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「苦手な上司」によくある5つの典型パターンと対処法

2022.01.14

日頃から、こんな上司に不満を抱えていないだろうか?「相手によって態度を変える」「仕事を部下に押し付ける」「言い訳が多い」「指示があいまい」「パワハラ・威圧的」。これらの上司はどんなタイプで、部下としてどんな対応をするべきだろうか?

今回は、ビジネス・キャリア・マネジメント・リーダー論などを専門とし、リーダーシップや上司と部下の関係性などの研究を行う立命館大学 スポーツ健康科学部の山浦一保教授に、これらの苦手な上司の対応術を解説してもらった。

よくある苦手な上司5選!その心理とは?

一般的に、部下の立場として、上司に対して次のような不満・嫌悪感を抱くことが多い。それぞれ、それを行う上司の心理を確認しておこう。

【取材協力】

山浦一保氏
立命館大学スポーツ健康科学部教授。専門は、産業・組織心理学、社会心理学。企業やスポーツチームにおける「リーダーシップ」と「人間関係構築」に関する心理学研究に従事。
https://research-db.ritsumei.ac.jp/rithp/k03/resid/S000760

1.相手によって態度を変える

「相手によって態度を変えるのには、いくつかの理由が考えられます」

●相手や状況に合わせて臨機応変に対応している

「上司自身は、相手や状況に合わせて臨機応変に対応しているだけと思っているかもしれません。それは、上司のマネジメント方針、部下育成の方針が共有されていないからでしょう。

●パワー欲求が強い

「部下である自分にだけ理不尽な対応をしてくる上司であるならば、その部下が有能で、上司にとって妬みの対象となっている可能性があります。上司はこの部下のことを自分の評価を脅かす存在だと、心のどこかで感じ取っているのでしょう。このような気持ちを抱く上司は、パワー欲求が強い傾向にあります。自分が誰よりも優れていて、自分の思うとおりにしたい、支配したい、などと欲張ってしまう心理が作動しやすくなっています。ちなみに、パワー欲求の強い上司は、部下がおべっかを言うなどして迎合すると好意をもち、仕事の評価を高めるなど、好き嫌いの感情を評価軸に持ち合わせてもいます」

●八方美人すぎる

「八方美人すぎる上司も、一貫性がない対応をしているように見られやすいかもしれません。日和見的な言動をとりがちな上司の場合、自尊感情が低い、マネジメント力に自信がないという側面が潜在しています。そして、職場の輪を重んじると同時に、自分の評価が傷つくことを恐れる自己保身の心理も働いています。このような上司の場合には、その場しのぎの対応をしてしまいがちなのです」

2. 部下に仕事を押し付ける

●仕事の進捗や成果を見栄えよく取りつくろおうとしている

「上司の中には、仕事の進捗や成果を見栄えよく、表面だけをとりあえず取りつくろおうとする人がいます。もともとこのような仕事のやり方をする上司は、精神的なプレッシャーがかかると、さらに拍車がかかって、部下に体よく仕事を押し付ける傾向にあるでしょう」

●自分が楽をしたい

「単に上司自身が楽をするために、なんでも部下に仕事を振ってしまうケースもあります。

いずれにしても、上司の利己的な心理によります。自己中心的な視点が優勢になると、部下自身や部下が置かれている状況を知ろうとする問いかけや配慮の気持ちを忘れ、理解が不十分なまま一方的に指示してしまうのです」

●労い(ねぎらい)の言葉をかけていない

「部下が『押し付けられた』と感じてしまうのは、仕事を終えた後に上司から労いの言葉がかけられていないのではないでしょうか。上司が必要なひと言を惜しんでしまっている残念な例です。こうした日々のやりとりが、一般的にコミュニケーションの不足といわれる所以でしょう」

3.言い訳が多い

「言い訳が多い上司は、自己防衛的なタイプです。人は誰でも、『成功は自分(上司自身)のおかげ、失敗は部下のせい』という心理を働かせる“くせ”を持っています。心理学では、セルフ・サービングと言います。上司という地位・立場が、威厳をもっておかなければならない、上司としての面子を失ってはいけないなどの思いがよぎると、この“くせ”を発動させやすくなります。

このような上司は、言い訳をすることで、自分は間違っていないと自分の正当性を主張し、決して能力が低いわけではない、というアピールをしているのです。このタイプの上司は、自尊感情が高く、失敗を回避しようとする動機づけが強い傾向にあります。おそらくは、仕事上、新しいことを生み出すことは苦手であり、生みの苦しみの厄介な部分は部下に押しつけ、手柄だけをうまく自分のところに引き寄せることもあるのではないでしょうか」

