【連載】もしもAIがいてくれたら
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第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第21回:「鬼滅の刃」の主題歌『紅蓮華』をAIで解析した結果
『紅蓮華』の分析が大反響
10月10日に「鬼滅の刃 無限列車編」の第1話が放送されました。少年ジャンプの原作コミックにもなかった煉獄杏寿郎についてのエピソードが盛り込まれていたり、日輪刀を扱う際の所作の美しさなども丁寧に描かれていました。劇場版「無限列車編」や原作コミックを知っている人以外にはネタバレになってしまうのでこれ以上は書けませんが、完璧な人柄も強調されており、初回から切なかったです。
前回は、「紅蓮華」の歌詞を解析しましたが、煉獄杏寿郎を見ていたら、やはり劇場版「無限列車編」の主題歌になった「炎」も解析してみたくなりました。前回同様、単語と感性の結びつきを学習させたAIを使って、色で可視化してみます(以下の図は、感性AI株式会社提供)。
このAIは、人が色をイメージしやすい単語(例えば、情熱なら
冒頭の、「さよなら ありがとう」から「ぬくもりと痛みに間に合うように」までのフレーズを解析するとこのようになりました。
ぬくもりと少し悲しみの色も感じられる優しいフレーズであることがわかります。
「このまま続くと思っていた」から「胸の奥に熱いのに」のフレーズを解析するとこのようになりました。
「光」や「熱い」といった言葉はあるのに、雰囲気としては悲しい感じだからでしょうか。急に寒色系の色に切り替わります。
そして、「僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い」から「決意を餞に」までのフレーズはこのようになりました。
「燃え盛る」や「君を想う」「強くなりたい」「決意」といった強い気持ちが表れているパートであることがわかります。
解析結果全体を通して気づいたことは、やはり、温かさ、優しさ、悲しみ、強さが折り重なったアニメであることが曲にも表現されているのではないかということです。そして、「炎」の歌詞には、煉獄杏寿郎のキャラクターもよく表現されていると思いました。AIによる解析結果についての感想は、私自身の主観なのですが、煉獄杏寿郎の着物や髪の色とも似ている!とさえ思い、個人的に満足な結果でした。
2週連続で歌詞の分析で鬼滅の刃にアプローチしてみましたが、面白かったので、歌詞以外でも何かやってみたいと思いました。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。