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『当方』は、主にビジネスシーンで多く使われる一人称の一つです。よく使う心当たりのある人は、その使い方が正しいかどうかチェックしてみましょう。『当方』の意味や正しい使い方、さらには同義語や使うときの注意点について紹介します。
「当方」の意味・読み方とは
当方は、主にビジネスシーンで使用する言葉です。『当』の字から「自分を指す言葉だろう」と判断できますが、正しい意味を知らずに使っている人も散見されます。
正しい意味や読み方・使用する際の注意点について見ていきましょう。
意味と読み方
当方(とうほう)は、『自分の方』『こちら』をより丁寧に言い換えた言葉です。仕事の場で使われることが多い言葉で、自分が所属する組織について言いたいとき「当方としては…」などと使います。
しかし、当方には謙遜・へりくだりの意味は含まれておらず、使い過ぎると軽い印象を与えてしまいます。正式な場・重要な契約で使うのは不適切とされるため、TPOをわきまえて使いましょう。
当方を使ってよいのは、実務的な話し合いや交渉シーンなどです。会社の代表としてではなく担当者同士としてやり取りする場面ならば、失礼には当たりません。
個人の一人称では使わない
当方は『自分の方』『こちら』という意味を持ちながらも、その人個人を指すのではなく、組織や団体の一員としての個人を指します。
そのため、当方を自分の意味で使うのは適切ではありません。誤って使用した場合、一個人の考え・意見を述べたつもりでも、組織・団体の意見として取られてしまう恐れがあるため注意が必要です。
その人個人を指す一人称には、『小職(しょうしょく)』『弊方(へいほう)』などがあります。ただし、目上の人に使えなかったり難読だったりと、使い勝手のよい言葉ではありません。
ビジネスシーンで個人の意見を言うときは、『私』を使った方が余計な誤解を招かずに済むでしょう。
ビジネスシーンでの使い方・言い換え
社外の相手とやり取りする場合、当方はとても重宝する言葉です。実際にどのような使い方をするのか、例文を紹介します。
メールで使う際の例文
自社や所属部署を代表して相手に何かを言う場合、当方を使うことで、総意であることを示せます。例えば、メールで予定を伝えたり質問に答えたりするときは、以下のような例文が考えられます。
- ○月○日の顔合わせについて、当方からは△△が参加いたします。
- 当方としましては、ご提案いただいた条件で問題ございません。
当方は『自社』『自分の組織』を指すものの、実際に誰を指すのかはあいまいです。そのため、責任の所在をあまり明確にしたくないときや、担当が決まっていない件で問い合わせがあったときなどに重宝します。
- 会場でのトラブルについて、当方は一切の責任を負いかねます。
- 当方の職員が現在状況を確認中です。
また、他社と共同で事業を行っている場合、その事業に関しては他社も『当方』に含まれます。第三者から問い合わせがあった場合は、担当が誰であれ「当方の担当が…」と伝えましょう。
言い換える場合
当方は主語としては抽象的で、正式な場や社内で使うのは好ましくありません。状況に合わせて、適切な言葉に言い換えましょう。
- 弊社
- 私ども
- 我が社
- 当社
『弊社・私ども』は、自分の所属する会社について、へりくだって使う言葉です。言葉自体に謙遜の意味があり、取引先や顧客に対して使うのにふさわしいとされています。
一方、『我が社・当社』にはへりくだりの意味はありません。どちらも自分の所属する会社について言う言葉で、主に社内の人間を相手に使われます。
当方・弊社・当社の使い分けで悩んだ場合、以下のように覚えておくと良いでしょう。
- 自分よりも目上の社外の人に対して:弊社
- ヘりくだる必要のない社外の人に対して:当方
- へりくだる必要のない社内の人に対して:当社
「当社」「弊社」「自社」「我が社」自分の会社の適切な言い方とは?
反対(相手方)の表現方法
当方の対義語は『先方(せんぽう)』です。相手の属する組織・担当などを指す言葉で、主に自社内でのみ使います。取引先や第三者に『先方は』と使っても意味が通らないので避けましょう。
例えば、『先方』は以下のように使います。
- 先方にはこのように伝えています。
- ○月○日に先方と話し合う予定です。
先方は当方と同様に、誰を指すのかがあいまいです。『相手方』のような漠然とした意味なので、担当者が分からないときや、わざわざ相手の属性について言う必要がない場合に適しています。
なお、『先方(さきがた)』と読むと『さっき・先ほど』という意味になります。意味が全く異なるため、読み方には注意しましょう。
「当方」を使う際のポイント
当方は『私たち』『我々』と言いたいときに置き換えられる、便利な言葉です。現在多用している自覚のある人は、正しい使い方ができているかどうか今一度確認しましょう。
自社内では用いらない
先ほども説明しましたが、当方は基本的に社外の人・組織に対して使う言葉です。同じ会社の人に向かって「当方は…」と使うのは好ましくありません。
自社内で『私たち』『我々』と言う必要があるときは、「我が社では」「当社・課・部では」「こちらとしては」などを使いましょう。
例えば、社内会議で所属部署の代表として意見を述べる場合は、「当社の方針については、先方にご理解をいただいています」「当部としては、賛同いたしかねます」などの言い方が適しています。
男女どちらが使ってもOK
当方には性別の区別がありません。男性・女性の隔たりなく、さまざまな人がビジネスシーンで使える、汎用性の高い言葉であるといえます。
ビジネスシーンで使われる改まった言葉には、女性が使うのに適さない言葉がいくつかあります。
例えば、『小生』は『私』を表わすへりくだった一人称ですが、男性のみが使用できます。女性が使用するのは誤用と考えられているため注意しましょう。
構成/編集部