テレワークが浸透し、非対面のビジネスが通常になる中、営業活動もオンライン化している。しかしオンライン営業はまだ慣れないケースも多く、悩みが尽きないようだ。あるアンケート調査では、オンライン営業の悩みとして「相手の反応が分かりづらい」「目線の置き方が分からない」「カメラオフの相手の反応が一切分からない」などが多い結果に。
こうした悩みについて、オンライン営業のプロに解決策をアドバイスしてもらった。
営業活動のオンライン化で商談がむずかしくなった営業マンは73%
アンドワーズが、2020年9月、オンライン営業を行ったことのある会社員111名を対象に「オンライン営業に対する意識」に関する調査を実施した。その結果。営業活動のオンライン化により、商談がむずかしくなったと感じる営業マンは73.0%にも上った。
そして「オンライン商談をする上でどのような点に、課題や悩みを感じるか」を尋ねたところ、1位は「カメラ越しだと相手の反応が分かりづらい」で55.9%、2位は「PCを前にした際の目線の置き方が分からない」で29.7%、3位は「相手がカメラオフの際に相手の反応が一切分からない」が28.8%という結果となった。
自由回答でも、「相手の感情が分かりにくい」「非言語的な部分が汲み取りづらい。」「資料を使うとき、相手に内容が伝わっているか心配になる。」「ニュアンスが伝わりにくい、掴みにくい。」「レスポンスのタイミングが分からない。」といった意思疎通の面での悩みが多く挙がった。
よくあるオンライン営業の悩みの解決策
多くの営業マンが抱えるオンライン営業の悩みは、おおむね共通しているところがあるのが分かった。そこで、オンライン営業を成功させるための方法をプロに聞いてみよう。
今回は、一般社団法人プロセールス協会 代表理事である小沼勢矢氏に話を聞いた。小沼氏はオンライン商談を極め、「売れるオンライン商談テンプレート」を作り講座を開くなどしている、オンライン商談のプロである。
【取材協力】
小沼 勢矢氏
一般社団法人プロセールス協会 代表理事
コロナ禍で営業に課題を抱えるクライアントが増加したことをきっかけに成約率80%を達成するための脳科学を基にしたセールスメソッドを確立。価値あるサービスを世の中に上手く届けられずに困っている事業者様を支援したいという想いから、一般社団法人プロセールス協会を設立。
https://www.pro-sales.jp/
よくあるオンライン営業の悩み別に、アドバイスをもらった。
●カメラ越しで、相手(顧客)の反応が分かりづらい
「オンライン営業の場合は、相手の身体の動きや表情の変化に気づく『観察力』がより一層求められます。これまで以上に注意深く相手を観察し、反応を感じ取らなければなりません。具体的には『表情』『声のトーン』『姿勢』の3点を注視してください。表情があまり変わらない方もいますが、表情に変化がなくても、声のトーンが変われば、感情が変化しているという証になります」
●目線の置き方が分からない
「重要なメッセージやインパクトを与えたいときは『カメラ目線』で話すことを心がけましょう。カメラ目線で話すことで、『自分のために伝えてくれている』という感覚を相手も持つことができます。また、最近は相手の顔を見ながらでも目線がズレないようなWebカメラも販売されているので、購入を検討してみるのも良いでしょう」
●相手がカメラOFFの際に相手の反応が一切分からない、声だけで判断する必要がある
「相手がカメラOFFの場合は、声のトーンの変化を注意深く聞いて判断する他ありません。そのためには、日頃から『耳を鍛えておく』ことが大切です。
また『原則カメラONでお願いします』と事前にご案内しておくことで、顔出し率も上がります。それでもむずかしい場合は、相手がカメラOKなタイミングを伺い、別の日時を設定するのもひとつの手です」
●声の出し方が分からない
「オンラインの場合は意識的に声のトーンを上げることが大切です。リアル営業と違い、気持ちや感覚などの身体感覚情報が伝わりづらいため、いつもと同じトーンで話すと相手に暗い印象を与えてしまうためです。感覚的には、2トーン程度上げて話すことを意識しましょう」
●オンラインで効果的なジェスチャーは?
「オンラインの際のジェスチャーの基本は『リアルよりも2倍、大きく振る舞う』が基本原則です。オンラインの場合は上半身のみしか映らないことが多いので、そもそもリアルと比べて情報量が少ないのです。
『うなずく』という動作ひとつ取ってみても、ただうなずくのではなく、『うなずき+身ぶり手ぶり』で、ダイナミックな動きを演出したほうが効果的です」
オンライン営業の成否を分けるのは「徹底した事前準備」にあり!
オンライン営業の悩みは、商談中の意思疎通面に偏っていたが、何より大事なのは営業を成功させることだ。オンライン営業の成否を分けるのは、また別のところにあると小沼氏は言う。
「オンライン営業の成否を分けるのは、『徹底した事前準備』にあります。移動や宿泊などの間接コストが軽減した分、お客様の事前リサーチに時間とエネルギーをかけましょう。
以前、オンライン商談だけで1,000万円近い高級車を次々に販売している女性営業の話を聴く機会がありました。
その女性も、『お客様が試乗せずに車が売れる秘訣は、徹底した事前準備にあります』と言っていました。これにはとても同意します。
商談前にお客様のインサイトをどれだけ見抜くことができるか。そして、インサイトに基づき、効果的な提案をどれだけ事前に作り込むことができているか。この姿勢があるかないかで、オンライン営業の成果は大きく変わると考えています」
事前準備をいかに行うかは、インサイトを見抜く意識や提案を作り込むといった姿勢が重要になるようだ。オンライン商談の会話面での悩みを解決しながら、ぜひ姿勢の面もヒントにしたい。
取材・文/石原亜香利