上司と部下の関係性と人事評価の納得感には、一定の相関性があると言われている。2019年6月のエン・ジャパン株式会社による調査(1万人が回答!「上司と部下」意識調査)によれば、部下から上司に期待することに、世代を問わず約56%の部下が「公平・公正な評価」を挙げている。
パフォーマンスマネジメントSaaS「Co:TEAM」を運営する株式会社O:ではこのほど、「上司・部下の評価コミュニケーションの実態調査」を実施。本調査では、「人事評価」と「フィードバック(面談)」に焦点を当て、上司と部下の関係構築に必要な「部下にとって納得感のある評価」を実現するポイントについて分析している。また本稿後半では、O:社による「調査結果を踏まえた提言」も併せて紹介していく。
1. フィードバック面談を受けた4人に3人(約75%)が人事評価に納得
フィードバック面談を実施したグループと実施していないグループそれぞれについて、人事評価への納得度を確認したところ、有意差が見られた。具体的には、前者は約4人中3人が人事評価に納得している回答したのに対し、後者は約4人中2人となっている。この結果から、フィードバック面談の実施と人事評価の納得度には一定の相関性があると考えられる。
2. フィードバック面談のカギは「承認」と「未来に向けた対話」を伴う「前向き面談」
フィードバック面談において、評価者との間に生じたコミュニケーションについて確認したところ、人事評価に納得しているグループとそうでないグループに有意差が生じた。
特に有意差が顕著に見られた項目は、「プラス評価の根拠について詳細な説明があった(差分34.7%)」「日々の仕事ぶりに対するねぎらいの言葉を伝えられた(差分30.8%)」「今後の成長課題について対話をした(差分23.5%)」「来期の目標設定について対話を行った(差分13.4%)」といった、「承認」「未来の対話」関するものだった。人事評価に納得している層は、面談が単なる「改善を求める場」ではなく「前向き面談」ともいうべきポジティブな場として機能していると推察される。
3. 人事評価に納得している層は、3人に2人(約66%)が日常的に上司・部下間で評価を確認
調査対象者が機会を提供されている評価方法について有無を聞き、評価の納得度別に集計したところ評価の頻度と人事評価の納得度に相関性が見られた。特に、差分が顕著であったのは、「日々のコミュニケーション(差分38%)」「1on1ミーティング(差分11%)」であり、人事評価に納得しているグループは、日常的に上司と評価認識をすり合わせる機会を設けていると推察される。
4. 「日常評価」×「前向き面談」の両立グループにおける評価満足度は約9割を超える結果に
「日常的な評価コミュニケーション」と「前向き面談」の両方を実施しているグループにおける人事評価への納得度を集計した所、納得している層は約9割を超える結果となった。定期的に評価の認識合わせを行った上で、「前向き面談」とも呼ぶべき人事評価のツボを押さえたフィードバック面談を行う事によって、人事評価の納得感が大きく高まる事が推察される。
調査結果を踏まえた提言
■1. 評価材料を収集できる仕組みの整備
調査レポートの結果の通り、プラス・マイナスの評価を問わず、その根拠を明確に伝えることは、被評価者の満足度を高める上で、非常に有用だ。
一方で、部下の方々の一挙一投足に目を配り続けるのは現実的ではない。具体的には、1on1ミーティングにおける対話の内容について、上司・部下が相互に共通認識を持てる形でメモを残す事から取り組む事を推奨する。
■2. フィードバックや評価の頻度の増加
米国では、「パフォーマンス・マネジメント」や「リアルタイムフィードバック」と呼ばれる仕組みが主流になりつつある。この仕組は、日本の主流である1年もしくは半期に1回の評価を廃止し、1on1ミーティングやピアボーナス制度を導入することで、いつでも従業員がフィードバックや評価を受けられる仕組みを取り入れることで、評価者と被評価者の評価認識のギャップを埋めようとするものだ。
多くの日本企業では、評価制度の仕組み自体をドラスティックに変更することは難しいかもしれない。なので、日々のコミュニケーションや1on1ミーティングの中で定期的に「このまま行くとC評価になりそう」「A評価に向けてどの様な取り組みが必要か」といった対話から始めることを推奨する。
■3. 評価者教育の実施
今回の調査でわかったことは、人事評価に納得しているグループとそうでないグループの間では、面談内容に明確な差分があったこと。踏み込んだ解釈をすれば、上司の評価およびフィードバックのスキルには、相当のブレがあることが推察される。
フィードバック面談は1回あたり30分から60分程度の時間を要するのが一般的だが、その精度によって、従業員の士気が大きく変化するのであれば、時間と教育投資を行うことで、大きなリターンが期待できる。経営・人事・管理職が一体となって、「自社の評価基準は何か」「フィードバック面談をどの手順で進めるのか」「面談時に押さえておくべきポイントは何か」についって共通認識を持つための、研修や理解度の調査を定期的に行うことを推奨する。
<調査概要>
名称:上司・部下の評価コミュニケーションの実態調査(2021年度)
手法:調査会社モニターによるインターネットリサーチ
時期:2021年9月20日~9月26日
対象:日本国内在住の25歳以上39歳以下の事務系・技術系職種の就業者330名
出典元:株式会社O:
https://o-inc.jp/
構成/こじへい