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会社の違法行為を内部告発した従業員は法的に守られる?

2022.01.21

社内で違法行為が横行していることに気づいた場合、従業員としては見て見ぬふりをせず、それを正すように行動するのが本来のあり方です。

会社の違法行為を内部告発した場合、会社から何らかの不利益な処分を受けてしまう懸念を抱くかもしれません。
しかし、内部告発をした従業員は法律上保護されますので、仮に会社から不利益な処分を受けたとしても、被害回復を図ることができます。

今回は、会社の違法行為を内部告発した労働者を保護する法律上のルールについてまとめました。

1. 会社の不正を告発した労働者を保護する法律

従業員が会社の不正を告発することは、市場における経済活動の公正化や、労働者保護などの観点から推奨されるべきです。

そのため、会社の不正を内部告発した従業員は、労働基準法および公益通報者保護法によって保護されています。

1-1. 労働基準法

従業員は、社内の労働基準法違反に当たる事実について、労働基準監督官へ申告することができます(労働基準法104条1項)。

労働基準法違反の例としては、以下のパターンが挙げられます。

・残業代の未払い
・違法な長時間労働
・解雇予告手当の不払い
・有給休暇の取得拒否
・最低賃金違反
など

会社は、従業員が労働基準監督官への申告を行ったことを理由に、当該従業員に対して不利益な取り扱いをしてはいけません(同条2項)。

解雇はもちろんのこと、降格・出勤停止・減給などの懲戒処分や、配置転換による事実上の「左遷」なども禁止されます。

1-2. 公益通報者保護法

公益通報者保護法では、会社による犯罪行為等について、内部通報を行った従業員に対する保護のルールを定めています。

公益通報者保護制度の通報窓口は、以下のとおりです。

①会社が定めた社内窓口・社外窓口

(例)社内の担当部署、外部の弁護士など

②通報対象事実について規制権限を有する監督官庁

(例)個人情報保護法違反の場合、個人情報保護委員会

参考:個人情報保護委員会における公益通報の受付について|個人情報保護委員会

③犯罪行為等の発生や被害拡大を防止するため、通報が必要と認められる者

(例)報道機関・消費者団体・労働組合など

これらの窓口に公益通報を行った従業員について、会社は通報の事実を理由として、解雇・労働者派遣契約の解除その他の不利益処分を行うことはできません(公益通報者保護法3条、4条、5条1項、2項)。

2. 不正を告発したことを理由に、会社から不利益処分を受けた場合の対抗策

労働基準法・公益通報者保護法の保護規定にもかかわらず、内部告発を理由に会社から不利益処分を受けた場合、従業員は以下の対抗手段をとることができます。

2-1. 不当解雇の場合|従業員としての地位確認請求・賃金全額の請求

正当な内部告発をした事実を理由として、会社が従業員を解雇した場合、解雇は違法・無効となります。

この場合、会社によって仕事場から追い出されたとしても、従業員としての地位は残っており、会社に賃金を請求する権利があります。

解雇によって働くことができなかった期間についても、働けなかったのは会社の責任ですので、賃金全額の請求が可能です(民法536条2項)。

不当解雇に遭った従業員の方は、協議・労働審判・訴訟などを通じて、会社に対して従業員としての地位確認と、賃金全額の支払いを請求しましょう。

なお、会社から退職を前提とした解決金の支払いを提案されるケースもあります。

その場合は、

・在職時の賃金額
・もらえなくなる退職金の見込み額
・勤続年数、会社への貢献度

などを考慮しつつ、会社に残るのがよいのか、それとも会社提案を受け入れて退職するのがよいのかをご判断ください。

2-2. その他の懲戒処分の場合|懲戒処分の無効確認請求・損害賠償請求

解雇以外に、降格・出勤停止・減給などの懲戒処分を受けるケースも想定されます。

正当な内部告発を理由に行われる場合には、これらの懲戒処分についても、解雇と同様に違法・無効となります。

解雇以外の懲戒処分については、当該懲戒処分の無効確認請求と、会社に対する損害賠償請求を併せて行うことが考えられます。

損害賠償については、以下に挙げる損害を一例として、実際に発生した損害額を漏れなく積算したうえで請求しましょう。

・降格、出勤停止、減給によって失われた賃金
・社内外での評判が毀損されたことに伴う逸失利益
・精神的損害(慰謝料)
など

3. まとめ

「リスクを冒してまで、会社の違法行為を内部告発する気にはなれない」

という方も、きっと多いのではないかと思います。

しかし、根拠のある正当な内部告発であれば、仮に会社から不利益な処分を受けたとしても、後から法的な手段により被害を回復できます。

万が一、会社からの処分を受けた際の対応に不安があれば、事前に弁護士会などへ相談することも考えられます。

ご自身の利害が直接関係している場合や、違法行為が横行する職場に不満を抱いている場合には、ぜひ恐れずに内部告発をご検討ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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