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Z世代の若手社長に聞く10代、20代で起業した理由

2021.12.30

幼い頃からスマートフォンやSNSが当たり前のように存在し、慣れ親しんでいる、デジタルネイティブといわれるZ世代。彼らは先駆的な考え方を持ち、最近では学生時代に起業し、事業を行う人も珍しくない。

彼らはどんな思いで起業を決意したのか。また若手ならではの障壁はどのように乗り越えてきたのか。いま、起業を考えている若者に向けたメッセージなどを、2人のZ世代社長にインタビューして聞いた。

1.22歳でフリーターから起業。5分で立ち上がる店舗の販促アプリを提供

一人目は、現在25歳の株式会社トイポ 代表取締役社長 村岡拓也氏だ。

22歳で地元・福岡で友人とともに起業し、飲食店などの店舗向けに「toypo(トイポ)」という販促アプリを開発・提供。当初は九州エリアを中心に、約150店舗で導入されており、店舗の利用客等によるアプリのダウンロード数は九州エリアで年内約6万人。2022年2月には東京進出を予定している。

全国に先駆けた様々なチャレンジで注目を集める福岡市長・高島氏の肝いりプロジェクト「福岡市中小企業等DX促進モデル事業」に最優秀で採択されるなど、「スタートアップ 都市ふくおか」で注目を集めるDXベンチャーでもある。

村岡氏が22歳で起業しようと思ったのはなぜか? その経緯を尋ねた。

【取材協力】

村岡拓也氏
1996年福岡県飯塚市生まれ。株式会社トイポを2019年4月に設立、2020年10月より店舗向けファンマーケティングアプリ「toypo」の提供を開始。DXによってお店とお客さんの間にある障壁をなくし、お店の価値を最大化するプラットフォームを目指している。

●起業しようと思った理由

「起業しようと思ったのは、3つの理由があります。1つめは、父が法人の経営者だったため、起業すること自体にあまり抵抗なかったこと。また父は熱い人間で、よく将来の夢などを聞かれること多かったので、自分の中で何をしたいのかを考える機会が普通より多かったと思います。

2つめは、性格的なこと。幼少のときに母が交通事故にあうなどして、祖母に育てられ、父もほとんど不在のだったため、両親がいない状態で育ってきた中で、何でも自分でなんとかしないといけなかったので、自分で何かを起こして進めていく性格だからです。

3つめは、当時はフリーターだったので選択肢がなかったこと。一番行きたかった大学に落ちたことでフリーターになり、2年半くらいはアルバイトと海外旅行をして過ごしていました」

株式会社トイポ 集合写真

●アプリの開発について

―toypo(アプリ)の構想は、どんなきっかけで生まれたのですか?

「学生やフリーター時代に、スタンプカードや回数券など特典があるお店をよく利用していました。しかし、IT化が進んでいるにも関わらず、紙のスタンプカードによるアナログなやりとりに不便を感じ、『これを解決すればお店を通して人々の生活を便利にできるのでは』と考えるようになりました」

―toypoの強みやこだわりを教えてください。

「圧倒的な手軽さがトイポの強みです。特に中小規模の店舗は予算が少なく、ITに関するリテラシーが低いことが多いです。競合となるような個別アプリ開発サービスは少ない機能でも100万円ほどの開発初期費用が発生しますし、開発期間は1-2ヶ月かかります。どんなものができあがるのか見たいと思ったときも、わざわざ営業マンを読んできてデモを見せたり、見積もりを取ったりしなければならないですが、toypoは初期費用は無料で、5分でアプリを立ち上げられます。この手軽さが一番の強みです。コスト下げるため、アプリの中にアプリを作るミニアプリという仕組みにしており、toypoを利用すれば会員証やクーポン、モバイルオーダーなどの様々な機能の中から使いたいものだけをボタン1つで有効化して使えます」

toypo画面イメージ

●Z世代の社長として

―近年、Z世代の社長やCEOが増えている印象ですが、同世代の代表者たちをどのように意識していますか?

「僕はあまり他の人は意識しないのですが、Z世代の方々については『みんなようやるなぁ』と感じます。特に、僕の一個下の社長がいるのですが、彼の会社は上場していないのですが、200億の価値があると思う企業。若手の中では抜きん出ていて、すごいなぁと思っています。自分も負けたくない、いつか追い抜いてやると思っています。

ただ、僕は今年25歳なので、ギリギリ若手。自分の中で目標があるので、がんばらねばと思っています」

―これから起業をする若者に対してメッセージをください。

「起業すればいいと思います。とにかくやるしかないじゃない、と。若いうちは失敗してもリスクが少ないので。家庭を持っていないことが多いですし、学生ならなおさら復学もできますし、挑戦しやすいと思います。また自分のキャリア形成にもなります。応援してくれる人も多いですし、若い人たちを後押しする制度もたくさんあります」

―若過ぎることで、信頼や実績面でビジネスが不利となることもありますが、それに対するメンタルのアドバイスをください。

「僕は、若いと思われないように努力しています。例えば、約束の時間に遅れないように早く行くようにしたり、言葉遣いに気をつけるようにしています。

また、いろんな人がいますが、熱量に惹かれる方が多いと思います。若い人から、熱量を持って『やりたいんです』と言われると、応援してあげたいと思ってもらえることが多かったです。若いからこそ本気なんだ、というのが伝わるようです。『金儲けしたい』というのなら、聞いてくれません。僕は、最低限のマナーを持って、熱量を持ってシンプルにしゃべるようにしています」