4.指示が曖昧

「この原因は、いくつか考えられます」

●言葉を省略してしまう

「曖昧さとは、相手にとっての理解しにくさのことです。上司がよほど忙しい、あるいは上司の頭の回転が速すぎて言葉を省略してしまうときも、部下にとっての指示の曖昧さ、分かりにくさが生じることになります」

●定型的な業務:仕事を理解していない

「定型的な業務で、上司の指示が曖昧ということは、その上司が仕事全体の内容を把握していない、理解していない、整理していない、ということでしょう」

●新規・創造的な事業や業務:確固たる基軸や信念が不足

「新規・創造的な事業や業務であれば、上司自身も最初は試行錯誤の期間があるかもしれません。ただし、一定期間を過ぎても指示が曖昧なままで、部下に相談し協働することもなく、業務が滞ったり成果が出せなかったりする状態にあるとしたら、それは上司のマネジメント力を問わなければならなくなります。この事態を生じさせる原因の一つは、上司に確固たる基軸や信念が不足しているという点です。もう一つは、上司があちらこちらの意見を聴きすぎて、対人志向的な部分が強すぎるあまり判断が鈍っていることも考えられます」

5.パワハラ、威圧的

「パワハラの対象となっている部下を、上司は自分の感情をぶつける相手、八つ当たりの対象者としてみている可能性があります。その酷さによっては、部下を生身の人間としてではなく、人形としてみる傾向を強めている可能性もあります。

このような上司は、感情の起伏が激しく、それゆえに、実は自分自身でもコントロールすることが難しい、自己制御能力が低いと思っているのではないでしょうか」

苦手な上司との付き合い方

それぞれの上司の傾向を知ったところで、このような上司を持った部下は、どのように付き合えば良いかアドバイスをもらった。

1.相手によって態度を変える

「パワー欲求の強い傾向にある上司の場合、『あなたの敵ではない(安心できる)存在だ』ということを認識してもらう必要があるでしょう。ただし、それは媚びていることと紙一重であるため、やりすぎると、その上司の仲間に引き込まれるかもしれません。望まない関わりならば、ほどほどにしておいた方がよいでしょう。

自信がなさそうな上司ならば、その態度や行動が一貫するように、部下が参謀としてサポートすることも一つの方法かもしれません。上司も一人の人間ですので、身近なところにいてくれる支持・協力者は必要なのです」

2.部下に仕事を押し付ける

「仕事の量や質、その期限などについて、上司に『押し付けられた』と思ったならば、関係者を巻き込んで上司本人に相談を持ちかけるべきです。上司の仕事の一つに、職場全体の仕事を把握し、目標達成に向けて、それぞれの部下に適切に分配することがあるからです。部下は納得して引き受けることではじめて、“いい”仕事ができますし、自分が手がけたことに愛着ややりがいを覚えることができます」

3.言い訳が多い

「部下側に、時間的に、また気持ちの上でも余裕があるならば、上司の言い訳を聴いてあげられるとよいのかもしれません。しかし言い訳をするときの上司というのは、それほど理路整然と話す状態にないことも多いものです。また、部下は上司のカウンセリング役というわけでもありません。良好な関係ならば、話を十分に聴くことも可能になり、部下にとっての学びの場にもなるのですが。

ですので、時間と物理的な空間を一定程度空けて、上司本人にそう伝えるなどして上司の高ぶった感情や混乱した思考が落ち着いたところで、必要な話をする、仕事を再開するほうが生産的でしょう。

上司の言い訳に対して、否定したり解釈を講じたりするような発言をすると、上司は自分を正当化させるための行き場を失うので、言い訳を繰り返したり増幅させたり、不機嫌にさせてしまったりする可能性があります。むしろ、話の流れと矛先が、この対応をした部下に向いてしまうこともありえますので留意すべきです」

4.指示が曖昧

「この場合、次の3つのいずれかが選択肢となるでしょう。(1)解釈し得る内容をすべて並べて確認すること。これは優先すべき事柄や上司が意図する指示はどれか、多義的な内容を細分化して一つずつ明確にする等です。(2)上司と一緒に考えて解を出すこと。(3)部下から提案すること。

(2)上司と一緒に考える、あるいは(3)上司に提案する場合には、『もし…としたら』『そのときには…になる』など、自身の考えを明示して上司の理解を促し共有しておくことが重要です。このとき、重要な案件であるほど、一定のリスクがあることも伝えておくこと、そして何か事が起きたときの対処を意識させておくことは危機管理になるでしょう。

