【連載】もしもAIがいてくれたら
第17回:混迷する自民党総裁選、いっそのことAIに任せてみたら?
【バックナンバーのリンクはこちら】
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第16回:タリバン政権復活で思い出される9.11、AIはテロを防げるか?
ドラえもんの「ポータブル国会」なら”カイサン”しちゃうかも?
総裁選と衆議院解散の日程がどうなるのか、さまざまな憶測が飛び交い、菅首相が質問に答える形で記者会見が行われています。首相官邸が9月1日に発表している内容によると、菅首相は、最優先は新型コロナ対策で、今のような厳しい状況では、解散ができる状況ではないと考えており、日程は党が決めるとしています。
ちょっと大胆すぎる提言かもしれませんが、いっそのこと党が党の事情で決めるのではなく、ここはAIに決めさせてみたらどうなるのだろうか、と思いました。
ドラえもんのひみつ道具に、「ポータブル国会」という国会議事堂を模倣したものがあります。法案袋と呼ばれる封筒に希望の法案を入れると、日本中でその法案が可決され、施行されるというものです。しかし、あまりに個人的で勝手な法案ばかり入れすぎると、「カイサン」という音を立てて「自動的に」破裂してしまいます。
アニメの中では、のび太君が、お年玉を上げる法案や自分の漢字の書き間違えを正当化する法案など、利己的な法案を次々ポータブル国会に通したことで、自動的に「カイサン」になってしまうわけですが、私利私欲を持たないAIに、国益が最大化するタイミングで国会のカイサンを決定させるようにしたらどうなるでしょうか。AIの決定にあたふたする与党の様子が目に見えるようですが、AIが決めるなら、野党も納得で受け入れるかもしれません。
AIには責任をとれないから、責任のあるリーダーの仕事はできない、としばしば言われますが、問題を起こしても、辞任すればよいのであれば、AIにもできそうです。一度辞任した人が改善点を不明確にしたまま復活することもよくありますが、AIであれば問題点を改善したり、再学習して復活することができるので、人間の政治家よりよいかもしれません。
AIなら誰を「総理大臣」に選ぶのか?
自民党の総裁選が予定されていますが、菅首相が立候補を断念したことで、ポスト菅を巡って混迷しています。女性初の総裁かつ首相への期待も高まりますが、許されるならAIにも立候補させてみたいです。データをもとに、何を実現可能な選挙公約とするのか、見てみたいです。実現可能性の確率と共に提示してくるのではないかと思います。
実行自体はAIにはできませんが、人間の首相も、自分で実行するわけではないので、同じなのかもしれません。しかし、人間のようにいろいろな人と話しながら、時に忖度もありながら、周りが動く、ということは、AIが首相だと困難です。AIの政権参加としてあり得るのは、首相の相棒を務めることかと思われます。AIに相談する首相を世間がどのように見るかだと思いますが、相談相手はいろいろいたほうがいいので、好意的に受け止めていただければと思います。
そして、総裁選で、AIにも一票いただけたら、どなたに票を入れるのかも見てみたいです。これは、意外に、今まで書いてきたAIの政治参加の中で一番難しいかもしれません。政治は、刻一刻と変わる国内外の情勢に左右されますし、何より永田町の「人間たちの思惑」の中で、どなたがどのように立ち回れるか、AIが予測するのはなかなか難しい問題です。しかし、各候補者の実績、過去のスキャンダルの調査、そして言葉と表情だけからでも、AIに評価をさせてみたいものです。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。