コロナ禍になり、転職を考えたという人は多いのではないだろうか。ある調査では約8割にも上った。将来性への不安や働き方を変えたい思い、キャリアを見つめ直したなどの背景があるようだ。
そんな転職意識が高まる今、転職するなら、ぜひ年収アップを狙いたいと考える人もいるだろう。そこで今回は、転職アドバイスやコンサルティングを行い、自身も度重なる転職で年収を上げてきた「元祖・スーパーサラリーマン」田端信太郎氏にアドバイスをもらった。
コロナ禍で転職を考えた人は約8割
MyReferが2021年5月に従業員数30名~1,000名以上の会社の従業員男女1,000名を対象に「コロナ禍の転職意向調査」を実施したところ、コロナ禍に転職を考えた人は「転職を考えたことがある」(67%)、 「転職をした」(10%)を合わせて 8割に上った。
転職を考えた理由として、「会社や事業の将来性に不安を感じたから」(53.6%)、 「働き方を変えたいから」(42.4%)、 「自分のキャリアを見つめ直したから」(36.4%)の3つが上位に。
テレワークの普及など働き方の変化や、1人になる時間が増えたことによる内省の機会増加により、転職意向が高まったとみられる。
年収アップ転職活動を行う前の確認事項
「転職を行うなら、年収が上がらないと意味がない」。そう考えるビジネスパーソンも多いだろう。もし年収アップ転職を狙うなら、どんな戦略を練れば良いだろうか。
今回は、転職相談や就職先企業紹介、職務経歴書レビュー、模擬面接、転職前後のメンタリングを行い、2022年1月1日に第2期生の募集も始まるというキャリアメンタリングサービス「田端信太郎の転職Boot Camp」が話題の田端信太郎氏に、自身もNTTデータ、リクルート、ライブドア、スタートトゥデイ(現ZOZO)など、計6回の転職を経験してきた経験を踏まえ、年収アップ転職の交渉術や下準備などを聞いた。
【取材協力】
田端信太郎氏
1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」の立ち上げや、広告営業責任者を務める。
その後ライブドア入社。ライブドアニュース責任者から執行役員メディア事業部に就任、経営再生をリード。2010年コンデナスト・デジタルでカントリーマネージャーに。2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。2018年スタートトゥデイ(現ZOZO)のコミュニケーションデザイン室室長に就任し、2019年12月退職。2020年 株式会社田端大学校設立。同社運営のオンラインサロン「田端大学」塾長の他、複数のベンチャーの顧問などを務める。著書は「これからの会社員の教科書」(SBクリエイティブ)など多数。
現在、INCLUSIVE株式会社と共にキャリアメンタリングサービス「田端信太郎の転職Boot Camp」を実施し、熱血指導中。本年Boot Campを始動した1期生に続き、2022年1月1日に2期生の募集が開始される。
https://boot-camp.tabata-univ.jp/
「年収アップ転職」を望んでいても、そもそも、まだ転職すべきではない、年収アップは控えたほうがいいという人もいる。それはどんな人だろうか?
「これまでの職場で『自分はコレをやりました!』と胸を張ってアピールできる自分の実績や強みが思い当たらない人。そういう人は、現在の職場で、上長に対して『何を達成したら昇給や昇進しますか?』と明確に質問し、それを実現すべく努力することを優先するべきだと思います」
年収アップ転職を実現するために、まず最初にやるべきこと
実績、強みも、情熱もある。そんな人は、年収アップのために、まずどんなことに取り組むべきか。多数ある中で、田端氏は次の2つを特に挙げる。
●英語力アップ
「英語力は誰でも挑戦できて年収アップに直結する技術の一つです。まずは何よりも自分の英語力のレベルを把握すること。例えば、帰国子女でネイティブ・スピーカー並みであっても、海外の大学を正規で卒業しているのでなければ自分の英語力がどの程度なのか分からないものです。『TOEICを受けたことないのでスコアすら知りません』、では話になりません。英語を勉強中でも、上手になってから受けようではなく、ダイエット始めるにあたり、最初に体重計に乗るのと同じで、すぐにTOEICのテストを受け、自分の英語力のレベルを客観的に知るべきです」
●インパクトある成功プロジェクトのリーダーとなる
「現在の職場で、同業他社から『ぜひあの人なら採用したい!』と思わせるような、社外にまで結果のインパクトがとどろくような成功プロジェクトを自ら立ち上げ、そのリーダーとなりましょう」
年収アップ転職を実現するためのポイント
年収アップ転職を成功させるためには、応募から書類作成、面接突破、筆記試験、そして年収交渉などさまざまな関門がある。今回は、田端氏に項目ごとにポイントをアドバイスしてもらった。
●基本スタンス
「『自分が応募先の企業に転職することで、自分がもらう給料の何倍もの利益を、相手先にもたらしうるので、もし自分を採用しないのなら、損をするのは御社ですよ』、という強気の営業トークをできるようにしましょう。
そのためには、相手を納得させられるだけの実績、実力、求人企業の幹部クラスへのコネクションを作り、そのクラスの人たちに認められる、引っ張られることを目指すとよりよいです」
●応募書類の書き方のポイント
「応募書類は、応募する会社が求める人物像に合わせて書くのがポイントです」
●面接で絶対にすべきこと、反対に絶対にすべきでないこと
「絶対にすべきなのは、事前に会社のIR情報などを読むこと。絶対にすべきでないのは、現職場をけなすことです」
●年収を現状よりアップさせるための「必殺」文言は?
「『現在の職場での待遇にも仕事内容にも満足しています。』このように言えば、現状より年収が上がらないなら転職する気ないよ、と解釈されます」
●入社後のパフォーマンスにおいて最も気を付けるべきことは?
「ポジションが管理職以上ならば、俗に“Quick Win”と言われていることですが、小さくてもいいので成果を早めに出すことです」
年収アップ転職のためには、まず自他ともに認める成果を出すこと。そして英語力も欠かせない。そのためには、まずは今の職場で戦うことが重要といえそうだ。
取材・文/石原亜香利