仕事で英語を使うビジネスパーソンにとって、日頃の学習は重要になる。しかし、業務も行いながらの勉強は時間も限られているため、より効率的な学習方法がいい。
そこで今回は、アンケート調査でビジネスパーソンの多くが実際に行っている英語学習方法を踏まえて、ビジネス英語教師に仕事で使う英語の効率的な学習方法を聞いた。
仕事で英語を使うビジネスパーソンの学習方法は?
ビジネス特化型オンライン英会話事業を展開するビズメイツ株式会社が、2021年12月に、仕事で日常的に英語を使用しており、社会人になって英語を学習した経験があるビジネスパーソン111名を対象に「社会人の英単語学習」に関する実態調査を実施した。
その結果、彼らのビジネス英語学習の傾向がわかった。
●優先的に取り組むべきことは「リスニング」「スピーキング」「英単語を覚える」
英語を使って仕事ができるようになるために、英単語学習は「非常に重要」と回答したのは73.9%と、多くを占めた。
そして英語を使って仕事ができるようになるために、特に優先的に取り組んだほうが良いと思うものについては「リスニング」が62.2%、「スピーキング」が46.8%、「英単語を覚える」が29.7%の順になった。
●英単語の効率的な学習方法トップは「自分の仕事でよく使う単語を優先的に覚える」
英単語を効率的に覚えることができた学習方法については「自分の仕事でよく使う単語を優先的に覚える」63.1%、「単語と一緒に使い方も覚える」48.6%、「わからない単語を都度調べる」46.8%の順となった。
●効果的だった学習ツールトップは「英単語学習アプリ」
英単語を効率的に覚えることができた学習ツールについては「英単語学習アプリ」が48.6%、「オリジナル英単語帳」が44.1%、「英会話レッスン」が40.5%の順で多い結果に。
他に自由回答では「ラジオ」や「インターネットの英語のウェブページ」などを利用して効率的に覚えたというエピソードが寄せられた。
効率が良い方法は「仕事に直結する単語を優先的に覚える」こと
ビジネス英語の学習は、どうするのが最も効率的か、多くのビジネスパーソンが悩んでいることだろう。人それぞれ最適なものは異なるかもしれないが、専門家の意見は参考になるはずだ。
アンケート結果では、特に優先的に取り組んだほうが良いと思うものとして「リスニング」「スピーキング」「英単語を覚える」の順となった。これらのうち、どんな方法がおすすめだろうか?
企業でも教鞭をふるうビジネス英語講師の大島さくら子氏に話を聞いた。
【取材協力】
大島さくら子氏
ビジネス英語講師、英語学習書ライター
英語教育事業(株)オフィス・ビー・アイ代表取締役
慶應義塾大学(法学部・政治学専攻)卒、Temple University Japan(教養学部・アジア学専攻)卒、英検1級、TOEICRL&R 990点満点/S&W400点満点。著書多数。多くの企業、団体で英語講師を務める。
https://officebii.com/
「英語学習をする目的が『仕事で必要だから』という場合、忙しいビジネスパーソンは、やはり仕事に直結する単語を優先的に覚えるのが、地道な作業になりがちな単語学習のモチベーションの維持にもなって、効率がいいと思います。
例えば『金融用語』や『介護用語』、『保険用語』など、各業界でよく使う単語や専門用語を網羅したウェブサイトは、探せばたいていあります。それらを活用するのはおすすめです。
そして、単語だけではすぐに忘れてしまうので、アンケート結果にあるように、『文章の中で覚える』、つまり『使い方も一緒に覚える』のが理想です。辞書はもちろん、専門用語辞典にも、例文が載っていれば、文章ごと覚えられるといいですね」
英単語は「出会い」を増やすことがポイント
同アンケート結果では、英単語を効率的に覚えることができた学習ツールとして「英単語学習アプリ」「オリジナル英単語帳」「英会話レッスン」挙がった。これについて、大島氏にアドバイスをもらった。
「単語は『出会い』なので、たくさん出会えば出会うほど増えていきます。理想は、普段、触れ合う英語の中で、無理せず、自然に出会った順に知らず知らずのうちに覚えてしまうこと。でも、日本語の環境ではそれはむずかしいです。通常、意識しないと出会うことはありません。
ですので、必然的に、英単語アプリ、市販の英単語集、オリジナルの英単語帳やカードを使って、出会いを自分で作って、覚えていくことになります。英会話レッスンや英語講座、英語研修で出会った新しい単語や熟語も、テキストにマークをする、あるいは自分の単語帳やカードに転記するなりして、まとめていくといいでしょう」
ツールを使った勉強のコツ
