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【私たちの選択肢】自分を確かめる術として足を踏み入れたストリップの世界

2021.09.10

【私たちの選択肢】ストリッパー・葵マコ 前編

自分を確かめる術として足を踏み入れたストリップの世界。「最初は自分を確かめる術でした」

人生に行き詰まると、わたしたちは目の前の世界しか見えなくなります。そんな時、知らない世界や知らない誰かの人生を知ると、すこし気持ちが楽になったりします。人はいくつもの選択肢をもっている。そして自由に生きることができる。このインタビューは、同じ世界に生きている"誰か"の人生にフォーカスをあてていきます。

服を脱いでいくたびにわたし自身の根っこに近づいてくれた

撮影協力:ライブシアター栗橋

「最初は承認欲求だったと思います」そう語る葵マコさんはストリップ劇場の踊り子です。

きっかけは大学時代に手にした「ストリップをやりませんか?」というフライヤーだったと言う葵さん。それは、ある大学の生徒がストリップに感銘を受けて、「もっと広めたい」と企画したクラブイベントでした。そこにゲストで出演していたストリッパーに感動し、実際に劇場へ足を運ぶようになったそうです。

「高校の3年間、彫刻をやっていたこともあって、人間の裸の造形に魅力を感じていました。ストリップの踊り子さんは身体の柔軟性がすごかったんです」

衣装を纏った踊り子がそれぞれのシチュエーションを演じ、音楽に合わせて裸になる。その姿に葵さんは心地よさを感じていました。

「すべてをさらけ出してくれているように感じたんです。本名も知らない人同士なのに、踊り子さんが服を脱いでいくたびにわたし自身の根っこに近づいてくれたような気がしました」

彫刻を続けてはみたけれど作品の方向性が定まらず、人との会話が苦手で人間関係もうまくいかない。自分には確固たるものがなにもない……。不安だらけの毎日で唯一、確かだと思えたことは食への執着。そして、自らの体重を管理することでした。

身体の魅力をもっと知るべくコンテンポラリーダンスのワークショップに足を運んでいた葵さんは、進学先として舞台芸術学部を選び、ストリップに出会ったのでした。

言葉にはできないことも身体表現なら伝えられる

撮影協力:ライブシアター栗橋

「人と会話のキャッチボールをすることが苦手だし、うまく意思表示ができませんでした。でも、ストリップという身体表現でなら自分の感情が表現できると思ったんです」

葵さんは、大学に通いながら風俗やSMのお仕事を始めました。そしてある日、自分が踊り子としてストリップ劇場の舞台に立つことを決心。大学卒業後に踊り子としてデビューをしました。

「最初は承認欲求だったと思います。舞台に立つことで、自分で認められない自分を他人に認めてもらおうとしていました。嘘でもいいから愛されたかったんです」

「嘘でもいいから」と言ったあとに、「だけど、わたし自身がそこに存在していることは本当だから」と付け加えられた言葉はあまりにも切実でした。

「自分の存在があまりにもおぼろげだと感じていました。SMではM側をやっていたんですけど、M側は相手の気持ちを受けることができるんです。受け手をしていると、”自分は存在している”と思えたんです」

自分を確かめる術としての風俗・SM・ストリップ。一対一の風俗とは違い、お客さんがたくさんいるなかで脱ぐことは別の難しさがあったそうです。

「大勢の視線を直に受けたのは初めての体験でした。服がない状況は自分自身の心も隠せないんですよね。いまだに一ヶ月くらいお休みをすると最初は恥ずかしくなるんです。」

念願の踊り子デビューの舞台を終えた葵さんは落ち込んでいました。舞台に立つことで、「踊り子になりたい」という夢は叶いましたが、理想と現実の差は大きく、もともと患っていた摂食障害に加えて、お酒の量も増えてしまいました。

またストリップがやりたいと思ってしまった

人前に立つには、もっと自分と向き合わなくてはいけない。そう思った葵さんは不安を抱えていました。

「とんでもないフィールドに足を踏み入れてしまったと思いました。ストリップの舞台は自分が自分として立っていなくてはいけない場所でした。他人に認めてもらいたい気持ちだけではダメ。それもわからず飛び込んでしまったので、初めの舞台は見苦しかったと思います」

