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Lytenが開発した宇宙用リチウム硫黄電池が画期的である理由

2022.01.26

リチウム硫黄電池をご存知だろうか。1980年代に発明されたリチウムイオン電池の代替のような位置付けの電池。今現在、まだ市場に投入されているというよりは、研究開発の段階だ。以前からこの電池の開発は難しいと言われていているが、現在のリチウムイオン電池よりも多くのメリットがあるという。このリチウム硫黄電池だが、何よりも宇宙用が開発された、そんなニュースが飛び込んできた。開発したのは米国のLytenという企業。ではLytenという企業がどのような企業なのか、リチウム硫黄電池とはどのような電池なのか、今回は、そのような話題について触れたいと思う。

リチウム硫黄電池とは?

リチウム硫黄電池とは、リチウムイオン電池の代替的な位置付けの電池。まず、リチウムイオン電池から話をスタートさせたい。皆さんは、リチウムイオン電池であれば、ご存知の方も多いのではないだろうか。リチウムイオン電池は、いまスマートフォンはもちろんのこと、ウェアラブルデバイス、ハンディー掃除機など小型でコンパクト、そして軽量なモノで電気の力で駆動する機器には当たり前のように活用されている。別の言い方をすると、スマートフォンがこれほど小さくて薄くて高性能になったのはリチウムイオン電池のおかげなのだ。2019年のノーベル化学賞を受賞した旭化成の名誉フェローの吉野彰氏の受賞理由もリチウムイオン電池の開発。つまり、リチウムイオン電池は、現在の生活において切っても切れないのだ。

リチウムイオン電池は、正極(+極)にリチウムイオン含有遷移金属酸化物(Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2やLiCoO2やLiMn2O4などCo系、Mn系)が、負極(-極)には、カーボンや炭素系の材料が用いられていることが多い。正極のLiイオンが負極に溜まること、これが電気を充電していることを意味していて、負極のLiイオンが正極に向かって移動すること、これが電気を放電していることを意味しているのだ。この充放電を繰り返すことができる二次電池。

リチウム硫黄電池は、この負極の材料を硫黄に変えた電池。では、なぜ硫黄なのだろうか。硫黄は、このLiイオンの収容能力が高いのだ。そして、硫黄は、自然界に豊富に存在する点とコスト安の点もメリットだ。この負極の違いを除けば、リチウムイオン電池とリチウム硫黄電池は、完全ではないがほぼ類似性があると理解しても大きな間違いはない。

Lytenのリチウム硫黄電池
(出典:Lyten)

今現在の宇宙用の電池は、リチウムイオン電池がメイン!

今現在の宇宙用として活用されている電池は、ほぼリチウムイオン電池といっても過言ではない。ロケット、人工衛星、探査機、ローバー、国際宇宙ステーションISSなどなどさまざまなところで活用されている。その理由の1つとして挙げられるのは、重量エネルギー密度が高いということ。重量エネルギー密度とは、同じ重さの電池を比較したときにどちらが大きな電気を蓄えられるのかと表わす指標で、この値が大きければ大きいほど、小型、軽量化の電池であるといえる。宇宙用電池にとっては重要な指標の一つなのだ。

宇宙用のリチウムイオン電池のトップ企業の一つであるGSユアサテクノロジー(航空機などを含め深海から宇宙までさまざまな産業用リチウムイオン電池も出がけているすごい企業だ)は2020年6月時点で200機以上の宇宙機に自社製の宇宙用リチウムイオン電池を搭載、販売した実績を有している。GSユアサによると、自社製のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度は、168Wh/kgを達成したとある。

(出典:GSユアサテクノロジー)

今後の宇宙用電池は、リチウム硫黄電池になるのか?

今後の宇宙用の電池は、リチウム硫黄電池になるのだろうか。その前にリチウム硫黄電池の開発が難しいと言われる理由を確認してみよう。それは、「ポリサルファイドシャトル」というもの。放電中の単純化された化学変換は16Li + 8S → 8Li2Sというが、実際はこのような単純な化学式ではなくポリサルファイド(Li2S8、Li2S6など)という中間変換が作られ、これによってリチウムと硫黄が失われてしまい、充放電が十分なサイクル数を実施できず電池が故障してしまうというのだ。しかしLytenは、Lyten3DGrapheneというものを開発。「ポリサルファイドシャトル」を軽減することに成功したという。

次に、重量エネルギー密度を確認してみよう。Lytenのリチウム硫黄電池の重量エネルギー密度はどれくらいなのだろうか。Lytenによると、理論上は2,600Wh/kgが可能であり、実際は500Wh/kgを超える重量エネルギー密度を実現できるという。

他にも、宇宙用として必要な信頼性、品質は、ロケットなどの輸送機の振動、音響などに耐える機械環境耐性、宇宙放射線に耐えうる放射線耐性、太陽の日陰に伴う温度環境耐性などを有する必要もあるが、リチウム硫黄電池の開発状況の詳細は不明だ。

Lytenの宇宙用リチウム硫黄電池のイメージ
(出典:Lyten)

いかがだっただろうか。他にもリチウム硫黄電池を手がける企業は、国内外には存在するが宇宙用はまだ少ないようだ。しかし、上記で紹介したGSユアサテクノロジーもリチウム硫黄電池の開発を手がけている。2021年11月15日には、「NEDO航空機用先進システム実用化プロジェクト(軽量蓄電池)の中間目標達成~400 Wh/kg級-リチウム硫黄電池の実証に成功~」と題したプレスリリースを報じている。この開発対象は航空機であるが、次世代航空機に求められる軽量蓄電池を開発するとしている。

GSユアサのリチウム硫黄電池
(出典:GSユアサテクノロジー

そして、Lytenは、米国のDIUや宇宙軍とで、このリチウム硫黄電池の宇宙実証を行う技術実証を実施するという。この技術実証を積み上げていくことによって、近い未来には、宇宙用の2次電池はリチウム硫黄電池になるかもしれない。そうなると、より小型、コンパクトで高性能な宇宙機が数多く登場してくることだろう。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。


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