近年、「SDGs」や「脱炭素(カーボンニュートラル)」に関するニュースを目にする機会が増えてきた。環境保全や持続可能な社会づくりへの関心が世界的に高まり、ビジネスを行う上でも環境問題に対しての積極的な取り組みが求められる時代だ。
そこで本記事では、ビジネスと環境問題を語る上で欠かせない「環境経営」というキーワードに着目し、環境経営の意味や目的、具体例を詳しく解説していく。
環境経営の意味と目的
はじめに、そもそも「環境経営」とは何か、また環境経営が行われる目的について解説していく。この言葉を初めて目にした方は、ぜひこの機会に覚えておこう。
そもそも環境経営とは?
環境経営とは、企業が環境保全を重視した経営戦略を立て、企業としての社会的責任を果たす経営手法を指す。環境問題に対して積極的な取り組みを行うことで、企業の持続的な成長に繋げていこうとする考え方だ。
環境経営が行われる目的は?
環境経営が行われる主な目的は、企業価値を高めることにある。現在、日本国内では企業の環境経営を評価するための指標や表彰制度も多く存在している。代表的なものとしては「ISO14000」の取得や「エコアクション21」「ゼロ・エミッション」などがあり、この中で掲げられた基準や目標をクリアするための取り組みがさまざまな企業で行われている。自社の取り組みが評価されれば、企業イメージの向上によって人材や消費者の獲得にも繋がる期待が持てる。
環境経営を実現するには
では、環境経営を実現するには具体的にどのような取り組みが必要なのだろうか。ここからは環境経営に求められる方向性や具体的な取り組み例を紹介する。
環境経営に求められること
まず、環境経営に求められる方針について見ていこう。環境省は、今後10年間における環境経営を展望するにあたり、以下の6つの事項が重要な方針であると示している。
1.経営者の主導的関与
経営者が環境に配慮した取り組みの実行を社会に対して約束すること
2.環境への戦略的対応
環境問題の分野において、重要な事業機会やリスクに戦略的に対応すること
3.組織体制とガバナンス
環境経営を適切に遂行していくため、組織体制と管理体制を構築すること
4.ステークホルダー(利害関係者)への対応
ステークホルダーの期待や要望を把握した上で、経営活動の中に還元していくこと
5.バリューチェーン志向
原料の調達から廃棄までのプロセスの中で、環境負荷に関する課題を特定し、対話していくこと
6.持続可能な資源・エネルギーの利用
資源効率性の向上などによる資源の持続可能に配慮した利用をすること
具体的な取り組み例
実際に環境に配慮した活動を行う企業も増えてきている。例えば、脱炭素社会を目指すための取り組みとしては、太陽光発電やLNG(液化天然ガス)の利用による二酸化炭素排出量の削減、製造プロセスの見直しによる省エネ化、使用電力量の少ない製品の開発を行うなどの活動が例として挙げられる。
また、部品や資材のリユース・リサイクル、梱包資材の簡素化による廃棄物の削減や循環型社会づくりに対しての取り組みを行う企業も増えてきている。
環境経営のメリット・デメリット
最後に、環境経営を行うメリットとデメリットを紹介する。企業の信頼を得られるメリットがある一方で、金銭的コスト・人的コストがかさむのがデメリットと言える。
メリット
環境経営に取り組むことで得られるメリットとしてまず挙げられるのは、企業価値の向上と社会的信用の獲得だろう。環境問題への社会的関心がますます高まるなか、環境経営についての具体的な取り組みや、中長期的な目標を公開すれば、取引先や株主、顧客からの高い評価に繋がる。
また、環境経営に取り組む企業に対しては、自治体から優遇措置や補助金が出るケースも少なくない。さらに、金融機関からの融資を受けやすくなるといった利点もある。
デメリット
しかしながら、環境経営を進めていくのにはデメリットも存在する。まず、環境に配慮した新しい設備への投資や商品・サービスの開発費用、社内研修費用といったコストが新たに発生する点だ。例えば製造業の場合、製造プロセス・設備の入れ替えによる省エネ化や環境に配慮した商品の販売により、長期的に初期投資コストを回収していける可能性も十分にある。しかし、余裕資金のない事業者にとっては負担が大きくなるのも事実だ。
もう一つの大きなデメリットは、社員の業務負担が増える恐れがある点だ。通常業務に加えて、環境経営を進めるために必要な仕事が増えれば、社員の業務量や残業時間も増加する可能性が考えられる。環境への配慮と社員のモチベーション維持を両立させることは、企業にとって課題となり得るだろう。
文/oki