そこで大島氏に、英単語を覚えるツール「英単語学習アプリ」「オリジナル英単語帳」「英会話レッスン」それぞれについて、より有効活用するための日々の勉強のコツを教えてもらった。
1.英単語学習アプリ
「語学学習はとにかく『繰り返し』と『継続』がキーワードになります。やや単調になりがちな単語の習得は、アプリを活用して、ゲーム感覚で使いこなすと楽しくて飽きません。アプリの種類にもよりますが、通常、覚えられなかった単語は、覚えるまで繰り返し出題してくれます。AIの場合、辛抱強く暗記に付き合ってくれるのも大きな利点ですね。
さらに、単語学習に欠かせない発音とアクセントのチェックができるものがいいです。発音記号がきちんと読めても、実際声に出してみると、その音を出せない場合はたくさんあります。
眼だけでなく、耳からも覚えていく。そして、自分で発音をしてそれを録音し、チェックしてくれる機能までついていたら言うことなし。正しい発音とアクセントで覚えることはとても重要です」
2.オリジナル英単語帳
「自分が出会った単語をどんどん記入していくオリジナルの単語帳には、自分が覚えやすい『例文も一緒に書き込む』ことで、さらに記憶が定着していきます。眼で見て、耳で聞いて、声に出してといったように、できる限り五感をフル活用して覚えていくのをおすすめします。ここで侮れないのが『power of writing=書く力』です。書くことで、スペルも一緒に覚えることができ、接頭辞や接尾辞などの意味も知ることができます。それによって単語の組み立てから、ある程度の規則性が頭に入り、知らない単語に出会っても、意味を想像しやすくなります。
続いて、単語と例文を書き終えたら『音読する』ことをおすすめします。もし発音が怪しかったら、必ず発音が確認できる辞書などで調べます。そのひと手間で、間違った発音やアクセントで覚えることを避けられます。間違っているとしゃべっても通じませんからね。また、ノートよりも、名刺大くらいのシャッフルできるカードがいいと思います」
3.英会話レッスン
「英会話レッスンや研修、講座などは、今や対面・オンラインの両方で実施されていますが、テキストに載っていない単語や熟語を講師から学ぶことができるのに加えて、グループレッスンであれば、仲間の話す英語から得られる情報もたくさんあります。会話をしているときにメモをするのはむずかしいですが、聞きっぱなしではどうしても忘れてしまうので、できるだけメモをして、その直後に復習します。一番効果的な復習のタイミングは直後です。無理であればその日のうちに、単語だけでなく、レッスンで学んだこと全体を復習しましょう。
なお、よく言われていることですが、暗記ものは『夜寝る前にさらっとやる』のが最も効果的です。寝ている間に、脳が勝手に情報を整理してくれるようです。そして翌朝、もう一度そのメモを見直せば、かなり定着するはずです」
その他の学習ツールの活用方法
アンケート結果では、その他の学習ツールとしてラジオやインターネットの英語のウェブページなどが挙がっていた。これらは学習に役立つだろうか?
「今は、独学用のさまざまな学習ツールが巷にあふれています。王道のラジオやテレビの語学番組以外に、先述の英語学習アプリに加え、Podcast、YouTube、そして海外ドラマや映画などを、多くの場合無料で簡単に視聴できるようになっています。また、ネット上では、英語の専門家たちが、英文法やスラングの紹介、学習方法などを、惜しげもなく紹介しています。これらを使わない手はありません。
ただし、Podcast、YouTube、ネットの英語関連のサイトは、その情報を発信している人が信頼できる人かどうかを最初に確認しましょう。お気に入りのチャンネルが見つかれば、それを継続して視聴していきます。多くの学びがあるはずです」
●海外ドラマ・映画の学習効果の上がる見方
一般的には字幕なしの海外ドラマや映画でもリスニング学習ができるといわれる。学習効果を上げるにはどんな見方がいいだろうか?
「海外ドラマや映画は、英語の字幕、日本語の字幕の両方が出るものがいいでしょう。まず、日本語の字幕を読みながら単純に娯楽として楽しみます。次に、英語の字幕を出してもう一度丁寧に観ます。最後に、字幕なしでトライ!そして、どうしてもわからないときは、再度、英語か日本語で確認をします。これを繰り返すのは時間がかかりますが、かなりリスニング力が上がっていきます。さらに、英語の字幕をナチュラルなスピードについて読むことで、英文速読力までついていきます」
仕事で使うために英語を勉強しているビジネスパーソンは、大いにヒントになるはずだ。ぜひ自分の学習に取り入れてみよう。
取材・文/石原亜香利