DIME MAGAZINE
「今、大企業が続々と嗅覚領域に参入している。「嗅覚」「香り」は、ビジネスサイドから注目を集める領域」とは、SCENTMATIC代表の栗栖俊治氏。いっぽう「消費者として向き合うと、香りの違いや好みを、はっきり認識することが難しい」とも。そこで同社は言語表現を軸に、AIを活用した「香りの可視化」に取り組んでいる。
例えば、「清潔感のある香り」を選びたいとき、何千種類とあるパターンからひとつを選ぶことは難しい。言語表現に適した香りを絞り込み、選択肢を提示できれば、その人にとって「清潔」と感じる香りを突き止められる。
反対に、「この香りは透明感がある」「爽やかさを感じる」など、人が言語で香りを的確に表現できれば、好みの香りをみつけたり、ブレンドなどしてつくることが容易になる。
しかし、香りの感じ方は人それぞれで、どんな表現が正しく的確であるか、厳密に正解を求めることはできない。色や形のない香りについて、本当の意味で意思疎通するのは難しいのだ。
同社が開発する「KAORIUM」は、言葉から香りのリストを出力する機能と、感じた香りを言葉でわかりやすく表現する機能を備えるAIシステムだ。同システム上のデータだけでなく、インターネット上の会話や文章、過去の文学にあるぼう大な言語表現を学習することで、精度の高い香りの言語化を可能にしている。
東京五輪フェンシング代表の見延和靖選手は、「KAORIUM」を活用してオリジナルアロマを開発した。アスリートが試合時に最大限パフォーマンスを発揮するためには、オフの時間にリラックスできる環境が必要で、見延選手自身も香りの重要性を認識していた。
まずは、さまざまな香りに対して、見延選手が感じるキーワードを抽出。その後アロマセラピストが数パターンのブレンドを作成、確認と調整を繰り返して、納得する香りをつくっていった。
そのプロセスで、「雅やか」など予想外のキーワードが登場したという。本人も意識していなかった香りの好みが、「KAORIUM」によってあぶり出された。
見延選手は男子エペ団体で見事金メダルを獲得！「アロマは、直前の大分合宿はもちろんオリンピック選手村にも持って行き、活用いたしました。非常に満足のいく香りで、試合前にリラックスすることが出来ました。また、他のチームメイトからも評判が高かったです。」と語った。
「嗅覚のデジタライゼーションは、香り商品の提供者と消費者をつなげる橋渡し役となる」と栗栖氏。視覚や聴覚と比べ、嗅覚へのアプローチは難しいだけに、課題解決できればさまざまなビジネスを大きく伸ばす原動力になる。
取材・文／ソルバ！
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