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コロナ禍でハンバーグ専門店に行列ができる理由

2021.09.05

ハンバーグ定食一品

 コロナ禍下にオープンした外食店で最も成功した店はどこかと聞かれたら、多くの外食関係者が声を揃えて『挽肉と米』と答えるに違いありません。昨年6月1日、最初の緊急事態宣言の解除直後に吉祥寺・東急百貨店の裏にオープンしたこのハンバーグ定食専門店は、メディアが大々的に取り上げたわけでも、強力なインフルエンサーが推したわけでもないのに、若者のSNSで秒で話題になり、アッという間に行列のできる人気店になりました。

 定食店なのに客の6割が若い女性というのも、他に例を見ません。では、なぜ女性の間でそんなに急に話題になったかというと、映える要素がてんこ盛りだったからです。

 まず映えるのが、内装です。店内には巨大なダクトがそびえ立つ炭焼き場が2か所あって、それぞれを囲んで半円形のカウンターとカウンター席が10席ずつ。焼き台の後ろには、古風な飯炊き釜がズラリ。料理は、1500円のハンバーグ定食とおばんざい1品だけですが、この定食が実によくできていて、客は席に着くと、焼き手から必ず「何個いきます?」と聞かれます。というのも、3個まで同じ代金だからです。1コ90gなので、ほとんどの客が3個いっちゃいます。

 で、しばらくすると、ご飯がよそわれて味噌汁と一緒に出され、ハンバーグは客の前に設えられた小さな網の台に焼き上がるたびに置かれます。客は、熱々のハンバーグを自分のご飯の上にのせて食べてゆく仕組み。1個目を食べ終える頃、必ず「味変に鬼おろしとポン酢いかがですか」と聞かれ、頼めばタダで出てきます。付け合わせの「白菜の梅酢漬け」とご飯にのせる「食べる醤油」、ハンバーグ用薬味6種は、各席にセットされており、使い放題。さらに、卵かけご飯用の卵が店の真ん中の卵スタンドに、セルフサービスで用意されています。

 鬼おろしや卵は最初から出せばよさそうなものですが、この店では、わざと途中で聞いたり自分で取りに行かせたりしてるんですね。どこの店も手間を省いて人件費を節約しようとしているこのご時世に、この店では客がわずか1500円の定食を食べる間に5回もイベントがあるわけです。ハンバーグは目の前で焼かれているので食事中は常にシャッターチャンス。

 おかげで、客が食後に感じる体験感はハンパありません。この店のハンバーグを監修したのは、人気店『山本のハンバーグ』の山本昇平。店全体をプロデュースしたのは、博報堂の元コピーライターの小西利行。なので、料理もコンセプトもプロの仕事、という感じがします。

 そもそも、ハンバーグの源流は、モンゴルの遊牧民タタール民族が、運搬用に使った馬を食肉として食べる際、筋だらけの硬い肉を細かく刻んで袋に入れ、その袋を馬の背と鞍の間に挟んで人の重みで筋を切り、食べやすくしたタルタルステーキ。この料理が、ドイツ北部の港町ハンブルクに伝わり、馬肉が牛肉に替わり、火を通したフリカデレという料理になり、さらに、ハンブルクがアメリカと通商条約を結んでいた関係でこの港から多くの東欧人がアメリカに渡り、彼らがアメリカでも好んでフリカデレを作ったため、それが「ハンブルク」の英語読みの「ハンバーグ」という料理名で広まった、といわれています。

 ただし、アメリカでは(いや、日本以外のすべての国では)、ハンバーグはバンズに挟んで食べるハンバーガーの具材であって、メインディッシュではありません。ハンバーグがメインディッシュになっているのは、米食おかず文化を持つ日本だけ。

 また、日本でハンバーグのソースはデミグラスと決まっていますが、これも、鰻や焼き鳥のタレを注ぎ足し注ぎ足しで完成させてきた日本だけの進化です。日本のハンバーグは、世界的に見れば、ガラパゴス的な食べ物なのです。

『挽肉と米』

『挽肉と米』は、流行中のハンバーグ定食一品(「ワンバーグ」と言うそうです)の流れを作った超人気店。2020年6月、吉祥寺東急百貨店裏に開業。予約は朝9時からの記帳制ですが、長蛇の行列ができるので記帳整理券を配ることも。今年3月、渋谷道玄坂のラブホ街の入口にオープンした2号店も、いまだに夜の予約が午前中に埋まってしまう人気ぶりです。◆住所:武蔵野市吉祥寺本町 2-8-3 ◆電話:0422・27・2959

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