【連載】もしもAIがいてくれたら
【バックナンバーのリンクはこちら】
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第29回:SNSがきっかけでいじめが始まらないように、AIができることはたくさんある
AIの顔認識はいまやカンペキ
いつでもどこでも持ち歩くスマホ。いつでもどこでもすぐに写真を撮れるようになったことで、スマホに写真がたくさんたまっている方は多いのではないでしょうか。
いざ年賀状を作るときに、1年分撮りだめた大量の写真の中から、ほしい写真を見つけるのは大変です。年賀状に限らず、スマホ(やクラウド)にある大量の写真を整理し、目的に応じて活用できるようにするサービスもいろいろあるようです。
「家族アルバム みてね」は、株式会社ミクシィが2015年4月に提供を開始した家族向け写真・動画共有サービスですが、2021年3月には利用者1000万人を突破したということで、とても人気があるようです。スマホで撮影した子どもの写真を、家族間で共有してコミュニケーションをはかることを目的としたものということです。様々な機能があるようですが、「『みてね』にアップした写真の中からおすすめの写真を独自のAIにより自動提案する」とも公表されています。どのようなAIを使っているのかはわかりませんが、AIは画像認識能力は高いため、工夫次第でいろいろできそうです。
Microsoftは、PCでの利用を想定したものかと思いますが、AIを前面に出した写真整理の技術を展開しています。AI の画像認識能力を使えばすべて認識できる、ということで、自分でタグ付けしなくて、AIが写真に写っている人物や風景などを自動で認識してタグ付けするため、キーワードで検索すれば探している写真を検索できます。AIの顔認識能力の高さは広く知られていると思いますが、今や人物ごとに分類することもほぼ完ぺきにできると思います。写真を自動補正する技術は、インスタなど様々なサービスで当たり前に使われていますが、AI が写真の状態を判断し、明るさや色味などを自動で最適化します。写真の編集や、アルバム作成や動画作成も可能な保存方法に関する機能などもいろいろあるようです。
iPhoneなどスマホで撮影した写真も、特別なアプリを使わなくても、Appleの端末の基本機能で、写真に写っている人の顔を認識し、グループ分けして、アルバム整理したり、iCloudを使えば Apple 製デバイス間で同期もできます。
どうして「みてね」は流行ったのか?
AIが写真についてできる基本技術は特定のアプリを使わなくても享受できますが、スマホで写真アプリを検索すると山ほど出てきます。その中で、先ほど紹介した「みてね」のような人気アプリになるには、着眼点やちょっとした工夫で、ターゲットとする顧客に合わせた「使いやすさ」や「楽しさ」が重要なのかもしれません。
家族で写真を共有して楽しむためには、高齢の祖父母にも使いやすいことも重要ですし、アルバムや動画のかわいらしさも重要だろうと思います。「みたよ履歴」というシンプルでかわいいアイディア、高齢者でも簡単にコメントできるというシンプルな工夫です。こういったサービス上の着眼点や工夫は、人間が見出すものとなるため、「売れるサービスや建付けをAIが考える」というのはまだ難しいと思われます。
感性AIの研究者としては、個人ごとの感性の違いに着目したサービスとして、自分の好みの表情の検索を可能にしたり、「ふわっとした雰囲気の写真」「きらきら感のある写真」「しっとり感のある写真」といった感性で検索したり、そういった感性的な表現で写真を加工できるようになるとよいかな、と思います。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。