4つの物語が同時進行する刺激的でほろ苦い人生ドラマは、秋の気配が漂い始めるちょっと切ない今の時期、最適と言えるかもしれない。
Huluで9月1日より配信中のドラマシリーズ『ライフ 私たちの生きる道』は、イギリス・マンチェスターの集合住宅で暮らす4人の“生きる道”を描いた群像劇。
同じくHuluで配信中『女医フォスター 夫の情事、私の決断』のスピンオフとして、BBC oneが製作した。
製作総指揮は、『女医フォスター 夫の情事、私の決断』のマイク・バートレット。
あらすじ
マンチェスターの集合住宅には、全く異なる境遇の4人の住人たちが暮らしている。
熟年主婦のゲイルは、偶然旧友に再会し、家庭の悩みを見抜かれて動揺する。家族のケアに追われながらもないがしろにされる日々に、空しさを感じていたのだ。ゲイルは旧友の言葉をきっかけに、自分の結婚生活に疑問を抱き始める。
『女医フォスター 夫の情事、私の決断』にも登場したアナベル(ベル)は、夫の不倫が原因で離婚。妹が精神科に入院したことをきっかけに、反抗的な高校生の姪っ子マヤを預かることに。
前回の結婚では子を持たないことを選択したのだが、思いがけず思春期の姪っ子の母親代わりとなり混乱する。転職活動、アルコール依存性との戦い、新しい恋愛と並行して、“子育て”というチャレンジを乗りこえていく。
妻を亡くしたばかりの大学講師デヴィッドは、リフレッシュのため休暇を取り、ひとりで湖畔に旅行。滞在先で、魅力的な若い女性サイラと出会う。休暇明けの新学期、デヴィッドが新しいクラスに入るとそこにはサイラの姿が。教師と学生として再会した二人は、少しずつ距離を縮めていく。一方デヴィッドが亡き妻ケリーの過去を掘り下げるうち、重大な“秘密”も明らかになる。
出産が迫る未婚シングルマザーのハンナには恋人リアムがいたが、お腹の子の父親であるアンディと再会して意気投合。リアムとアンディの間で揺れ動く。
見どころ
本家の『女医フォスター 夫の情事、私の決断』、そして『ザ・スプリット 離婚弁護士』『Fleabag フリーバック』もそうだが、イギリスの恋愛・結婚ドラマはかなり辛辣で容赦なく心を抉るような描写が多く、心がヒリヒリする。
しかしその感覚がなぜか痛気持ち良く、「きついなあ」と苦笑しながらも結局何度も観てしまうのだ。
とくにゲイルのモラハラ夫ヘンリーにはイライラさせられっぱなしだった。
専業主婦であるゲイルのことを人前でも散々バカにしながら同時に依存してきたヘンリーは、自分の病気が発覚したとたん弱気になり「アイラブユー」とすり寄ってくる。
“自分を捨てて家族に尽くす”ことが骨の髄まで染み付いてしまったため、なかなかヘンリーを切り捨てることができないゲイル。そんな彼女が徐々に目覚めて変化していく様にも注目。
本作は、視点が基本的にひねくれていて意地悪なのだが、厳しい現実に向き合う勇気を与えてくれるという頼もしさも感じられるのが魅力。
“いい意味で”イライラ・ヤキモキさせられっぱなし、一度観始めたら次の展開が気になって止まらなくなるだろう。
熟年専業主婦、未婚シングルマザー、子どものいないバツイチ女性、妻を亡くした男性という全く異なる立場に置かれている人々の物語は、それぞれにしっかりとした見応えがあり、年齢性別を問わず全ての視聴者がきっと深く共感できるだろう。
『ライフ 私たちの生きる道』
9月1日(水)からHuluにて配信スタート、
全話一挙配信(字/吹)
© Drama Republic Ltd
文/吉野潤子