2021年の経営課題として「人材強化」「売り上げ拡大」の重視度が高まる
日本能率協会は経営全般ならびに経営機能別の課題の動向について調査した。今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2021年度の調査結果の第1弾として、毎年、経年調査を行っている経営全般ならびに経営機能別の課題について紹介しよう。
調査結果の全体を俯瞰すると、まさに感染拡大の第2波の最中に実施した昨年度の調査では、コロナ禍への緊急的な対応が課題認識にも大きく影響していたが、今年は、今後の成長を見据えた課題へとシフトしていることがうかがえる結果となっている。特に、以下の3点が、今回の経営課題調査から浮かび上がったポイントだ。
1点目は、「デジタル技術の活用」。
いまや、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」はビジネス用語として一般化しているが、企業経営における実装化へと課題認識が進んでいると捉えることができる。
例えば、営業・マーケティング領域の課題として、「ITを活用した効率的・効果的な営業活動」の比率が増加していること、研究・開発領域や5.生産領域において、「デジタル技術の活用」が上昇していること、あるいは「生産管理システムの改善・見直し」の比率が高まっていることは、各経営機能領域において、デジタル技術の活用が具体的に進められていることの証左と言える。
2点目は、「人材の強化」。
当面する経営全般における「現在」の課題として、「人材の強化」の比率が昨年よりも上昇し、また、「3年後」の課題としても、昨年に続いて第1位に挙げられている。さらに、組織・人事領域の課題においても、「人事制度の見直し」の重視度が高まっている。
コロナ禍を乗り越え、新たな成長を描くために、また、デジタル技術を活用し、DXによって事業構造の変革を実現していくためにも、その担い手となる人材の強化が不可欠となる。
これまでも日本企業においては、人材が重要視されてきましたが、経営戦略と一体として人材戦略を捉え直し、人事システムを再構築していくことが大きな課題だろう。
そして3点目は、「企業の社会性への対応」。
経営全般における「5年後」の課題において、このところ、「CSR、CSV、事業を通じた社会課題の解決」の比率が増加傾向にありましたが、今年は、大きく上昇して第2位となるまで上昇しています。また、6.購買・調達領域の課題では、「持続可能な(CSR)調達の推進・コンプライアンスの遵守」の比率が高まっているという特徴が見られた。
気候変動問題や環境問題に対応するため、温室効果ガスの削減や、プラスチック使用量の抑制等の動きが広がり、一般市民においてもSDGsへの関心が高まっている。また、海外調達先における人権問題について、日本企業の対応の遅れが指摘されている。
企業の社会的責任という観点からだけではなく、中長期的な企業価値の創出に向けて、事業を通じた社会課題の解決に対応していくことが、経営課題認識においても重視されるようになっている。
現下のコロナ禍への対応も引き続き重要な課題ではあるが、今回の調査結果から見えてきたように、その先の時代に向けて、経営課題認識に変化が生じているということは、明るい兆しであると言えるだろう。
人的資本経営を強化し、デジタル技術を活用しながら、新しい社会価値を創り出すべく、具体的な経営戦略の構想と実行が期待される。
https://www.jma.or.jp/activity/report.html
構成/ino.