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『さびしい』を変換する際に、『寂しい』と『淋しい』のどちらを選べばよいのか迷ったことはありませんか?使う漢字によってニュアンスが変わってくるため、違いを押さえて正しく使いましょう。使い分け方や具体的な例文も紹介します。
「寂しい」と「淋しい」の違い【意味】
『寂しい』も『淋しい』も『さびしい』または『さみしい』と読む言葉です。漢字によってどのような違いがあるのでしょうか?それぞれの詳しい意味を理解すると、何が異なるかが分かるはずです。
『さびしい』『さみしい』どちらで読めばよいのかも、併せて確認しましょう。
「寂しい」は物足りなさや静けさを表す
『寂しい』に使われる『寂』という字は、『静寂』という言葉に使用されるように『静まりかえっていて物悲しい様子』を表しています。
音がなく人の気配もしないような状況を想像してみると、心細さや孤独を感じるでしょう。『寂しい』の表記で表される『さびしい』には、静けさのニュアンスが含まれています。
また、仏教では人の死や煩悩を離れた涅槃(ねはん)を『寂』の字を用いて表現することも覚えておきましょう。
心が騒いでいる状態から解脱し迷いのない状態になることを『寂静(じゃくじょう)』と呼び、雑音がなく静まり返った様子を意味します。
「淋しい」は涙を流すような心細さを表す
『淋しい』の『淋』はさんずいが使用されていることから分かるように、水に関連する漢字です。水が流れ落ちる様子や水を注ぐ場面に用いられ、汗が滴る様子を『淋汗(りんかん)』と表現します。
漢字自体に『さびしい』『さみしい』というニュアンスは含まれていませんが、日本では『涙で枕を濡らす』『涙雨』など悲しみの表現として涙を用いる言い回しが多々あります。
ポツポツと落ちる水は流れる涙を連想させるため、転じて『涙が落ちるような心細さや悲しみ』を意味する言葉となったようです。
読みは「さびしい」「さみしい」どちら?
『寂しい』『淋しい』はどちらにも、『さびしい』と『さみしい』という2種類の読み方があります。『さびしい』が本来の読みで、口語の表現として『さみしい』に変化したという説が一般的です。
公式な場での発言や文章で平仮名を使うときは、常用漢字表の『寂』に記載がある『さびしい』を使った方が無難でしょう。
一方、現代の日常会話ではどちらを使用しても、ほとんどの場合は問題になりません。
ただ、心細さの原因となる状況を表す場合には『さびしい』、心情を訴える場合には『さみしい』と読む傾向があります。
参考:文化庁|国語施策・日本語教育|国語施策情報|常用漢字表の音訓索引
「寂しい」と「淋しい」の違い【使い分け】

(出典) pexels.com
『寂しい』と『淋しい』の表記には、漢字から来る意味だけでなく使用する場面にも違いがあります。それぞれが適したシーンを知って、使い分け方を学びましょう。
状況も含めて表すときは「寂しい」
音や人の気配がなく静まり返った状況があって物悲しさを感じるときは、『寂しい』を使うのが一般的です。
人通りの少ない商店街や誰もいない家にいるときなど、静けさの原因があって『さびしい』ときは『寂しい』の表記を使用しましょう。
ただし、『寂しい』は幅広い『さびしさ』に使える表現です。単に心情だけを表すときに使用しても問題ありません。
新聞をはじめとした公用文では、状況を含まない心細さにも常用漢字表にある『寂しい』を使っています。
心情に焦点を当てるなら「淋しい」
一方『淋しい』は、状況ではなく心情を表す表現として使用します。涙があふれてしまうような気持ちを表す際には『淋しい』が用いられることが多いでしょう。
恋人や親しい人に対して恋しい気持ちを伝える場合は、『淋しい』と表記すると感情が伝わりやすくなります。
『淋しい』は『寂しい』と違って、背景にある物悲しさの原因は表しません。表現するのは個人の感情そのもので、主観的な表現です。
たとえ賑やかな環境でも心細さや悲しさを感じるときは『淋しい』と表現できます。
「寂しい」「淋しい」の使い方と例文

(出典) pexels.com
『寂しい』と『淋しい』それぞれの表記が持つ微妙なニュアンスを使い分ければ、気持ちがより伝わる文章になります。迷ったときの選び方や例文を確認して、上手に使い分けましょう。
迷ったら常用漢字の「寂しい」
『寂しい』と『淋しい』の書き分けで悩んだときは、常用漢字表に記載のある『寂しい』を選ぶのが無難です。状況を含めた物悲しさと心情の表現、どちらにも使えます。
『淋しい(淋)』は常用漢字表に記載がないため、テレビや新聞といったメディアでは使用されません。ただし、作家が出版する書籍では情緒をより深く表現するために、あえて常用漢字ではない『淋しい』を使う場合もあります。
日常的なやり取りで送るメッセージやメールで、情緒を強調する必要があるシーンは少ないでしょう。幅広く使われる『寂しい』の表記を選んでおけば、場面と漢字の意味が食い違ってしまう心配がありません。
「寂しい」と「淋しい」の例文
『寂しい』と『淋しい』が持つニュアンスの違いを知るには、実際に例文を確認してみるのがおすすめです。
『寂しい』の表記を使った例文は以下の通りです。
- 夜の商店街はどこか寂しい
- ひとりぼっちの家のなんと寂しいことか
- 秋風を感じ、無性に寂しくなった
『寂しい』には静けさとともに、懐古的な気持ちや趣深さのニュアンスが含まれる場合もあります。悲観的な心情だけでなく、情景に対する感銘も同時に表せるのが特徴です。
心細い感情を強調したいときに『淋しい』を使う例には、以下のような使い方が挙げられます。
- もう長い間あなたに会えなくて、とても淋しい
- 母がいない幼少期はとても淋しいものだった
- 生涯独身のまま老後を迎えるとは、なんとも淋しい人生だ
『淋しい』は涙があふれるような悲しみや、心細さのニュアンスを含んでいます。誰かを求める恋しさや満たされない気持ちがより強く表現されます。