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【私たちの選択肢】セックスで傷ついて悩んでいる女性を癒したい。私がレズ風俗で働く理由

2021.12.05

【私たちの選択肢】レズ風俗「ティアラ大阪店」キャスト ゆう 後編

前編はこちら → 【私たちの選択肢】女の子同士はどうやって恋愛をするんだろう?私がレズ風俗で働く理由

人生に行き詰まると、わたしたちは目の前の世界しか見えなくなります。そんな時、知らない世界や知らない誰かの人生を知ると、すこし気持ちが楽になったりします。

人はいくつもの選択肢をもっている。そして自由に生きることができる。このインタビューは、同じ世界に生きている”誰か”の人生にフォーカスをあてていきます。

レズ風俗、初出勤 

ヘテロセクシュアル(異性愛者)だと思って生きてきたゆうさんは、バーで出会った女性と好奇心で体を重ねたことをきっかけにして、自分がよりフィットする世界があることに気づきました。

自分はバイセクシャルなのかレズビアンなのか、それともヘテロセクシュアルなのかわからない戸惑いを抱えながら、レズ風俗のキャストとして働くことが決まります。

前編「女の子同士はどうやって恋愛をするんだろう?私がレズ風俗で働く理由」はこちら

https://dime.jp/genre/1268650/

初出勤はデートコースでした。大阪の「海遊館」に行ったんです。その日のことは全部覚えています」

キャストとして自分がお客さんをリードをしなくてはいけない。そう思っていたゆうさんは緊張を隠そうとして、無理に堂々とした態度をとってみたそうです。

大丈夫じゃないけど大丈夫なふりをしていて、今思い返すと恥ずかしい」と笑うゆうさんを見ていると、なぜか安心感に似た感情がわきました。みんな大丈夫じゃないから、あなたも大丈夫じゃなくてもいいよと言われたような気がしたのです。

キャストとして働き、今年で13年目になるゆうさんはなぜお仕事を続けることができたのでしょうか。そこには好奇心以上のものがあるような気がします。

お客さんの女性と楽しくお話しをしてデートをしてホテルに行く。そして大きな金額をいただく。自分に使ってくれる時間とお金のことを考えると、これは他の仕事では得られない感情だなと思ったんです。挑戦しようって決めました

ただ一緒にいるのではなくて、相手がゆうさんになにを求めていてどんな風に振る舞ってほしいのか気づかなくてはいけません。気を遣いすぎても遣わなすぎても満足してもらえない。その微妙なニュアンスを、ゆうさんは指名してくれるお客さんひとりひとりに教わったといいます。 

初めて会うお客さんが待ち合わせ場所に現れる瞬間、その人が心に秘めている感情が伝わることがあるそうです。

その人がまとっているオーラみたいなものを感じるんです。きっとなにかつらいことがあったんだろうな、とか。そんななかで自分に会いに来てくれたんだと思うと、なにもかもを聞くよりもまずは抱きしめてあげたくなるんです

 お仕事のなかで毎日たくさんの女性に会うようになり、ゆうさんは女性たちが抱えている孤独について考えるようになりました。お仕事があって住む家もあって家族や恋人や友だちがいても、それでも寂しい気持ちを我慢している女性がいる。心の支えを失った女性の多さに胸が苦しくなりました。それはゆうさん自身の感情に重なる部分があったのです。誰もが孤独な気持ちになる。そう思うと、触れ合うことの大切さがより強固になりました。

言葉よりもハグ。それって普段から気軽にできることではないんですよね。だからレズ風俗は人に言えないことを言える場所であると同時に、ほんとうの自分のことを言わなくてもいい場所でもあるんです

セックスで傷ついて悩んでいる女性を癒したい

 仕事を続けているうちに、ゆうさんは自分の感情にも変化が起こっていることに気づきます。

わたしは女性を好きになれるんだと気づいたんです。自然と女性に対して、寄り添ってあげたい守ってあげたいという気持ちになっていました。

異性とのセックスに幸福を見つけられなかった人や、傷ついた人を癒してあげたい。気持ちよくなれる場所を探してあげたい。その感情や欲が、恋愛や愛情に繋がったのだと思います 

