DIME MAGAZINE
「PC」や「BS」のように英語の頭文字を使った言葉は日本語でも頻繁に使われている。しかし、「Personal Computer：パソコン」や「Broadcasting Satellite：放送衛星」のように一般的な言葉であればまだしも、医療業界に縁がない場合「ME」が何かをすぐに言い当てられる人は少ないのではないだろうか。
MEとは「Medical Engineer」の略。医学と工学の専門知識を持つ医療機器のプロフェッショナルを指す。新型コロナウイルスの世界的流行によって、医療現場で人工呼吸器などを操作するMEの存在感も強まっている。
本記事では、MEの仕事内容や給料について解説するとともに、「ME」の略語を持つその他の言葉やその意味についても紹介する。
MEは臨床工学技士の略語、チーム医療を支える医療機器のプロフェッショナル
MEは「Medical Engineer」の頭文字を取った医療現場の専門職を指す略語だ。日本語では「臨床工学技士」といい、医療機関や医療機器メーカーに勤めて医療機器の操作・保守点検を行う。
臨床工学技士の国家試験合格者は2020年時点で累計4万8,273名と、現場で働く医師32万人や看護師121万人（ともに2018年時点）と比較しても少ない。一般の認知度は決して高いとは言えないが、最近は医療系のテレビドラマで臨床工学技士が描かれる機会も増えている。例えば、TBS系のドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』では、MER（移動型緊急救命室）チームの一員として臨床工学技士が登場。また、新型コロナウイルスにおける重篤患者の治療では、人工呼吸器を扱う臨床工学技士の存在が重要度を増している。
MEとCEの違いは？現在はCEだが昔の呼称が現在も定着
医療関係者の間では「ME」の呼称が浸透している臨床工学技士だが、日本臨床工学技士会では「Clinical Engineer」の英語表記が採用され、頭文字を取った「CE」が略称となっている。臨床工学技士をMEと呼ぶのは、1987年に「臨床工学技士（Clinical Engineer）」の国家資格が誕生するまで、医療機器のスペシャリストを「医用工学技士（Medical Engineer＝ME）」と呼んでいたため。長年の習慣から医療現場では現在もMEの呼称が定着しているが、MEとCEに明確な違いはなく、どちらも臨床工学技士を表す略語だ。
臨床工学技士（CE、ME）の仕事内容
臨床工学技士の仕事は、主に医療施設（透析室、手術室、ICUなど）において、医師・看護師や各種の医療技術者とチームを組んで生命維持管理装置（人工呼吸器、血液浄化装置、人工心肺装置など）の操作を担当すること。また、各種の医療機器がいつでも正常に動作するよう保守・点検を行うことも重要な業務となっている。多くの病院には「ME室」と呼ばれる専門部署が設けられており、配属された臨床工学技士は、他の部署や診療科と連携してチーム医療を行う。
臨床工学技士（CE、ME）の給料・年収
臨床工学技士の平均年収はおよそ430万円ほどと言われる。求人サイトに掲載される臨床工学技士の求人では、年収400万円台から500万円台がボリュームゾーンだ。
臨床工学技士の就職先は主に病院と医療機器メーカーだが、給与水準は医療機器メーカーのほうが高めの傾向にある。また、病院によっても待遇が異なり「基本給」「キャリアアップのスピード」「夜勤手当、住宅手当など各種手当の種類と額」は病院ごとの差が大きい。
「ME」の略語を持つその他の言葉
英語の頭文字を取った略語は覚えやすく便利な反面、複数の言葉が同じ略語で表記されるため、場合によっては混同してしまう恐れがある。臨床工学技士以外の「ME」もあわせてチェックしておこう。
知っているとパソコン通になれる？IT用語の「Windows ME」
IT分野で「ME」という略語が登場した場合は、Windows ME（ウィンドウズミー）を指している場合がある。2000年にマイクロソフトが発売した家庭向けパソコンのOSで、正式名称はWindows Millennium Edition（ウィンドウズ・ミレニアム・エディション）、略称で「ウィンミー」と呼ぶ場合もある。同時期にはビジネス利用を想定したWindows 2000も発売。また、Windows MEの一世代前にはWindows98、一世代後にはWindows XPが発売されており、これらのバージョンのほうが聞き覚えがある人も多いだろう。
化学用語の「Me」はメチル基を表す略号
化学や薬学の分野で「Me」の表記がある場合は、メチル基と呼ばれる原子の集合体（原子団）を指すことが多い。メチル基とは、メタンから水素原子1個を除いて生じるもっとも分子量の小さい置換基（水素原子に換わる原子または原子団）。化学式では「-CH3」と書く。メチル基は高校の化学にも登場するが、日常的に接する機会がない場合は「化学方面の用語だ」という見当がつけば、さしあたって混同する可能性は少ないはずだ。
文／oki
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