曖昧な指示が多い、理解しづらい指示が多い上司には、その場ですぐに、あるいは少し時間をおいてからでも再度確認し、部下側がその内容を記録メモしておくことは心がけたいものです。

もう一つは、上司が何を期待しているのかを明確にしておくのが望ましいでしょう。なぜなら、上司は、部下が課題志向的であることを望む傾向が強く、期待どおりの働きをしないことを不快に思いやすいからです。このことが怒りを惹起させる引き金になりかねません」

5.パワハラ、威圧的

「まず、パワハラ上司と1対1の場面になることは避ける必要があります。同じ職場の中に目撃者をつくり、客観的に判断してもらうことです。ただし、その上司からの報復を恐れて、同僚の協力を得ることは難しいことが多いと思われます。そうであるならば、上司の上司、あるいは上司と同じ立場にある人に相談してみるのがよいと思います。そして、ケースに応じて、しかるべき人からその上司に注意を促してもらうことも必要でしょう。

当事者がしっかりと勇気をもって声をあげなければならないときがあります。成果をあげることが“できる”上司であっても、破壊的なリーダーに化してしまい、いずれ職場や組織全体にそれが蔓延してしまう危険性をはらんでいます。『わざわざ自分が声をあげなければならないのか…』と思うかもしれません。そこからの判断と行動は、部下自身がどうあったほうがよいかの基軸によるところでしょう」

部下のあるべき基本姿勢

これらの上司に限らず、他にも細かな部分で上司とソリが合わないことはよくある。部下はどのような姿勢でいるのがベストだろうか。

山浦氏は、部下である自分自身がどんな人でありたいのか、それが「上司が嫌いだ!」という感情と出会ったとき、それが一番問われるという。3つのポイントから解説してもらった。

1.誠実でやさしい自分である

「上司と部下の関係性を研究する中で、みなさんが答えてくださるデータに学び、周囲の人とのかかわりの中で気づかされて、自分自身に活かしたいと考えていることがあります。それは、上司や誰かとの間で苦々しくつらい経験を重ねることがあっても、誠実でやさしい自分であったほうがいいということです。

近視眼的にならず、自分が手がけている仕事が届く先に目線をシフトさせて、周囲に左右されすぎない毅然とした態度やふるまいを心がけることです。それは、ときとして、周囲には単なるお人好しで、鈍くさく見えるかもしれません。でも、それが伝わる人がいてくれたなら、それこそが大切にすべき関係性だということです。ものごとや部屋の整理と同じように、多くの関係性を築いてきたら、このような整理も必要なときが訪れるかもしれません」

2.いかに心地よく過ごすかを考える

「上司も部下も人間なのです。理解し合うのはそもそも難しいのです。だから、一つ一つが人生ドラマでおもしろいのです。多様性を認めようとしている社会において、人間関係の摩擦や衝突は避けられません。

だとしたら、いかに心地よく過ごすかを考える。例えば、嫌いな上司が、“今度は何を言ってくるのか”と、『人間/行動』をウォッチングする。“人間さまざまだね。そう捉える人もいるのか”と、『情報』として受け入れてみることです。

人と人との関係性においては、それまでの歴史・文脈の積み重ねで当事者それぞれが感じ、思うところがあります。部下は知らないだけで、上司がそう言わなければならない事情があるかもしれません。あるいは、上司のそうした事情に、実は、部下であるあなたが気づかなかっただけで関わっている・いたかもしれないのです。

部下自身も冷静になったところで、どうすることがもっとも前向きな道筋なのかを考える姿勢が育てられるようになると、もっとよい自分磨き、人間関係づくり、職場づくりにつながるのではないでしょうか」

3.不快な感情を自分の中から追い出す

「上司に刺激されて不快な感情にさいなまれそうになったならば、いち早く物理的に離れ、その感情を自分の中から追い出すことです。深呼吸でも、『はぁ、やれやれ』とつぶやくでも、『むかつく!』と叫ぶ、あるいは同僚に愚痴ることでもよいと思います。嫌いだと思う上司によって、自分自身のやりがいやメンタルが壊されることほどもったいない話はありません。また、人間のこころが強く鍛えられる必要はないと思います。もっと自分のこころに対して決して甘やかしではなく、やさしくあってほしいと思います」

上司との関係がうまくいかなかったり、毎日嫌悪感にとらわれているという場合には、ぜひヒントにして向き合っていきたい。

取材・文/石原亜香利

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