市場規模が小さいながらも、世界でのシェアを獲得しているGNT企業。しかし、技術力だけでは海外の市場を開拓することは難しい。では、どのような戦略で現在のシェアまで上り詰めたのか? 2つの企業に直撃取材した。
トップシェアであり続けるため安定した品質と納入を死守
航空宇宙事業本部 瀧川智子さん
中堅・中小企業が多く選定されたGNT企業100選にあって、一部の大企業も選ばれている。そのうちの1社が日機装である。
同社が製造するカスケードは、ボーイングをはじめ、現在飛行する民間飛行機のほぼすべてに採用されている。カスケードはジェットエンジン1基につき10〜16枚ほど使われており、これまで60万枚以上製造してきた。
カスケードの開発は、1981年に始まった炭素繊維の開発に端を発している。83年にカスケードの開発に成功し、84年に顧客の認証を取得して出荷が始まった。
「エアバス機に初めて採用され、その後間を空けずボーイング機にも採用されました。安心・安全が求められる航空機業界は実績の世界。一度実績ができると継続して受注しやすくなります」
圧倒的なシェアを獲得できた理由をこう分析するのは航空宇宙事業本部の瀧川智子さん。とはいえ、受注を獲り続けるのは大変なこと。
「品質の維持と安定した納入には神経を使っています。私たちは『できない』とは言いません」
トップシェアにあぐらをかくことなく、新製法の提案なども行なうという。謙虚な姿勢でモノづくりに取り組んできたことが、現在の圧倒的なシェアにつながった。
【GNTCo. FILE 02】日機装株式会社
シェア95%
本社所在地/東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー22階
電話/03・3443・3711
創業/1953年
代表取締役社長/甲斐敏彦
●GNT選定商材
『CFRP製カスケード』
着陸時に制御力を高めるために、ジェット気流の逆噴射を行なう際の逆噴射気流を制御する装置。開発では軽さと耐久性が重視された。
飛行中は前から後ろに噴射している気流を、着陸時は「ブロッカードア」がせき止め、「カスケード」が逆方向へ噴き出すように誘導する。
取材・文/大沢裕司