仕事を進めるには、人とのコミュニケーションが欠かせない。けれど、なかなか自分の思うようにならない相手もいる。そんなとき役立つ方法の一つに、「ソーシャルスタイル理論」という理論を利用する方法がある。
これは米国で生まれた理論で、人を「アナリティカル」「ドライビング」「エミアブル」「エクスプレッシブ」のスタイルに分け、それぞれのスタイルを知ることで、コミュニケーションを円滑にする方法だ。
本記事では、ソーシャルスタイル理論の概要や自己診断方法、特に「エクスプレッシブ」についての基本的特徴と共に、人付き合いの方法、テレワーク下やアフターコロナではどのようなアクションを起こすべきかを、リクルートマネジメントソリューションズの松木知徳氏に解説してもらう。
ソーシャルスタイルの自己診断方法
ソーシャルスタイルとは、1970年代に米国のデイビッド・メリル博士らが提唱をした理論で、世界中のビジネスに応用されてきた。ソーシャルスタイル理論とは「人の性格が、ある特徴的な行動に表れる」というもので、言動のくせなどの行動傾向を見ることで、相手にとって心地よいコミュニケーション方法を把握し、対策を示したもの。
自身がどのタイプか、コミュニケーションのくせを知ることは対人スキルを高めるうえでとても有効だ。
ソーシャルスタイル理論では「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」の二つの観点から「ドライビング」「アナリティカル」「エミアブル」「エクスプレッシブ」の4スタイルに分類している。
【取材協力】
松木 知徳氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
コンサルティング部 シニアコンサルタント
2007年、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ入社。コンサルタントとして企業の人材開発・組織開発に従事し、数々の表彰を受ける。テクノロジーや科学的な理論をもとにした科学的な営業組織づくりの支援や従業員のモチベーションの要因を研究し、新サービスの開発、メディアでの執筆活動や企業での講演などを多く行っている。 人工知能を使ったコールセンター装置・プログラムに関する特許を取得。博士(工学)。SBI大学院大学非常勤講師。尚美学園大学非常勤講師。
ソーシャルスタイル理論を活用するには、まず自分がどのスタイルなのかを知り、その後で、相手のスタイルを知ることから始まるという。
「このソーシャルスタイル判別ための図で自己診断してみましょう。チェック欄も参考にしながら、自身にもっともあてはまるスタイルを探してみましょう。なお、各スタイルには優劣はなく、どのタイプでも活躍している人がいます」
【ソーシャルスタイル判別】
リクルートマネジメントソリューションズ提供
エクスプレッシブの特徴
今回は、4スタイルのうち、「エクスプレッシブ」について取り上げる。
エクスプレッシブは、一言で言えば「直感型」。感情を表し、自分の意見を主張する傾向にある。
・人と話すのが好き
・喜怒哀楽を表に出す
・オープンな性格
・前向きでエネルギッシュ
・明るくて楽観的
・人を巻き込むのが得意
とにかく明るく元気で、知らぬ間に周りの人たちを巻き込んでしまう。そんなタイプなら、エクスプレッシブの傾向があるかもしれない。
エクスプレッシブ向けアドバイス
エクスプレッシブには、どのような行動が向いているだろうか? 松木氏に人間関係、部下との接し方、テレワーク下で活躍する方法、アフターコロナにおける行動をアドバイスしてもらった。
1.エクスプレッシブに向く人間関係の築き方
「エクスプレッシブが人間関係をスムーズにするには、これらの3つを意識するのがおすすめです」
・自分の行動を抑える
・相手の意見を取り入れる
・落ち着いた行動を心掛ける
2.エクスプレッシブに向く部下との接し方
「上司であるあなた自身がエクスプレッシブの場合、部下と接するとき、一方的に話をしてしまうケースも多く、盛り上がると論点も拡散してしまうケースがあります。特に、部下が相談に来ている場合などは、自身が話をしたい気持ちを抑えて、まずは部下が解決したい内容にしぼって会話することを意識していくことが必要です」
3.テレワーク下における活躍方法・自分を最大限に活かす方法
「テレワークにおいては、オンライン会議などの場面で自身がしゃべり倒して場を占有してしまいがちです。『他のメンバーの意見を引き出していく』ようにすると、組織の中でとてもよい関係性を築けるようになるでしょう」
4.アフターコロナではどのようなアクションを起こすべきか
「エクスプレッシブの人の中には、対面で話すのに比べてオンラインでのコミュニケーションに物足りなさを感じる人がいるかもしれません。しかし、オンラインでのコミュニケーションが普及してきたことによって、工夫によっては、物理的な距離に関係なく多くの人とのつながり、会話するチャンスが広がったとも言えます。強みを活かして自身のネットワークを広げてはいかがでしょうか?」
ソーシャルスタイル理論の注意点
松木氏は、ソーシャルスタイル理論を活用する際には、注意したいこともあるという。
「ソーシャルスタイル理論は、様々な活動の中で応用をすることができるため、意識をしながら活動を続けることで相手を知り、自身をコントロールする力(対人対応力)を磨くことができます。この理論は自身と異なるタイプの人とも円滑にコミュニケーションをとるうえで役立ちます。
しかし、コミュニケーションにとって重要なのは、4つのスタイルに分類できることよりも、むしろ『相手の立場に立って気遣いができること』です。テレワークでのコミュニケーションが普及する中、相手の表情や声色もリアルでの対面と比べて分かりづらく、難易度が増す場面もあります。それだけに、相手に意識を向けて接することができるビジネスパーソンは今後ますます重宝されるはずです」
人間関係に困ったら、ソーシャルスタイル理論を人付き合いや仕事の進め方に活かしてみてはいかがだろうか。本記事で紹介しなかったアナリティカル、ドライビング、エミアブルの特徴やアドバイスについては、それぞれ別記事で紹介しているので、ぜひ自分のスタイルをチェックしてほしい。
【参考】
ソーシャル・スタイルを活用した対人スキル向上研修 | ソーシャル・スタイルトレーニング
取材・文/石原亜香利