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関税とは、海外から商品を輸入する際にかかる税金のことをいいます。個人用・商用に関わらず、基準以上の輸入を行う場合には関税の支払いが必要です。関税についての基本的な知識や仕組みを分かりやすく紹介します。
関税とは
海外から輸入された商品には、『関税』と呼ばれる税金がかかります。関税とはどのような仕組みで成り立っており、いつ発生するものなのでしょうか。
輸入品に課される税金
海外から商品を輸入する際にかかる税金のことを『関税』といいます。商品を輸入する本人や輸入業者が、輸入する国の税関に納める決まりです。
例えば、日本の業者がアメリカから鶏肉を輸入した場合、その業者が関税を支払うのは日本の税関になります。支払われた関税は日本の税収となり、さまざまな公共の場で国のために使われるという仕組みです。
関税の歴史は、古代における都市国家の手数料が始まりといわれています。内国関税、国境関税と形を変えて、現在の仕組みが成り立っています。
関税が発生するタイミング
ある貨物が海外から輸入され、日本に到着したとします。この段階において、到着した貨物は、まだ日本への輸入許可を得ることができていません。
輸入許可を得ていない貨物は、通関手続きと関税の支払いが行われるまで、保税地域と呼ばれる場所に保管されます。
通関手続きが完了し関税や消費税など必要な支払いが済むと、輸入許可書が発行されます。そこではじめて保税地域から貨物を引き取ることができるのです。
つまり、関税が発生するタイミングは、貨物が保税地域から引き取られるときと考えてよいでしょう。
関税が存在する理由
関税が存在する理由は主に二つあります。一つは『国内産業を保護するため』、もう一つは『国の財源を確保するため』です。
輸入品のコストを上げ国内産業を保護する
関税が存在する一つめの理由は、国内産業を保護するためです。
一般的に、国内で生産されたものは海外で生産されたものよりも高くなる傾向があります。消費者の立場から考えると安価な方が助かりますが、皆が海外生産されたものばかりを購入してしまっては、国内の生産者たちは生活に困ってしまいます。
国内産業を守るためには、関税をかけ、輸入品のコストを上げる必要があるのです。国産品と輸入商品の価格の差が大きくなればなるほど、国内産の商品は売れにくくなってしまうでしょう。
国の財源の確保
関税で得たお金は、国のために使われる財源になります。ほかの税金と同様に、関税は国庫収入となるということです。
近年では、国家間における経済交流も活発になり、関税以外の徴収構造も整ってきています。厳しい財政事情の中で関税を適正に確保するのは重要なことですが、現在の日本において、関税による財源の確保という役割は小さくなっています。
発展途上国では、関税率を高く設定することで、国の財政の一部を関税収入でまかなっている例もあります。
関税の種類は大きく分けて2種
関税の種類は、大きく分けて『保護関税』と『財政関税』の2種類です。『保護関税』は産業保護を目的としており、『財政関税』は税収入を目的としています。
産業保護を目的とする『保護関税』
『保護関税』とは、国内産業の保護を目的とした関税のことをいいます。
輸入品の市場価格を引き上げるために高率の関税をかけ、国内市場における国産商品を保護しようとするものです。
しかし、関税率を引き上げすぎることで、該当する品目の輸入が止まってしまう可能性もあります。国内における供給が不十分になる可能性もあるということです。
そのため、収穫できる期間が限られる作物などは、収穫期のみ関税率を引き上げるなどの工夫がされています。それ以外の時期は関税率を引き下げることで輸入量を調整し、バランスをとっているのです。
税収入を目的とする『財政関税』
『財政関税』とは、『歳入関税』『収入関税』ともいわれ、財政収入を主な目的とした関税です。
例えば、ブランド物の時計や鞄など、保護を考慮する必要のない贅沢品や、国内で生産されない物品に対してかけられます。
関税制度が導入された当初は財政収入が主な目的でしたが、現代の先進国においては、産業保護を目的とする考えが一般的です。
関税率の低下やほかの税収の増加に伴い、日本における関税収入の割合は年々低下しています。しかし発展途上国の中には、関税収入の割合が高い国が多く存在しているのが現状です。
関税率の基本
関税率は国ごとに、その設定方法が異なります。日本では『商用』か『個人用』かで関税が異なるため、計算方法に注意しましょう。
国ごとに関税率は異なる
関税は自国保護を目的としており、関税率は国ごと異なり、それぞれの国が独自に決めているものです。しかし、場合によって政治的な理由により国家間で関税変動が起こる場合もあります。
日本の関税制度は、WTO(世界貿易機関)加盟国との共通ルールに従ったものです。
アメリカでは、従価税と従量税、その二つを併用する混合税が品目ごとに定められています。税率は、輸入価格と輸入量を基準に設定され、日本からの輸入については一般税率(1回で輸入する貨物の合計課税価格が、20万円を超える場合に用いる関税率)が使用されます。
中国では、価格に比例する従価税が用いられています。日本からの輸入品については、最恵国税率(WHO加盟国に対し一定率以上の関税を課さない約束している関税率)が使用されます。
参考:EPA/FTA 経済連携協定/自由貿易協定|経済産業省
日本は商用か個人用かで関税が異なる
日本では、輸入品の使用目的が『商用』か『個人用』かにおいても関税が異なります。個人用(個人輸入)では優遇措置がありますが、商用(商用輸入)にはありません。
まず『商用輸入』とは、日本に配送後、第三者に販売を目的とした輸入のことです。以下の計算式で計算できます。
- (卸売価格+送料+保険+その他経費)×関税率=課税額
一方『個人輸入』とは、個人での使用を目的とした輸入のことです。計算式が商用輸入とは異なります。
- (海外の小売り価格×60%)×関税率=課税額
例えば、5万円の商品に、送料・保険・その他経費が2000円、関税率が10%の場合、
- 商用:(5万円+2000円)×10%=7000円
- 個人用:(5万円×60%)×10%=3000円
となります。価格の設定が少額のため大きな差は感じないかもしれませんが、仕入金額が何十万、何百万と上がれば、かなり大きな差になるのです。
例では、関税率10%として計算していますが、商品により関税率は異なり、関税がかからないものもあります。詳しくは、財務省の公式サイトに掲載の『実行関税率表』で確認しましょう。
また、一般貨物で課税価格の合計額が20万円以下の場合は『簡易税率』が適用されるほか、個人輸入の場合、価格が1万円以下の場合は、原則として、関税・消費税及び地方消費税は免除されます。
輸入統計品目表(実行関税率表):税関 Japan Customs
1001 総額20万円以下の貨物の簡易税率(一般輸入貨物、国際郵便物)(カスタムスアンサー):税関 Japan Customs
参考:個人通関ー海外通販などに関する手続きやその流れー|税関
商用輸入と個人輸入の違い
商用輸入は、輸入した商品を国内で販売し利益を出すことが目的です。たとえ少量の輸入であったとしても法規制に従わなくてはなりません。
輸入した商品は不特定多数の消費者へ販売されます。そのため、消費者の安全確保が最優先です。商品によっては、輸入時に法規制に基づく手続きが必要な場合もあります。
一方、個人輸入は、輸入した本人が自己使用することが目的とされています。そのため、個人輸入したものを不特定多数の人へ配布したり、第三者に販売したりすることはできません。
間違えやすい例として、友だちと共同購入で輸入した場合や友だちの代わりに輸入した場合が挙げられます。これらは個人使用目的と認められないため注意が必要です。あくまでも、個人輸入は輸入する本人が使用することが前提となります。