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国際宇宙ステーションISSの運用終了に垣間見る商用宇宙ステーションの未来

2021.11.16

ここに来て、急に商用宇宙ステーションの話題が浮上している。それは、先日開催された第72回国際宇宙会議(IAC2021)のタイミングに合わせて各社が発表しているというのもあるとは思うが、それは国際宇宙ステーションISSの運用終了の話題に深く絡んでいる。では、なぜ、多くの企業が、商用の宇宙ステーションを計画し始めたのか、今回は、そのようなテーマについて触れたいと思う。

出典:Axiom Space)

国際宇宙ステーションISSはいつ終了するのか?

宇宙ステーションといえば、国際宇宙ステーションISSを取り上げずにはいかないだろう。国際宇宙ステーションISSは、ご存知の方が多いはず。というのも、日本からもJAXAの宇宙飛行士が定期的に国際宇宙ステーションISSを訪れ、様々な宇宙における実験など重要なミッションを担っていて、度々その様子を配信してくれるからだ。加えて、宇宙からの地球の綺麗な映像なども我々に伝えてくれる。

そんな国際宇宙ステーションISSは、1998年から宇宙軌道上で組み立てが開始され、2011年に完成したと言われている。2011年以降も、さまざまな機器やモジュールなどが打ち上げられ接続などされているが、この国際宇宙ステーションISSは、米国が主導し、日本、カナダ、欧州、ロシアが参画し、各国が協力しながらまたは独自の宇宙実験などを行なってきている。これまでに10兆円以上の予算が費やされている。

では、なぜ国際宇宙ステーションISSが終了するという報道が出始めただろうか。それは、国際宇宙ステーションISSの組み立てが開始されてからすでに約23年もの月日が経過して、正直なところ、老朽化を懸念し始めてことがまず挙げられる。また、これまでに各国が大きな予算を費やしてきたため、この予算を今後も継続するのかという議論もあるのが正直なところだ。そして、次の目指すべき”月”へと予算を使うべきではないかという議論もあることは確かだ。

では、国際宇宙ステーションISSはいつまで運用されるのだろうか。正直、色々な議論があり、定まったことはいえないが、現時点まで、国際宇宙ステーションISSの使用期限は2024年までで参加各国が合意しているという。技術的には2028年までの使用は可能とされているが、再延長するかは決まっていない。そして2030年には必ず運用を打ち切ると公言する報道もあるくらいだ。

国際宇宙ステーションISS

国際宇宙ステーションISSの運用終了後は民間移管?!

国際宇宙ステーションISSは、いずれ運用は終了されることだろう。しかし、国際宇宙ステーションISSという大規模な宇宙ステーションというハードウェアがすぐになくなるのかというとそうでもなさそうだ。

2024年までの使用期限は合意されているとのことで、その後の予算を各国は拠出する計画がないのだ。そのため、いつになるかという不確定性はあるものの、民間に移管する流れとなっているようだ。

この”民間移管”という定義も難しいのだが、現在、国際宇宙ステーションISSの民間移管を担当するのが、米国のベンチャー企業Axiom Space。既にコンペで勝利しており、実際にNASA契約もしているという。

Axiom Spaceが受け継ぐ国際宇宙ステーションのイメージ
(出典:Axiom Space)

Axiom Spaceは既にNASAと締結している契約においては、国際宇宙ステーションISSに新しいモジュールを1つは取り付ける計画だという。つまり、仮に運用終了が2024年の場合、2024年には、最初のモジュールを国際宇宙ステーションISSに取り付け、その後、半年くらいのスパンで2つ目、3つ目とモジュールを追加して取り付ける計画という。このモジュールもThales Aleniaが担当する旨も報じられている。最終的に、Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションISSに取り付けたモジュールを民間初の宇宙ステーション「AxStation」として、国際宇宙ステーションISSから分離、独立させる計画だ。もちろん、このAxStationが独立で機能するために、太陽電池パネル、水設備、ロボットアームなどが取り付けられる予定だという。その分離させる時期は、2028年から2030年を計画しているという。そしてその後、国際宇宙ステーションISSは、大気圏へと向かうのだろう。

宇宙旅行に成功したBlue Originも商用宇宙ステーション参画へ!

商用宇宙ステーションの参画を表明しているのは、Axiom Spaceだけではない。2021年10月25日、Blue Originは、ビジネスと宇宙旅行のための商用宇宙ステーションを開発するとプレスリリースで報じている。この宇宙ステーションの名前は、「Orbital Reef」。Sierra Spaceとともに開発するようだ。Orbital Reefは、”多目的ビジネスパーク”と位置付けられているようで、宇宙における研究開発、実験などのB2Bのみならず、宇宙旅行やそれに伴うテナントやエンタテイメント施設などB2C向けのビジネスを展開する計画だと強調している印象がある。2020年後半までには軌道上に宇宙ステーションの一部を打ち上げる計画のようだ。

Blue Originの商用宇宙ステーションのイメージ
(出典:Blue Origin)

そして、2021年10月21日、Nanoracksも、商用宇宙ステーションに参入するプレスリリースを報じている。この宇宙ステーションは「Starlab」という。Nanoracks、Voyager Space、Lockheed Martinの3社共同で開発を実施していくようだ。2027年までに運用を開始する予定という。NanoracksのStarlabは、宇宙における研究、実験などの役割を担うようだ。

Nanoracksの商用宇宙ステーションStarlabのイメージ
(出典:Nanorack)

いかがだっただろうか。国際宇宙ステーションISSの運用終了が現実味を帯びる中、このフィールドをビジネスチャンスと捉える企業が世界では続々と参画を表明してきている。以前であれば、宇宙ステーションという規模の構造物を民間企業が打ち上げ、整備、運用することができる意思決定力や資金力などは考えられることはできなかった。しかし、2030年代には、商用の宇宙ステーションが地球低軌道の軌道上に投入され、宇宙での研究開発、実験以外にも、月や火星への中継地点ハブのような拠点となったり、スペースデブリ除去衛星や燃料補給衛星、衛星修理衛星など軌道上衛星ビジネスとしての衛星の出発拠点となったり、スペースコロニーとして巨大都市のような先駆けになったりと、様々なプラットフォーム、拠点化することだろう。そしていろんなビジネスが組成されることだろう。そんなイメージが膨らむ。どのような未来になっていくのだろうか、楽しみである。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。

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