近年、デジタル化が加速度を増して進んでいる。またニューノーマルな対応も余儀なくされるいま、ビジネスパーソンの間で「リスキリング」というキーワードが注目されている。
必要なスキルを学び直し、新たな知識や技術を身につけることで自身のアップデートを図るために、多くのビジネスパーソンたちはどんなスキルアップに取り組むべきか。
今回は、30代以上のビジネスパーソンの多くがリスキリングに取り組んでいるスキルの中でも、「デジタルマーケティング」のスキルについて、その必要性や効率的な学び方を紹介する。
リスキングスキルの上位にランクイン「デジタルマーケティング」
近年、既存の人材を再教育する「リスキリング」が世界で進んでいるといわれる。デジタル化でどんどん作業が効率化する一方で、これまで使われていた人手が不要になってきた。しかしデジタル化や自動化に対応できる高度な技術を持った人材は不足している。新たな人材確保もコストの懸念が大きいことから、再教育を図る動きがある。
個人としても、リスキリングに取り組む動きがビジネスパーソンの間で起きている。実際、どんなスキルが注目されているのだろうか?
転職サイト「ビズリーチ」が、2021年10月、会員を対象に「リスキリングに関するアンケート」を実施した結果、54.8%のビジネスパーソンが、すでにリスキリングに取り組んでいると回答した。
「勤め先を通じて取り組んでいる」という回答が14.5%だったのに対し、「個人で取り組んでいる」は45.5%でおよそ3倍、主体的に取り組むビジネスパーソンが多いことが分かった。
また、ビジネスパーソンに、今後新たに身につけたいITスキルを聞いたところ、「データ解析・分析(62.5%)」が最も多く、次いで「デジタルマーケティング(34.6%)」「プロジェクトマネジメント(PM)(31.8%)」という結果となった。
「デジタルマーケティング」スキルの必要性
今回は、アンケート調査結果で上位となったデジタルマーケティングスキルについて探ってみた。
デジタルマーケティングとは、主にインターネット上でのマーケティング活動を指す。検索エンジンやWebサイト、SNS、メール、スマートフォンアプリといったデジタルテクノロジーを活用して行うマーケティングだ。
近年、デジタルマーケティングのスキルは、どのくらい必要性があるのだろうか。
デジタルマーケティングの分野で施策アドバイスやコンサルティングを行う株式会社ウェブサークル 代表取締役の門田俊介氏に話を聞いた。
【取材協力】
門田俊介氏
株式会社ウェブサークル 代表取締役
地元愛媛県でサラリーマンをしながら作ったモバイルサイトが3ヶ月で300万PVに成長させる。それをきっかけにWEB業界へ転向し、以来WEBディレクターとして活躍しながらも上京をきっかけにWEBマーケターへ。上場企業でマーケティングテクニカルディレクターとして顧客の検索順位向上のための施策やアドバイスやコンサルティングを行う。その後独立し2014年株式会社ウェブサークルを設立、代表取締役に就任。現在も同社のコンサルタントとして第一線で活躍。
https://webcircle.co.jp/
「20年前は、企業がウェブサイトを公開していることは最先端といわれておりましたが、昨今ではほとんどの企業がウェブサイトを公開しており、銀行の口座開設でも企業審査のために必ず見られるものになっています。しかも当時は一家に一台パソコンが必要と言われていましたが、昨今では一人一台はインターネットにつながる端末(スマホなど)を持っています。さらにそれは日本国内ではなく全世界で起こっていることです。
つまり、多くの企業や個人がインターネットを経由して全世界の人々につながることができる時代になっています。そのつながる力はテレビなどよりも早く、広いことは多く知られていることかと思います。
デジタルマーケティングのスキルを身につけることは、インターネットの力を効率よく使いこなすことができる能力を身につけることになりますので、企業からすれば情報発信力の向上が見込めるスキルになり、どのような業種や企業でも多く求められているスキルになります。
個人でもデジタルマーケティングのスキルを身につけることで、SNSで多くのフォロワー獲得につながったり、個人の情報発信力の向上が見込めたりするスキルであるため、今後はもっと重要性が高くなるといえます」
デジタルマーケティングのスキルはどんなシーンに活用できる?
