【連載】もしもAIがいてくれたら
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第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第20回:眞子さまと小室圭さんの結婚をきっかけにふと考えた「AIは婚活アプリにどこまで活用できるのか?」
「鬼滅の刃」はなぜ心を揺さぶるのだろう?
大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の新シリーズが12月にテレビ放送開始しますね。
私は、少年ジャンプで最終回まで読み切っていて、毎週土曜日23時30分にTOKYO MXで放送されていた 2019年4月から観ていました!
最初は、とても怖い顔をした鬼による残虐な殺人シーンのある「怖いアニメ」という印象が強かったのですが、鬼と人の何とも言えない切なさや哀しさに心を打たれるようになりました。悪役のはずの鬼の哀しみが印象に残ります。主人公の竈門炭治郎をはじめとする剣士達が強くてかっこいいのは、よくあるアニメの設定なのですが、各自のキャラがとても立っています。そして、人を襲わないように竹をくわえているという可愛い設定で、鬼になってしまった禰豆子ちゃんの可愛さが倍増しています。
なぜこのアニメがこんなに人気になったのか、様々な見解はあるかと思いますが、正解不正解があるものではないと思いますので、あくまでも一鬼滅ファンの私個人の見解を書かせていただきます。
ストーリー、キャラクターの姿や声など、様々な感性的要因が影響を与えている作品を分析するのは、AIでもとても難しいのですが、何かしてみたくなったので、ここでは、テレビ放送が開始された時からの主題歌「紅蓮華」の歌詞を分析してみることにしました。
「紅蓮華」の歌詞は、色でいうと”鮮やか”
このAIは単語と感性の結びつきを学習させたものですが、今回は色で可視化することができるようにしたものを使ってみました。色には温かい感じ、冷たい感じといった感性が結びつくことが以前から知られているので、例えば、情熱といえば、熱い感じだから色にすれば赤の確率が高い、といった具合です。
歌詞にアニメのすべてが反映されているわけではないとは思いますが、テレビで観始めた時、この主題歌がアニメの世界観をとてもよく表現しているように感じました。言葉では説明できない、強さ、哀しさ、切なさ、華やかさがあるような気がします。オープニングの紅蓮華だけでなく、エンディングの歌も大好きですが、ここでは大ヒットしたオープニングの紅蓮華の歌詞を、私が起業した会社のAIを使って分析してみました(以下の図は感性AI株式会社提供)。
冒頭の、「強くなれる理由を知った 僕を連れて進め」という力強いフレーズは、色で可視化するとこのようになりました。
やはり、強くて、悲しく、重厚な印象なのでしょうか。偶然にも、
そして、「泥だらけの走馬灯に酔う こわばる心」で始まるフレーズは次のようになりました。
こんなに様々な色が出てくるのは珍しいように思いました。哀しさ、切なさ、可愛さも織り交ざった印象です。
最後に、「どうしたって!消せない夢も止まれない今も」から「紅蓮の華よ咲き誇れ!運命を照らして」というフレーズは、次のようになりました。
可愛さと華やかさが満載です。
一つの曲の感性的印象が、こんなに様々な色合いで表現されるのは珍しいのではないかと思いました。
主題歌のイメージと物語のイメージの相乗効果が、アニメに強烈なインパクトを与えていたのではないかとあらためて思いました。アニメそのものの分析はできていないのですが、私自身の主観的な印象とAIによる分析結果が一致して、個人的には満足です。少年ジャンプで最後まで読んでしまっているので、ストーリーはわかっているのですが、12月から始まる新シリーズで、このアニメの世界観がどのように表現されるか、楽しみにしています。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。