日本の空き家率は、2040年に40%に達するという試算がある(野村総研)。人口が減少して物件の借り手が減り、不動産が余る状態が続くのであれば、不動産サービスの仕組みも再構築しなければならない。On-Coの「さかさま不動産」は、現代の課題を考えるヒントを提供してくれる。
「さかさま不動産」は、物件の借り手の目標や想いをWebサイト上に掲載するマッチングサービスだ。貸したい家主がアプローチし、合意に至れば契約が成立する。物件情報を紹介する従来の不動産サービスとは、文字通り「さかさま」の発想。「潜在する空き家の発掘」「空き家を介した関係構築」を目的とする実証実験として、2020年6月にスタートした。
新しい仕組みは、実際にどんな現象を起こすのか? まずは、マッチングした事例をひとつみてみよう。
航海士だった間瀬さんは、海洋プラスチックごみ問題を目の当たりにしてきた。ごみの半分以上が漁具に由来すると言われており、間瀬さんは漁業用の浮きや海に捨てられたペットボトルをつかったプラスチック原料やアート作品を販売することで、環境問題を啓蒙する。
「制作の拠点となるアトリエがほしい」と「さかさま不動産」に掲載したところ、応えたのは三重県鳥羽市のカキ養殖漁師・浅尾大輔さん。志摩市で水産加工業を営む伊勢志摩冷凍の石川隆将さんを紹介し、共感した石川さんが自社の空き倉庫を貸し出した。
しかも、事業が軌道に乗るまでの家賃は無料。荒れた倉庫を自ら改装すれば、広さや使い勝手も問題はない。
なにより、間瀬さんの事業コンセプトに合う物件だった。間瀬さんはアトリエを整え、「おもしろい人が集まる場になれば」と広く開放。ともすれば負の資産ととらえられがちな空き家が、地域活性化の拠点にうまれかわった。
このエピソードからみえる可能性は次の3点。
1.借り手は流通していない物件に出会える
貸し主が物件を掲載する従来の仕組みでは、水産加工会社の空き倉庫など、なかなか出回るものではない。貸し主の石川さんも、間瀬さんに出会うまでは貸し出そうとすら考えなかったのではなかろうか。
2.貸し主は空き家を通して自己実現できる
石川さんは「海洋プラごみ問題をアートで解決する」という間瀬さんの事業を応援することで、自分の人生を充実させられる。これも借り主の魅力を訴求する「さかさま」の仕組みならでは。金銭以外の価値が、不動産を流通させる可能性を感じさせる。
3.地域社会がステークホルダーになる
借り主/貸し主という1:1の関係を、不動産会社が仲介するのが従来の主流。間瀬さんの事例では、借り主に共感した紹介者の浅尾さんが、重要な役割を果たしている。地域住民が若者の挑戦を応援するという関係が、空き家の貸し借りを介してうまれる。
「ビジネスで解決できないから社会課題が残る。おもしろいものをつくり、続けていればいつかビジネスになる」と同社共同代表の水谷岳史さん。事業としての課題はまだまだ残るが、不動産活用の新しいビジョンを、おぼろげながらみせてくれる課題解決ストーリーだ。
取材・文/ソルバ!
人や企業の課題解決ストーリーを図解、インフォグラフィックで、わかりやすく伝えるプロジェクト。ビジネスの大小に関わらず、仕事脳を刺激するビジネスアイデアをお届けします。
https://solver-story.com/
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