デジタルマーケティングのスキルを身につけると今後、有効活用できるようだ。具体的に、どんなシーンに活用できるのだろうか。
「デジタルマーケティングのスキルが活用できるシーンは幅広くありますが、最も効果が見えるのは『情報発信力の向上』ではないでしょうか。企業であれば、自社の製品や行っている活動などを多くの人に知ってもらうことで認知拡大につながり、新規顧客の獲得、企業ブランディングの向上などといったビジネスチャンスを生み出すことができます。
個人であれば、自身のSNSでの情報発信力の向上が見込めますが、それよりもデジタルマーケティングのスキルを保有している個人がまだ少ない現状では、スキルを身につけることで多くの企業から求められる人材になれる点が、最もスキルを身につけた効果を実感できるのではないでしょうか。
先にもお伝えしたように、多くの企業がデジタルマーケティングを行い、企業認知を拡大したいけど、実際にデジタルマーケティングができる人材がまだ育っていない現場を多く見ます。そういった企業からすれば、デジタルマーケティングのスキルを持っている人材は、ぜひとも迎え入れたいと思える人物に見えるのではないかと思います。そういった人は就職や転職活動で大きな武器としてスキルが活躍してくれるのではないでしょうか」
デジタルマーケティングの効率的な学習法
デジタルマーケティングのスキルは、どのようにして学習するのが効率的だろうか。門田氏は次のように話す。
「私、個人の考えでいうと、実践に勝る勉強はないと思います。本を読む、スクールに通うだけでは、知識こそ手に入りますが『自身のスキル』になることはないと考えています。ですので、まずやってみる。やってから分からないことを知る。分からないことを解決するために必要な本を読む。スクールなどで勉強する。あとはこの繰り返しをしていけば自ずと必要なスキルや知識が、自身の身についてくるのではないかと思います。
ただ、このように話をすると『知識がないから何をしたらいいのか分からない』という方がいます。そんな方は、まずSNSやブログ記事の作成をされると良いでしょう。SNSならまずフォロワー数1,000人を目指しましょう。次は1万人、その次は5万人と拡大をしてみてください。ブログなどの記事サイトで挑戦するなら、サイトの閲覧数(PV数)1万回を目指しましょう。その次は5万回、10万回と拡大を目指してください。具体的な数値目標を設定し、挑戦することで、本やスクールでは学べない実践力が身につきます」
仕事に役立つデジタルマーケティングスキル習得のポイント
デジタルマーケティングのスキルの中でも、どの分野をポイントにおいて取得すると仕事に役立つだろうか。
「仕事に役立つ面で考えると、直近では、リスティング広告やSNS広告などの広告運用のスキルが求められているスキルではないかと思います。やはりどの企業もデジタルマーケティングを行うとなったら、まず広告運用を行いますから、広告運用スキルがあれば、費用対効果の高いマーケティングが行えるので、多くの場面で役に立つのではないかと思います。
また、スキルの高めるにしても、ウェブ広告は取りかかりやすく、最低コストも数千円でやってみることができます。個人の独学でやるのにコストを抑えてできるのは非常にやりやすいのではないでしょうか。特に広告出稿の方法やアカウントの作り方などは実践してみないと分からないことなので、自分でサイトを構築して、まずは少額で集客するための広告配信をやってみる、慣れてくれば集客からの収益を得る仕組みを作ることも可能ですので、まずはトライしてみてください」
デジタルマーケティングのスキルを身につけることで、情報発信力のある人財となることができるようだ。ぜひリスキリングとして、個人のスキルアップデートとして実践から取り組んでみてはいかがだろうか。
取材・文/石原亜香利