過去の自分と同じように違和感に悩んでいる人を助けたい。その気持ちから発信されるゆうさんのメッセージ、セクシュアリティを焦って決めないでは、ゆうさん自身の体験が生んだ想いだったのです。 

なぜこれほど長い間、たくさんのお客さんひとりひとりを、そしてレズ風俗を必要としているまだ見ぬ誰かにメッセージを発信し続けられるのでしょうか。そこにはある願いがありました。

誰かの人生にとって、わたしが少しでも支えになれたら嬉しいんです。なんども会いに来てくれるなかでそれぞれに発見があって気づきがある。

そうやってひとりひとりとの間に作り上げていく関係性があって、その層が年月とともに厚くなっていく気がしています。お客さんの気持ちとわたし自身の気持ちのリンクを感じるんです

お客さんのなかには、ゆうさんが働きすぎて疲れていないか心配をしてくれる人も多いそうです。「お金を払って会いに来てくれるのにわたし自身のことまで心配してくれる。素直にすごいなって思うし、その思いやりに救われることも多いです」と言ってから、「そこまでしてくれなくていいのに」と恥ずかしそうに笑いました。

他人への思いやりは、自分の心が安定していないともつことができません。きっとゆうさんの存在自体がお客さんにとっての安定なのです。

キャストとお客さんという関係性だからこそ話せる本音、そして、その関係性を踏み越えられないからこそ出せる欲望。日常とはちがう居場所で日常とちがう自分を知ってくれる人がいることは大きな安心につながるのかもしれません。

人は毎日変わる 

「自分を決めつけないでほしいです」

ゆうさんはこれまでいろんなお客さんの変化を目の当たりにしてきたといいます。初回はロングヘアでシフォン素材のワンピースを着ていた人が、自分の女性への感情を話せるようになってから、ショートカットでスポーティーな服装になったり。会うたびにそれぞれが少しずつ変化をしていくそうです。

わたしたちって、寝て起きたら食べたいものも見たい映画も変わりますよね。だから毎日違う自分として目覚めていると思っていいはずなんです。人は見た目ではわからないけれど、本音や欲望が解放されることで本来の自分を呼び覚ます人もいます。

自分はこうでなきゃと決めつけるのはきっとおもしろくない。”どうあってもいい”というカテゴリがあってもいいなと思っています 

決めつけることも、無理に決めることもしなくていい。それはゆうさんがあのバーで出会った女性に気づかされたことでした。

 「あの夜はわたしの分岐点になりました。わたしも誰かにとってそうなりたいなと思っています」

ゆうさんのお話しを聞いていると心がゆるむような気がしました。 

多様性を意識するあまり、「じゃあ、あたなはどれなの?」と決定を求められると息苦しくなることがあります。

どんなカテゴリでも受け入れるから言ってね、と強要されているように感じる日があるからです。わたしたちの感情は日々グラデーションです。そしてそのグラデーションの濃淡、あるいは色合いまでも変化します。

ゆうさんが言う「セクシュアリティを無理に決めなくてもいいよ」という言葉こそ、このグラデーションのすべて。わたしたちは無限。明日はまた違う濃淡をもったわたしたちなのです。

ゆうさん

永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。自由奔放で行動派、ポジティブ思考寄り、人見知りはしない性格。女性をエスコートするのが好き。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025

文・成宮アイコ

朗読詩人・ライター。機能不全家庭で育ち、不登校・リストカット・社会不安障害を経験、ADHD当事者。「生きづらさ」「社会問題」「アイドル」をメインテーマにインタビューやコラムを執筆。トークイベントへの出演、アイドルへの作詞提供、ポエトリーリーディングのライブも行なっている。EP「伝説にならないで」発売。表題曲のMV公開中。著書『伝説にならないで』(皓星社)『あなたとわたしのドキュメンタリー』(書肆侃侃房)。好きな詩人はつんくさん、好きな文学は風俗サイト写メ日記。

編集/inox.

「私たちの選択肢」のバックナンバーはこちら

【私たちの選択肢】カッコわるいと言われても構わない。僕がゲイとして女性差別を語る理由

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