インタビューを通じて、父の影響や家庭環境から、自らものごとを起こす気質や、大きいことを成し遂げたい、自分がやるという強い意志を感じた。

東京進出後も、全国にその熱量が届くに違いない。

2.早大1年生が「教育×メタバース」の企業を2022年1月に起業

二人目のZ世代社長は、現役・早稲田大学1年生である19歳の女性、王 雨瀾氏。日本出身で、幼少期から中国に移住し生活している。教育とメタバースを掛け合わせた事業を行う会社を、2022年1月11日に、アメリカデラウェア州に設立予定だという。

メタバースとは、仮想空間のこと。その仮想空間で提供予定なのは、センシング・ゲーミフィケーション・Edtechを組み合わせた学習効率化サービスだ。

会社は、大企業や地方自治体の新規事業をSocial Goodな社会課題解決を軸に推進するベンチャー企業Co-Studioの子会社として設立する。

起業しようと思ったのはなぜか? 王氏は次のように話す。

【取材協力】

Another Ring 代表取締役社長 王 雨瀾氏
早稲田大学在学中。中国国籍をもち、日本で育つ。中国やアメリカで経験した日本のDX遅れや人種差別を解決すべく起業を決意。アメリカデラウェア州にて会社を設立し、教育・ファッション業界のイノベーションを志す。
Another Ringは「仮想空間にもうひとつの世界を作る」をMissionに、「差別・偏見のない社会を構築する」をVisionに掲げ、日本、そして世界のDX促進に貢献。

●起業しようと思った理由

「起業は2021年8月ごろ(当時18歳)から視野に入れていました。もともと中国に帰省するたび日本のDXの遅れを感じ、危機感を抱いていました。

また、アメリカでは人種差別や格差社会を目の当たりにし、社会問題解決への意識向上につながりました。これらを契機に、大学進学後はSocial Goodを謳うCo-Studioでインターンをはじめました。Co-Studioは大企業や地方自治体の新規事業を『0→100』まで共創し、産官学連携によるSocialGoodなビジネス開発で国内イノベーションを推進するベンチャー企業です。インターンの中で会社設立やコンサルティングを通して実務経験を積み、実際に経営の知識を得ることで起業という選択肢が自分の中に芽生えました。

初めは中国など他国の技術やシステムにより日本のDX促進を促すことを考えていました。しかし、コロナ禍でのデジタル化促進のスピード加速やブロックチェーン・NFTなどの流行などを踏まえ、『メタバース』を利用してDX促進、そして最終的には人種・性差別、格差社会、人権侵害などの社会問題や環境問題解決に至るためのサービス展開を行うことを目標にしています。

主に教育・ファッション業界からメタバースを導入し、これら世界的な問題解決を志しています」

会社風景

●Z世代社長として

―近年、Z世代の社長やCEOが増えている印象ですが、同世代の代表者たちをどのように意識していますか?

「周りの同世代を見ていると、社長やCEOというポジション名にこだわらず、自分で『何か新しいこと』を始めるイノベーティブな人が多いと感じます。

加えて、社会問題を強く意識している人も、海外経験者を中心に数多くいるように思います。会社設立だけでなく、我々の世代の中心となるSNSを駆使した活動をしている人も多く、彼・彼女らからインスピレーションを受けることも多くあります。

情報や人脈が命の時代であり、グローバルな視点をもった上で革新的で創造的なアイデアにあふれている人と関われることは有意義に感じますし、同じような志を持つ人と知り合えるのはとても嬉しく思います。

実際に起業した知り合いが多くいるわけではありませんが、今後の機会で関わることができれば幸いです。また、M&Aを目指す企業が多い中、共に協力できればより事業促進につながるのではと考えています」

―若過ぎることで、信頼や実績面でビジネスが不利となることもありますが、それに対してどう乗り切ってきましたか?

「私は周りの温かく柔軟な環境のおかげで、年齢や経験値を理由に意見ができないことや機会をいただけないことはありませんでした。

今後は、世界的に人数が多く、購買力や活力のあるZ世代がターゲット層へとシフトし、創造性や革新性が求められている現代において、若者の存在や価値観は尊重されていくと考えます。

もちろんこの先、経験不足や知識不足という点で軽視されることもあるかと思いますが、年齢は各々に付随する飾りだと考えており、我々は事業内容・信念・成果に注力するべきだと思います。

この先もし不利な立場にあったとしても、自分に芯を持ち、常にプロフェッショナルな態度で仕事に打ち込むことを貫きたいと思います」

―これから起業をする若者に対してメッセージをください。

「同世代で起業をする人、社会問題に対し、声をあげる人、SNS上で活動をする人などイノベーティブな人が増えている一方『意識が高すぎる』『絶対に無理』などと否定的なコメントをする人も多くいると感じます。

また、完璧なビジネスモデル、抜け漏れのない事業内容、確実な利益獲得などは事業に取り組んですぐに得られるものではないですし、必ず壁にぶつかることがあると思います。

起業をするにあたって、内容以上に、自分の意思や信念の強さが大切になると思います。

さらに、自分の目標を口にすることで共感・協力してくれる人も現れる可能性もあります。ネガティブなコメントに折れず、自分の目標を声に出し、諦めないことが最も大切であると思います」

最近では、大学在学時代に起業する人物は増えてきたように見えるが、まだまだ珍しいのには変わりない。そうした中で、王氏のインタビューを通じて、デジタルネイティブならではの発想と課題意識で、画期的なサービスが生み出されることに期待が高まった。

これからの時代の中心となるZ世代。その中でも熱量のある若手社長を紹介してきた。どちらも確固たる意志を持ち、今後の発展も期待できる。3年後、10年後が楽しみだ。

取材・文/石原亜香利

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