から見たときには『予兆もなく、転職されてしまった』ということについては、当然、改善の余地があるでしょう。もちろん社員本人の望む環境を組織が用意できないケースもありますので、すべての離職を防ぐことはできませんが、できれば優秀な人材が長く自社で活躍してほしい、という思いは多くの方にあるはずです。もし本人の理想のキャリア像や悩みを組織がつかんでいれば、本人の望みに近い対応を組織ができたかもしれません。こういったコミュニケーションがあったうえでの離職であれば、組織としても仕方ないと思い、本人の新たなチャレンジを応援する気持ちも増すかもしれませんし、本人にとっても『色々と親身になって考えてくれた』と去る企業に対しても愛着をもったうえで転職をされるのかもしれません。

特に、原因が『すれ違い』や『コミュニケーション』の問題からの離職であれば、対話を重ねることで、両者が満足する結論を導き出すこともできたのではないかと考えると、組織だけではなく、本人にとっても悔やまれることです。当社の調査で出てきた『高評価なのに、本人にはそのことが良く伝わっていない』という状況は、こうしたコミュニケーション面の問題が背景にあるように思えます。そうなのだとしたら、このような不幸なびっくり離職はできるかぎり、避けていくほうが良いのではないかと考えています」

「びっくり退職」は、組織にとって「びっくり」という精神面のショックだけでなく、利益面に関わる問題である。経営・人事側はもちろんのこと、上司の立場としては、ぜひ積極的に普段から部下との「対話」を心がけることが重要といえそうだ。

【出典】
リクルートマネジメントソリューションズ「上司評価とワークメンタリティに関する実態調査」

取材・文/石原亜香利

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