遠藤ひかり
オンライン上でやりとりをしていた社員が、もし、実在しない人物だとしたら……。そんなことが現実で起こっている。
800名以上がフルリモートを実現する企業、キャスターでは入社時に「遠藤ひかり」と名乗る女性と、契約書などのやりとりを行なう。しかし、この遠藤ひかりさん、実は存在しない人物なのだ。種明かしをすると、複数人が遠藤ひかりというアカウントを使い、ひとつの人格としてメッセージのやりとりを行なう「共通人格アカウント」という仕組みになっている。
ではなぜ、このような仕組みを採用したのか。同社執行役員・森数美保さんは次のように話す。
「遠藤ひかりは、数名で運営しています。共通人格アカウントとすることで、特定の人に依存することなく、素早くレスポンスでき、業務も属人化しません。
異動や退職に左右されず、スムーズな業務運営ができる点、知見がどんどんたまっていきマニュアルを常にアップデート、共有できる点がメリットです。返信は定型文を使っているためAIに置き換えられないこともないのですが、複数のメンバーでひとつの人格として対応するほうが、安心感や信頼を得やすいと実感しています」
業務の円滑化だけでなく、社内コミュニケーションの促進にもメリットがあるという。今後、リモートワークの普及とともに、積極的に採用する企業が増えてくるかもしれない。
遠藤ひかりさんの写真。共通人格アカウントは、あくまでも社内運営でのみ使用。社外とのやりとりは、個々人が対応を行なっている。
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業を展開する同社では、遠藤ひかりのほかにも、年末調整を担当する「年調さん」、勤怠を管理する「勤怠マン」、オンライン飲み会を主催する「えいひれさん」など、複数の共通人格アカウントが業務を支えている。
取材・文/久我裕紀