コロナ禍でも事業拡大や新ブランドの立ち上げによって売り上げを伸ばしている企業がある。その中でも本業とは異なる分野に進出し結果を出している企業にはどういった戦略があったのか。「異業種参入」をキーワードにビジネスのヒントを読み解く。
売上高は居酒屋の2倍以上!?コロナ禍を逆手にとる居酒屋の新ビジネス
テークアウトに強みを持つ〝新ブランド〟を設立
2020年、外食産業は激動の1年だった。一般社団法人日本フードサービス協会が公表する「外食産業市場動向調査」によると、昨年の居酒屋業態は前年比売上高52.3%と甚大な影響を受けた。
一方で、テークアウトやデリバリー需要に応えることのできたファストフード業態は前年比売上高96.3%と堅調な数字をたたき出した。こうしたデータにいち早く反応できた企業はすでに〝次の一手〟を打ち始めている。
今年8月、居酒屋『鳥貴族』ブランドを全国に展開する鳥貴族HDは新ブランドのファーストフード店『TORIKI BURGER』をオープンした。鳥貴族HDの広報担当者が言う。
「将来的な鳥貴族の国内飽和を見据えて、数年前より新業態の構想はありました。しかしコロナ禍により第2の柱の必要性を再認識し、当初の計画を前倒しして新ブランドの立ち上げに至りました。『TORIKI BURGER』では年商2億円を計画しており、目下のところ順調に推移しています」
平時は『鳥貴族』の1店舗当たりの平均年商は7000万〜8000万円だというから実に2倍以上。
全くの新業界に挑戦した居酒屋もある。埼玉県内に『もつ焼きエビちゃん』をはじめ7店舗を運営するフジックスが目を付けたのは〝生食パン〟だった。今年6月、同社初の生食パン専門店『埼玉縁結』を埼玉県内に出店。
「これまでは1年に一店舗居酒屋を開店してきましたが、今年はコロナ禍でも利益の出せる業態としてテークアウトの生食パン専門店を選びました。コロナ前の居酒屋だと新規開店をしても初月600万円の売り上げを出せれば御の字のところ、生食パン専門店では初月900万円でした」(フジックス・藤田大志社長)
TORIKI BURGER人気BEST3
〈No.1〉トリキバーガー 390円
〝鳥貴族=チキン〟のイメージをストレートに表現した看板商品。しっかりした味の付いたチキンとサクサクカリカリの衣が絶品。
〈No.2〉焼鳥バーガー〜てりやき~ 390円
分厚いもも肉を甘辛いソースと絡めてオーブンで焼いている。てりやきの香りが食欲をそそる。
〈No.3〉つくねチーズバーガー 390円
ありそうでなかった〝つくね〟を主役にしたハンバーガー。バーガーでも軟骨のコリコリ感は健在。
TORIKI BURGER 大井町店
『TORIKI BURGER』1号店は東京・大井町に店を構えている。テークアウト利用客が7割を占めている。「チキンを生かしたチキンバーガー専門店の市場は国内外問わず市場拡大の可能性があると考えています」(鳥貴族HD広報)
住所:東京都品川区東大井5丁目16番9号
電話:03・6260・0906
営業時間:7:00~21:00
休日:12月31日、1月1日
埼玉縁結
『極milk-キワミルク-』972円
一番人気の『極milk-キワミルク-』は水を使わず埼玉県産の牛乳〝うしのちち〟を100%使用。濃厚な味わいが特徴。
埼玉縁結
住所:埼玉県さいたま市北区東大成町1丁目642孔文堂ビル1階
電話:048・788・3885
営業時間:11:00~19:00
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※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2021年9月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
取材・文/峯 亮佑