それでも舞台に立ち続け、踊り子をはじめて4年目。お酒の量は増え、摂食障害も悪化していました。行き詰まりを感じた葵さんは踊り子を休業することを決断。パン屋やマッサージ屋でアルバイトを始めます。しかし、働いているうちに自分のなかにある気持ちが芽生え始めたのです。

「またストリップがやりたい、と思ってしまったんです」

一念発起し、過激なダイエットをして復帰。しかし、お酒はやめられませんでした。目の前に缶チューハイがあったら飲んでしまう、お酒を飲むと踊りのレッスンができなくなる。

だけど、依存症の体験記を読むともっとひどい状態の人がたくさんいます。自分はその体験談よりはまだマシだろうとごまかす日々が続きました。そんなとき、ある事件が起こったのです。

「家で飲んでいるとき、トイレが間に合わなくて漏らしてしまうようになりました。これはちょっとヤバイかもしれないと気づきました。毎晩、「今日こそは飲まない」と決めるのに、お酒の空き缶に埋もれて目覚めることの繰り返し。このまま飲み続けていたら踊り子もできなくなってしまう。お酒を飲むことと踊り子は両立できないんだと思いました」

そんな気持ちを親友に打ち明けたところ、こんな言葉をかけられました。

「このままじゃ、いつか体を壊すだろうと思って見ていたよ。それでも見守っていこうと思ってた。でも、わたしはあなたに生きて欲しいから、お酒をやめたいって思えるんならやめて。あなたは生きてください」

10代と20代を振り返ると、日々のつらさで記憶が抜けている部分もあるそうです。それでも、葵さんは友人からかけてもらった言葉が頭から消えませんでした。生きていきたい気持ちと、踊り子を続けたい気持ちが葵さんを支えました。

「完治する病ではないので、ストリップに復帰して踊り子としてやっていくのならば、自分の病気を隠してやっていくことは無理だなと思ったんです。舞台に立つからには、自分を出そうと決めました」

ストリップは夢を見せるお仕事でもあります。もしかしたら人間的な部分は見たくない人もいるかもしれません。自分のカミングアウトは必ずしもプラスになるとは限らないと思いつつ、それ以外に方法がありませんでした。

「海外では、有名人がアルコール依存での入院や治療をカミングアウトしているので依存症の認知度が高いけれど、日本はまだバッシングが強い傾向にあると思うんです。どうしてそうなってしまったのか、本人の内面に焦点が向くようになってほしい。わたしはちょっとだけ人前に出ているお仕事なので、自分が依存症を公表をすることで、病気への理解を広められるのではないかとも思ったんです」

自分を確かめる術として足を踏み入れた踊り子の世界はいつしか、葵さん自身の想いを伝える場所にもなっていました。

"言葉がないのになぜこんなに感情を揺さぶられるのだろう" これは、わたしが初めて葵さんの舞台を見たときの気持ちです。人の気持ちはグラデーションなので、言葉だけではおさまりきらない葛藤だらけ。もしかしたら、身体表現はそれを伝えることが可能なのかもしれません。

後編では、葵さんのよりパーソナルな部分をお聞きしていきます。

葵マコ

ストリッパー。高校時代より、裸体の在り方に興味をもつ。彫刻や版画などの表現を経て、自らの身体を動かすことにつながる。2008年、京都のストリップ劇場、DX東寺にてデビュー。休業を経て現在14年目。アルコール依存、摂食障害であることを公表しながら踊り子を続けている。好きなものはスパイスカレーと珈琲。はだかと言葉と心のあり方をいつも模索中。

文・成宮アイコ

朗読詩人・ライター。機能不全家庭で育ち、不登校・リストカット・社会不安障害を経験、ADHD当事者。「生きづらさ」「社会問題」「アイドル」をメインテーマにインタビューやコラムを執筆。トークイベントへの出演、アイドルへの作詞提供、ポエトリーリーディングのライブも行なっている。EP「伝説にならないで」発売。表題曲のMV公開中。著書『伝説にならないで』(皓星社)『あなたとわたしのドキュメンタリー』(書肆侃侃房)。好きな詩人はつんくさん、好きな文学は風俗サイト写メ日記。

編集/inox.

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