外国から物品を輸入する際に課される税金、「関税」。最近では、海外製の服やスニーカーなどを気軽に輸入できるようになったことから、企業だけでなく個人にとっても身近な制度になりつつある。
本記事では、関税の意味と仕組みに加えて、目的によって分類される「財政関税」と「保護関税」のそれぞれの違いについてもわかりやすく解説する。関税の仕組みを理解すれば、日々のニュースがより面白くなるはずだ。
そもそも関税とは?
はじめに、関税の意味と目的について解説する。関税の種類についても併せて確認しておこう。
輸入品に課される税金のこと
関税とは、「輸入品に課される税」のこと。関税の歴史は古く、始まりは古代都市国家における手数料と言われている。ニュースで見聞きすることが多い「輸入関税」とは、輸入時に輸入国が課す関税のことを指す。これに対し「輸出関税」とは、輸出する際に輸出先の国が課すものだ。
なぜ関税が課される?
関税には、国内産業を保護して市場経済の混乱を防止する役割がある。海外からの安価な製品について、税金を課さずに輸入してしまうと、自国の製品が売れなくなり、国内産業が衰退してしまう。そこで、税金を課すことにより輸入品の値段を上げ、国内製品と価格の均衡を図ろうとするのが関税の主な目的だ。また、関税は国家の財源確保という側面も有するが、財政規模の大きい国にとっては重要性が低いとされる。
関税の種類
関税は、目的の違いによって「財政関税」と「保護関税」の2つに分類される。
・財政関税
財政関税は、税収入(国庫収入)を目的とした関税。一般的に、奢侈品(ぜいたく品)や国内で生産されないものなど、国内産業の保護を考慮しなくてよい物品に課される。
・保護関税
自国の産業保護を目的とするのが保護関税。安価な外国製品の競争率を低下させ、市場における国内製品とのバランスを図ろうとするもの。税率を引き上げすぎると、その品目の輸入が停止して供給不足となるおそれがあるため、政策的な側面が強く現れる。
今日では、先進国における関税のほとんどが保護関税となっている。
関税率の種類
関税率には、その国の法律に基づく「国定税率」と、外国との条約によって定められる「協定税率」が存在する。
国定税率
国定税率は、日本の法律によって定められる税率で、「関税定率法」と「関税暫定措置法」を根拠として運用されている。関税定率法は、事情に変更のない限り長期的に適用される基本的な税率(基本税率)を、関税暫定措置法は、一時的な事情がある場合に基本税率に代わり適用される暫定的な税率(暫定税率)を規定している。
協定税率(WTO譲許税率)
協定税率とは、条約に基づいて定められる関税率。WTO(世界貿易機関)協定により、WTO加盟国・地域に対して一定以上の税率を課さないことを約束(譲許)した税率で、「WTO譲許税率」とも呼ばれる。協定税率が国定税率より低い場合に、WTOの全加盟国・地域からの産品について等しく適用される。なお、協定税率の他にも、EPA(経済連携協定)を締結した国からの産品を対象とした税率も存在する。
関税を払うのは誰?計算方法は?
ここでは、関税の支払い義務者と計算方法を解説する。最近では、無料の関税計算ツールやウェブサイトなども多く存在するため活用したい。
原則として「輸入者」が支払う
関税は、基本的に輸入しようとする者が輸入国に対して支払うことになるが、貿易条件などによっては輸出者が支払う場合もある。また、輸出関税のある国では、輸出品についても、輸出者が輸出元の国に対して関税の支払い義務を負う。
関税の計算方法は?
関税は、基本的に物品の種類や性質、輸入元、用途などさまざまな要素をもとに決定されるが、原則的な計算方法は「課税対象額×関税率」となる。また、税額算定の基礎となる「課税標準」の定め方によって、関税率の形態がいくつか存在する。
・従価税
価格を課税標準とする、もっとも一般的な関税率の形態。物品の価格により関税額が変化するため、インフレに適応しやすいという点にメリットがある。
・従量税
従量税は、物品の数量や容積、重量などを基準として関税を課す形態。従価税とは異なり、物品の価格を考慮しないため、税額を算定しやすい。
・混合税
従価税と従量税を組み合わせた形態で、「従価・従量選択税」と「従価・従量併用税(複合税)」の2つが存在する。選択税は、従価税と従量税それぞれを定め、いずれか税額の高いもの(一部の品目は低いもの)が課される。複合税は、従価税と従量税を同時にかける仕組み。国内産業を保護するため、毛織物や乳製品など特定の物品について混合税が適用されている。
なお、これらの形態の他にも、物品や季節を考慮要素とする形態がいくつか存在する。
文/oki